「2人目でも産後うつは繰り返す?」「産後うつは治る?」宋美玄先生からのアドバイス
前回は、「これって産後うつ?」「どこに相談すればいい?」と悩む方へのお悩みに答えていただきましたが、今回は「産後うつは2人目以降でもなってしまう?」「産後うつは治る?」などのお悩みに答えていただきました。
前回の記事はこちらからごらんください。
お悩み1:睡眠薬の副作用?
睡眠薬をこれまでまったく飲んだことがない場合は、睡眠薬を飲むこと自体に抵抗がある人もいらっしゃいますよね。副作用への心配もあると思います。ただ、今つらい状態の方には、ネガティブ思考から抜け出すためにも、一度睡眠をしっかりとっていただきたいんです。
心療内科にかかって処方された睡眠薬を飲んだからと言って、いきなり薬漬けになるようなことはありません。睡眠薬にもいろんな種類がありますし、処方する量を調節することもできます。医師と相談の上、軽いものからちょっとずつ試していくのがいいのではないかなと思います。眠りやすくなる漢方やハーブティーもあるので、そういったものから試してみるのもおすすめです。
お悩み2:産後うつは2人目以降でもなってしまう?
産後うつの影響か、本能的なものなのか、新生児〜2.3ヶ月くらいまでの赤ちゃん特有の泣き声が苦手で、緊張感や不安感があったのですが、2人目では慣れるのでしょうか。
産後うつは、初産婦さんがなりやすいです。一方で、2人目以降の産後は、上の子の育児もあるので、タスクは増えるんですよね。産後うつを繰り返さないためには、家族一丸となって、お母さんの体調やメンタルの変化に注意してサポートすることが大切です。
育児でお母さんじゃないとできないことって、直接授乳することだけなんですよね。1人だけにしわ寄せが行かないようにすることが重要です。コロナ禍で祖父母の手が借りにくい今、どう考えてもお父さんしかいないんですよね。お父さんに育休をとってもらう、お父さんがテレワークをして、その合間に手を貸すなど、お母さんの様子をいつも感じていてもらいたいです。あとは、食洗機や全自動洗濯機など、機械の力に頼れる部分は、できるだけ頼りましょう。
お悩み3:おしゃぶりに頼るのは悪いこと?
おしゃぶりがこの世になかったらわたし
多分産後うつで死にかけてました。
一時期、夜のミルクでうとうとからの寝落ちや
ミルクでうとうとからのトントンや抱っこゆらゆらで
寝れてましたが、最近は
はいはいやつかまり立ちで動き回るので
ふとんに横にさせてもダメです。
抱っこも、背中をせりかえらせるので、ダメです。
おしゃぶりを与えた瞬間に、即、寝る体制に
入って5分ほどで、寝ます。
(中略)
大人が寝る時間帯(22時から6時頃)は
つけっぱなしにしちゃってます😭
つけっぱなしにすることで、以前は5.6回起きてたのが最近は2.3回に減りました。
もう、おしゃぶり依存かな?と諦めてます。
(中略)
歯並びが心配なのと、いずれは卒業
しなくてはいけないので、このままでいいのか?
と不安な気持ちではあります。
うちの子どもの話なのですが、2人とも赤ちゃんのころにおしゃぶりをあげてみたことがあったけど、全くしゃぶらなかったんですよね。おしゃぶりで大人しくしてくれるならいいじゃないですか!おしゃぶりですら効き目のない子もいますから(笑)。ただ、うちの子はタオルを持っていると落ち着くんですよね。
そんな風にそれぞれ個性があるので、「うちの子はおしゃぶりが好きなんだよー」って考えて使えばいいと思いますよ。育児方法に関しては、さまざまな意見があるので、いろんな人の意見を聞いていたら、何もかもがダメって言われちゃいますから。
ただし、例えば落下の危険がある抱っこひもなど、安全性に問題があるものは絶対にダメです。きちんと子どもの安全を確保できるものであれば、ある程度は便利なものも使っていけばいいのではないかしら。一番大事なのは、お母さんの心に余裕がなくならないこと。人によってキャパシティも違うので、自分が完全に余裕を失ってまで便利なものに頼らないことを貫く必要はないと思います。
お悩み4:産後うつって完治できる?
