かみつきの原因と対応
かみつく・つねるなどの行動の原因として、「愛情不足」を疑う方はいるかもしれません。しかし、それは違いますよ。かみつき、ひっかきは、自分の気持ちを伝えるための表現のひとつとなっている場合があります。さらに、かまれたときの大人の対応によっては、楽しいこと、やりとり遊びのひとつとなってしまうことも。
ここでは、かみつく・つねるなどの原因を考え、おうちでの対応を見直してみましょう。
歯ぐきがかゆい
乳歯が生えてくる時に、歯ぐきがかゆくなります。歯固めのおもちゃや、絵本の角などをガジガジしていることありますよね。そのために、歯固めを噛む感覚で親の腕や足などをかんでいる子がいます。
この場合は、歯固めなどかんでも安全なおもちゃを渡すようにしましょう。歯が生えてくるとかんで破損させてしまうこともあります。誤飲には十分注意しましょう。とくにビニールなどは、のどにはりつくことがあります。要注意で見守ってください。
甘えたい
抱っこなどのスキンシップを求める感覚で、かんだりつねったりして甘えを表現していることもあります。
子どもは環境の変化に敏感です。忙しくなってバタバタしている、新年度が始まり環境が変わった、兄弟の妊娠・出産、引っ越しなど、不安な気持ちから甘えたくなっていることも。
保護者の方も忙しいと思いますが、一緒に過ごす時間ではスキンシップをとりつつ「あなたが大好き」「ありがとう」など安心できる言葉も一緒に伝えてあげてください。
思いをうまく言葉にできない
自分の意思や思いがすこしずつ芽生えてきたころから、言葉にして伝えられないもどかしさで、かみつく・つねる行為で気持ちを表現する姿がでてきます。保育士としてはこれが原因としてもっとも多く、特に1歳から3歳の子にこの行動が出やすいです。
保育園でも、かみつく・つねるといったトラブルは友だちとの関わりの中で、おもちゃや場所の取り合い、自分の思いどおりにいかない、思いが伝えられないなどの理由で多く発生しています。
言葉がでていないころから、思いを代弁してあげることようにすると、「こうやって伝えればいいんだな。」「言葉で言えば伝わるんだな」ということが基礎となって、言葉が出てきた時に伝えられるようになっていきます。その経験を積み重ねていくことが大切です。
言葉がでてくる年齢になっても、まだまだうまく伝えられない場面や、おもちゃを取られそう。など自分を守るときに、言葉よりも先にたたく・かみつくなどの行動で伝えようとする場面はあるので、その都度言葉で伝えることを繰り返し知らせていく必要があります。
うれしさや興奮を表現する
うれしい、楽しいなどポジティブな感情の時に、興奮しすぎてかむ表現になる子もいます。こうした表現方法をした時に、大人が笑顔だったり、楽しい雰囲気を作ってしまうと、その表現が正しいと認識して、うれしい時はかむ表現がくせになってしまいます。
関わり方がわからない
友だちへの興味が出てきたなどの成長の時に、関わりたい気持ちがあるけれど、どのように関わればいいのかわからないために、かむ・つねるなどの行動で相手の関心を引く子がいます。
大切な成長の一つである「他者への興味」が出ている時期です。興味がある相手とどう接すれば仲良くなれるのか、適切な関わり方を伝えていくことが大事ですね。
かみつく・つねるなどの行動が起きた時の対応
気を付けていても、かみつく・つねるといった行動が出てしまうことはあります。そんなときは以下のように対応してみましょう。
子どもの気持ちを受け止める
まずは子どもの気持ちをしっかり受け止めて、代弁したり、理由を聞いてみましょう。
こうやって伝えた方が、相手にわかってもらえるという経験をすることで、かみつきは減ってきます。言葉にして伝えられる年齢の子どもには、理由を聞いて、どのように伝えればよかったかを一緒に考えていくようにしましょう。
痛いこと、いけないことはしっかり伝える
かむこと、ひっかくことは、相手が悲しい、痛いこと。というのを気持ちに寄り添ったあとにきちんと伝えるようにしましょう。
この時に強く叱ることは避け、淡々と伝えたほうが思いが伝わります。
反応は淡々と、表情は真剣に
遊びの延長のようにかむ・つねるといった行為をする子は、大人の反応を楽しんでいたり、楽しい遊びと勘違いしていることがあります。大人がふざけてわざとかませたり、かまれたときの表情がポジティブだったり、笑ったり、大げさに反応したりしていると、かむ遊びを助長します。
これは子どもが混乱するので避けましょう。友だちにも遊びの一つとしてやってしまう可能性があります。大人をかんだ時は、「痛いからかまないでね」と淡々と伝え、あまり大きく反応しないのが良いと思います。
ていねいな関わりで「かむ・つねる」は減らせる
かみつき・つねり行為は、その年齢や状況に合わせてていねいに関わりながら対応することで減っていきます。心配しすぎず、子どもの気持ちを受け止めて言葉や仕草で思いを伝えられるようにお家でも関わってみてください。