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監修:清水なほみ

【医療監修】自然流産とは?原因や不育症との関係、流産後の妊娠について

妊娠してうれしい反面、誰もが少なからず流産の心配をしてしまいますよね。特に妊娠初期は流産をしやすい時期のため、心身共に不安定になってしまう場合もあるでしょう。流産といってもさまざまな種類があり、流産を繰り返してしまう状態は不育症と呼ばれます。自然流産はどのようなことが原因で起こるのか、体のケアや流産後の妊娠について解説します。

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自然流産とは?

自然流産は、文字通り、自然に起きる流産のすべてを指します。何らかの原因によって妊娠22週未満に妊娠が終了してしまうことで、手術の有無は関係ありません。一方、妊娠22週未満に母体保護の目的で行われる人工妊娠中絶のことを人工流産と呼びます。

自然流産は、母体側の原因と胎児側の原因どちらかによって引き起こされ、妊娠12週までに起こった流産は胎児の染色体異常によって起こることがほとんどです。自然流産は進行程度と状態によって以下のように分けられます。

出典元:
  • 井上裕美(監)「病気がみえるvol.10」P.86~87(メディックメディア,2015年)
  • 西島重光(著)「コンパス産婦人科」P.348~350(メック出版,2013年)
  • まのレディースクリニック「妊娠と病気」(http://www.yuhookai.jp/MLC09_QA_3.html,2018年3月26日最終閲覧)

切迫流産

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切迫流産とは、子宮内で胎児が生存しているものの出血やおなかの張りなど流産の兆候があり、流産の一歩手前の状態であることを指します。切迫流産以外の流産は妊娠継続が難しいとされていますが、切迫流産は妊娠継続ができる可能性がある状態です。

切迫流産の程度はさまざまで、適切な治療を受けることによって症状が改善する軽度な状態から流産に至る重度の状態まであります。切迫流産では安静療法や薬物療法を行いますが、妊娠初期の流産を回避するための有効な治療方法がないため妊娠12週以前の切迫流産では原則薬物治療は行われません。

妊娠12週以降に子宮収縮などの症状がみられる場合は、子宮収縮を抑制する薬を投与するなどの処置をします。

稽留流産

稽留流産とは、胎児の死亡後そのまま子宮内に胎児が残っている状態のことをいいます。母体は無症状であることが多く、妊婦健診の経膣超音波検査で初めて分かることもあります。

稽留流産と診断された場合は、子宮内に残留している内容物を取り出すため子宮内容除去術(しきゅうないようじょきょじゅつ)という流産手術、もしくは内容物が自然に出てくるのを待つ待機療法を受けることになります。

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進行流産

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進行流産とは、本来閉じているはずの時期に子宮口が開いてしまい、胎児や胎盤の元になる組織などの子宮内容物が外に流れ出てきてしまっている状態のこといいます。

陣痛に似た規則的な強い腹痛と大量の出血がみられ、胎児や心拍を確認することはできません。進行流産によって子宮内の内容物が外に流れてしまいますが、子宮内に残留物があった場合は子宮内容除去術を受けることになります。

不全流産

不全流産は流産が進行したものの胎児やその付属物の一部が子宮内に残ってしまっている状態のことをさします。強い痛みと出血が継続し、胎児や子宮内の組織を取り除く子宮内容除去術受ける必要があります。

完全流産

完全流産とは、胎児や胎児の付属物が完全に体外に出てしまった状態のことをいいます。胎児や心拍は認められず、胎嚢も消失します。強い腹痛と出血を伴いますが、内容物がすべて出てしまった後しばらくすると痛みや出血は止まります。

出典元:

自然流産の原因

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妊娠12週以前に起こる早期流産は、ほとんどが受精卵の異常によるもので、流産する胎児の約50~60%に染色体異常がみられます。染色体に異常があり受精卵の細胞分裂ができずに成長が止まってしまうもので、偶発的なものとされています。

妊娠12週以降の後期流産は、子宮頸管が短くなる頚管無力症(けいかんむりょくしょう)や腟内の細菌が胎児を包んでいる卵膜に感染することで起こる絨毛羊膜炎(じゅうもうようまくえん)が原因となることがあります。この時期の流産も胎児側の要因が大きいですが、母体側の異常によって起こることもあります。