心療内科に通い、産後1年位かけて少しずつ回復しました。
今は通院も2ヶ月に1回になり、普段は漢方と頓服薬で過ごしており、家事や育児もできています。
でもまだ体調に波があったり、出産前のような元気はなく不安になったり憂鬱になったり、産後うつの時のような症状が軽く出ることがあります。
最近は調子が悪く頓服を飲む日も前より増えてきました。
しんどい時は無理をしない・休むなどは気をつけていますが、うつ病は完治ではなく寛解というように、やはり完全には治らないのかなと落ち込みます。
産後うつが酷かったり重度だったけどある程度回復した方やまたは産後うつではないけど過去にうつ病になって回復した方のその後の生活はどんな感じですか?
重い産後うつは、よくなったり悪くなったりを繰り返すので、中には回復するまでに4〜5年かかる人もいます。育児って、その時期に応じたつらさがあるものなので、一回治ったから大丈夫、もう治ったということではなく、油断できません。自分も周囲も、まるで「光が見えないトンネル」の中にいるみたいな感じなんです。
お母さんたちは、これまで自分の体だけで生きてきたのに、妊娠して、出産したら体も傷つくし、ホルモンは更年期以降のレベルに下がるし、母乳もあげないといけない。赤ちゃんの健康を管理しながら、自分は全然眠れなくて、でも自身の体調管理もしないといけなくて、これはいわゆる「無理ゲー」ってやつなんですよ。
また、SNSも悩みの種になりがちです。子どもの個人差も大きいのに、他人の赤ちゃんや育児と比べてしまい、「あの人はあんなにうまくいっているのに」とか「あんなにいいお母さんなのに」とか考えてしまうんですよね。私自身も、それでわけもわからず泣いたりしたこともありますよ。
母乳が出なくて全然子どもの体重が増えない時に、同じ時期に出産した人の「めっちゃぷくぷくしてきました」とかいう投稿を見るだけで、「なんでこの人は無神経な投稿をしているのか!」となったりとかしていましたから。
イギリスの小児科医であり精神分析家のウィニコット先生が「最善の母親は、ほどよい母親である」と言ったんです。私には9歳と5歳の子どもがいるんですけど、親の失敗談が大好きですよ(笑)。自分がこだわりたい部分は、譲る必要はないと思うけど、全部を完璧にする必要はないと思います。
時には隙(すき)のある親でいい!「生きてりゃいいじゃん」をモットーに、お母さんたちが、「今日1日、生きたまま過ごせました!」みたいな感じで、満足のレベルを下げていくといいのではないかと思います。育児において、「これが正しい」ってことはわからないですからね。
育児では「これが正しい」ということはわからない
産婦人科医としてだけではなく「1人のお母さん」として、質問に真摯に快活に答えてくださった宋先生。「『生きてりゃいいじゃん』をモットーに」という言葉には、肩の力が抜けて、大きな安心感をもらえます。
育児には正解がないからこそ、「ほどよい母親」でよいのだと思えると、少し楽になれるのかもしれません。宋先生の言葉を胸に、一歩ずつ「ほどよい母親」を目指していきたいですね。
※心身の不調を感じている方は、「これくらいで受診していいのかな…」などと我慢せず、専門家に相談の上、指示を仰ぎましょう。心療内科の他、出産した産婦人科や地域の保健センターなどでも相談が可能です。
執筆:母子保険はぐ編集部
スマートプラス少額短期保険(株)がお届けする大切な赤ちゃんとママを守る「母子保険はぐ」の公式note編集部。ママと赤ちゃんに役立つ情報をお届けします。