産後うつとは?
出産後は基本的にメンタルの失調が起こりやすい時期です。宋先生によると、妊娠中には通常時に比べて150〜200倍の「エストロゲン」という女性ホルモンが出ていますが、産後は産生量が大幅に下がるのだそう。さらに、ママたちは数時間おきの授乳やおむつ替えによって不眠になりがちです。こうした要因が重なることで、メンタルに不調が起きやすくなるのです。
出産後の数日間で起きるメンタルの不調については、「マタニティブルーズ」と呼ばれていて、自然に治っていきます。しかし、産後2週間ぐらいで、感情の起伏が平坦になったり、眠れなくなったり、無気力になったりすると、「産後うつ」と診断されることが多いのです。基本的には、精神科や心療内科で診療を受けた後、専門医が判断をします。宋先生によると、産後うつの診断がおりる女性の割合は、妊婦全体の約10%~15%なのだそうです。
「これって産後うつ…?」「どこに相談すればいいの?」宋美玄先生からのアドバイス
さて、ここからは宋先生に産後うつにまつわるお悩みに答えていただきましょう。
お悩み1:これって産後うつ?
「産後うつ」というと、基本的には産後すぐよりも、産後1か月~数週間くらいで発症することが多いんです。ただ、それとは別にうつ病も、出産後や育児中など、大きな環境の変化があったときに発症しやすいです。
産後何か月もたってからうつ病を発症される方もたくさんいます。うつ病かどうかは、こちらのお話だけではわからないのですが、ぜひ一度、心療内科などで相談されるといいと思います。
お悩み2:産後うつかもしれない…どこに相談すればいいの?
笑顔が全然ない、死にたい気持ちがある、わけもなく涙が出てくる、全然眠れないという場合は、まずは心療内科もしくは精神科にかかるのが一番いいと思います。ただ、産婦人科では、同じような症状の方を過去にたくさん診ているので、その後どういうところにつなげばいいか、よくわかっていることが多いんですよね。どこに相談すればわからない場合には、産婦人科に相談してもいいと思います。
本当に重い産後うつの方の場合は、すぐに薬を飲んで解決できるというものではありません。お母さんと赤ちゃんのためには、家族の絶え間ないサポートが絶対に重要になってきます。医者選びに関しても、ママだけではなくパパも自分ごととして調べたり、一緒に受診したりするなどしていただけるといいなと思います。
お悩み3:産後うつで投薬…母乳育児は諦めないとダメ?
授乳中のお母さんにとって、母乳をやめるのは大変なことです。母乳をあげないと胸は張ってくるし、ミルクは作らないといけない。「母乳をあげたかったのに…」という気持ちでつらい人もいるでしょう。
妊娠中とか授乳中の患者さんに薬を処方する場合、後で何かトラブルが起きるといけないので、お医者さんは「念のため、母乳をやめておきましょう」と言いがちです。ただ、その後赤ちゃんになんらかの病気や不調があったとしても、因果関係があるかどうかわからないことが多いんです。
実際のところ、母乳をあげていいかどうかは、薬の種類によります。国立成育医療研究センターのHPだと、ご自身で調べることもできますが、もし投薬が必要になった場合は、母乳をあげてもいいかどうか適切にアドバイスをもらいましょう。主治医に、「本にはどう書いてありますか?」と質問されるのもいいと思います。
お悩み4:子どもが大事すぎて起こってもいないことに不安になる。これは産後うつ?
子どものことが大事だと思うあまり、不安になることってありますよね。たとえば、下り坂でベビーカーを押しているときに、「もしこの手を離したら、この子は死んでしまうんじゃないか」という考えがふっと頭をよぎってしまう。そして、「こんなことを考えて、私はダメな母親なんじゃないか」と考えてしまうんですよね。
それは別に病気ではないし、多くのお母さんたちが似たような経験していると思うんです。特に、子どもが大事だと思うあまり、「この子の将来全部を、自分が責任を持てるだろうか」と考えてしまう真面目な人が多いと思います。その場合、不安な気持ちに押しつぶされないようにする必要はあるけれど、不安に思うこと自体は普通のこと。この方には、「大丈夫だよ」と言ってあげたいです。
このご相談だけでは、産後うつかどうか判断は難しいですが、元々の素質として神経症のような方もいらっしゃるので、話を聞いてくれるカウンセラーや、心療内科医がいてくれると安心できると思います。自分で「ちょっとおかしいかな、しんどいな」と思うのであれば、気軽に受診してみてくださいね。
次回、「2人目でも産後うつは繰り返す?」「産後うつは治る?」気になる産後うつのQ&A【後編】
ここまで、宋先生に産後うつの入り口で悩んでいる方々の質問に答えていただきました。次回は、産後うつにまつわるより深いお悩みにお答えいただきます。
※心身の不調を感じている方は、「これくらいで受診していいのかな…」などと我慢せず、専門家に相談の上、指示を仰ぎましょう。心療内科の他、出産した産婦人科や地域の保健センターなどでも相談が可能です。
執筆:母子保険はぐ編集部
スマートプラス少額短期保険(株)がお届けする大切な赤ちゃんとママを守る「母子保険はぐ」の公式note編集部。ママと赤ちゃんに役立つ情報をお届けします。