流産は妊娠全体の約15%で起こり、そのうち約13.3%が前期流産、約1.6%が後期流産とされています。流産率は母体の年齢が高くなるにつれて増加し、40歳代では約30%に上ります。

出典元:

反復流産、習慣流産と不育症

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原因の有無に関わらず自然流産を連続して2回繰り返すことを反復流産といいます。さらに、連続3回以上の自然流産を習慣流産、自然流産を繰り返すことを不育症と呼びます。

初期流産の約半数は胎児染色体異常を繰り返すなど偶発的に起こるとされていますが、残りの半数は夫婦のどちらかに染色体異常がみられる場合や、子宮内環境の悪化により妊娠を維持することができない状態である可能性が考えられます。

不育症検査を受けることで、これらの原因が特定できることがあるため、流産を繰り返してしまう場合には検査を検討しましょう。不育症検査では、血液検査を行い感染症の有無やホルモンの分泌異常を調べ、着床の妨げとなるような原因がないか超音波検査などで確かめます。

不育症検査を受けても、問題がないことも多く、原因不明とされることも多くあります。原因不明の不育症は治療方法が確立されていませんが、2回の流産であれば約80%、3回の流産であれば約70%が次回妊娠継続できる可能性があります。

出典元:
  • 井上裕美(監)「病気がみえるvo.9 婦人科・乳腺外科」P256(メディックメディア,2015年)
  • オーク会「不育症・習慣流産」(http://www.oakclinic-group.com/ha/cause.html,2018年3月26日最終閲覧)
  • 産婦人科学会ガイドライン 産科編2017「日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会(編)」P135~139(日本産科婦人科学会事務局,2017年)

自然流産後のケアと妊娠

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初期流産の多くは胎児の染色体異常が原因です。胎児側の問題で起こる流産は防ぎようがありませんが、自分のせいで流産を引き起こしてしまったと自分を責める人が少なくありません。流産は精神的にもダメ―ジを受けるため、心のケアをすることも重要です。

一般的には流産後約1ヶ月で次の生理がきます。手術を受けた場合は、その後3ヶ月程度経過すれば次の妊娠を考えてもよいでしょう。自然に子宮内容物が出て手術を受けなかった場合は、すぐに次の妊娠を考えても問題ありません。流産をしてもその後妊娠しにくくなるということはありません。

出典元:
  • 青木産婦人科クリニック「きちんと知りたい不育症」(http://www.dr-aoki.com/consult/about/about02,2018年3月20日最終閲覧)
  • 的野ウィメンズクリニック白楽「流産とは」(https://www.matono-womens.com/treatment/ninp/ryuzan,2018年3月20日最終閲覧)
  • HUMAN+運営事務局(編)「Baby+お医者さんがつくった妊娠・出産の本」P.42(リクルートホールディングス,2015年)
  • 中山摂子(監)「35歳からの妊娠・出産」P.32~33(講談社,P.32、33)

自然流産後はしっかり休息を取り次の妊娠に備えましょう

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自然流産は胎児側の異常で起こることが多く防ぎようがない場合がほとんどです。流産の診断を受けた場合は状況に応じて子宮内容物除去術などの処置を受けて経過観察をします。

流産を繰り返してしまうときは、胎児の染色体異常以外の原因がある可能性も考えられるため、不育症の検査を検討してもよいでしょう。流産後は、まず心身ともに休息をとることが大切です。医師の指示のもと規則正しい生活を送るようにしましょう。

記事の監修

ポートサイド女性総合クリニック〜ビバリータ〜 院長

清水なほみ

通常の婦人科診療のみならず、最新の脳科学×心理学×医学を統合的に駆使した診療を行う婦人科医。日本で100名しか習得者がいない、トランスフォーメーショナルコーチのテクニックを学び、診療の現場においても、3年間で延べ6000人の患者に同テクニックを用いて診療を行っている。
中学時代のいじめや研修医時代のうつ経験から、「病は気から」を科学的に解明するための研鑽を積む。何気ない会話の中で患者に気付きを与え、片頭痛やイライラをあっさり「忘れさせる」診療には定評がある。5分で病気の「本当の原因」を見抜くため、患者からは「先生は占い師ですか!」と驚かれる。

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