Ⓒママリ
主人公は美穂。夫の正人は何かと美穂を責め、美穂はつらく虚しい日々を送っていました。美穂の心の支えであり、大きな希望は娘のさやかの存在でした。ある日、幼馴染の真由美に正人の浮気を指摘されます。
高圧的な夫の発言に広がる虚しさ
私は、ごく普通の30歳主婦。名前は美穂といいます。どこにでもいるような主婦で、週に3日、近くのスーパーでパートをしている。夫の正人は35歳。会社員。そして、私の宝物である4歳の長女・さやか。この子がいるから、私は毎日頑張れるんだって、そう信じて疑わなかった。
「美穂、今日の夕飯、これだけ? 俺、もっとちゃんとしたもの食べたいんだけど」
正人が帰宅して開口一番に放った言葉は、ため息交じりの不満。食卓には、さやかが大好きなハンバーグと、彩り豊かな野菜サラダ、それに味噌汁が並んでいる。私だって、パートが終わった後に慌てて作っているのに。
「ごめんね、正人さん。今日はさやかの予防接種があって、そのあとバタバタしちゃって……」
「予防接種? そんなの、俺には関係ないだろ。俺は仕事で疲れて帰ってきてるんだから、もう少し労う気持ちはないのかよ」
正人の低い声が、リビングに響き渡る。さやかは、私の背中に隠れるようにして怖がっている。いつからだろう、正人がこんな態度になったのは。それまでは、もっと優しかったはずなのに。
「別に、怒ってるわけじゃなくて、ただ事実を言ってるだけ。料理に文句を言ってるわけじゃないんだから、そんな顔するなよ」
正人は、まるで私が悪いかのように、さらに畳みかける。私の中に、じわりと、言いようのない虚しさが広がっていく。正人は、私の気持ちなんて、これっぽっちも考えてくれない。いつも、自分のことばかり。
夫の浮気を指摘され…
「美穂、最近どうしてる? 正人さんとは、うまくいってる?」
ある日の午後、幼馴染の真由美とカフェでお茶をしていた時、真由美が心配そうに尋ねてきた。真由美は31歳で、8歳の長女・ナツがいる。彼女は3年前に不倫されて離婚した経験があるから、私の些細な変化にもすぐに気づく。
「うーん……。どうなんだろう。正人さん、最近家に帰ってこないこともあって…」
「え? なんで? 仕事が忙しいとか?」
「そう言ってる。10月くらいからかな。週に1回か2回は、帰ってこない日があるよ」
私の言葉に、真由美は眉をひそめた。
「それって……変だよ。仕事が忙しいって言ってもさ、帰ってこないって…。もしかして、正人さん、浮気してるんじゃない?」
真由美の率直な言葉に、私はドキッとした。頭の片隅には、そんな考えがなかったわけじゃない。でも、まさか。正人が? そんなこと、あるはずがないって、自分に言い聞かせてきたんだ。
「まさか。そんなことないよ。正人さん、あんな感じだけど根は真面目だし……」
「美穂、真面目とか関係ないからね。私の元夫も、最初はそんな感じだったんだから。本当に、騙されちゃダメ」
真由美の言葉は、私の心に深く突き刺さった。真由美は、自分のつらい経験があるからこそ、私を心配してくれている。私も、そろそろ現実を見つめなきゃいけないのかもしれない。でも、まだ、認めたくない気持ちと、もしかしたらという不安が、私の心をぐるぐる駆け巡っていた。
「でも、どうして帰ってこないんだろうね。家で何かあったの?」
「特には……。でも、さやかが生まれてから、喧嘩が増えたのは事実かな。ていうか、正人さんが一方的に怒鳴ることが増えたかも」
「あー、それね。うちもそう。子どもが生まれると、男は寂しくなったり、不満が溜まったりするんだって。で、それをうまく表現できずに外に目を向けちゃうらしいよ」
説得力のある分析に不安が募る
真由美の分析は、妙に説得力があった。正人も、もしかしたらそうなのかもしれない。でも、だからといって、家に帰ってこないなんて。
「もし本当に浮気だったら、どうしよう……」
私の声は、か細く震えていた。真由美は、私の手を取り、ぎゅっと握りしめてくれた。
「大丈夫だよ、美穂。もしもの時は、私がそばにいるから。一人で抱え込まないで。いつでも相談してね」
真由美の温かい言葉に、私の目から涙が溢れそうになった。こんな私でも、心配してくれる人がいる。それだけで、少しだけ、心が軽くなった気がした。でも、心の奥底では、もう一つの不安が渦巻いていた。もし、正人が本当に浮気をしていたら、私とさやかは、これからどうなるんだろう。
「ありがとう、真由美……」
私は、か細い声でそう呟くことしかできなかった。
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あとがき:支配されている事実にショックを受ける妻
夫のモラハラと不倫疑惑に苦しむ美穂。夫の態度に疑問を覚えていても、いざ「浮気かも」と第三者から指摘されたら動揺しますよね。また、モラハラを受けている張本人はその事実になかなか気づけないこともあるようです。
美穂のように、自分の困りごとを素直に伝えられる相手がいると心強いものですね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
イラスト:まい子はん










