🔴【第1話から読む】「世話になってるんだから」実家に戻ったシングルマザーに厳しい妹|出戻りシンママが前を向くまで
よつばの習い事について話す中で、再びまおから手厳しい言葉を浴びせられるみずほ。まおの言葉の裏にある、彼女自身の完璧主義な過去が明かされる。
習い事をさせたいだけなのに
「そろそろよつばに習い事させたいと思って…」
リビングで家族が集まっていたとき、私がぽつりと呟いた。よつばももう4歳、何か才能を伸ばせるものがあればと考えていたのだ。
「習い事ね~。まあ、お姉ちゃんの今の稼ぎじゃ厳しいと思うけど」
ソファーでくつろぐまおが、スマホから顔も上げずに言う。その言葉に、カチンとくる。
「まだ転職前だし貯金もこれからだけど、いずれできたらいいと思ってだよ」
「とりあえず転職して給料上げるのが先でしょ。それで小学校2年生くらいにはやらせないとね。中途半端にやったら周りに追いつけなくて落ちこぼれるよ」
確かに、まだ転職も決まっていないし、貯金も心許ないのは事実。でも、何もそこまで言われなくても…。
「お姉ちゃんは視野が狭いから。『やらせたいな』なんて漠然とした考えじゃなくて先のことまで考えなよ」
まおの言葉は、いつも私の核心を突いてくる。いや、核心を突いているように聞こえるだけなのかもしれない。心当たりがあるだけに、余計に胸が締め付けられる。
妹の過去
まおはどうして、こんなに相手に寄り添えないんだろう。
そんなことを考えていると、ふと過去のことを思い出す。小学生のころ、まおは運動会の徒競走で転んでしまった。そのときは1位を走っていたのに、盛大に転んで最下位になってしまったのだ。泣きじゃくるまおに、父は「詰めが甘いんだよな」とがっかりしていた。母も「残念だったわよね」と言っていた。私はいつも最下位だったから、両親はまおに期待していたんだ。私はその場で「まおは頑張っていたのに」と思ったけれど、両親を前に言えなかった。
また、テストで95点を取ると「あと5点なのに」と悔しそうにしていた。私が80点を取って「まあまあだ」と笑っていると、「お姉ちゃんはそれでいいの?」と真顔で言われた。実際、両親は成績が中の下だった私には「まあ頑張ったんじゃない」と軽くあしらい、まおの成績向上に夢中だった。まおは両親の期待に応えたい気持ちが強すぎて、完璧でないとと思っていたのかもしれない。
だからこそ、失敗を繰り返す私や、欲がない様子のよつばを許せないのかもしれない。
DVを受けて警察を呼ぶのは「大げさ」妹の発言に傷ついた
そして、私が夫から暴力を受け、命からがら実家に逃げ帰った、あの日のこと。
「警察呼ぶなんてお姉ちゃんの旦那さんがかわいそ~」
まおは、私が心身ともに傷つき、ボロボロになっている時も、こんな言葉を平気で言い放った。その時の無神経な笑い声が、今でも耳の奥に残っている。
「どういう意味?」
震える声で尋ねた私に、まおは涼しい顔でこう答えた。
「だって、お姉ちゃんから見たら旦那さんが悪者だけどさ、旦那さんにも言い分があったんじゃない?ちゃんと話し合ったの?すぐ警察呼ぶとか、大げさだと思うけど」
その時、私は言葉を失った。まおの言葉は、私の中に残っていた僅かな希望を、容赦なく踏み潰していく。
まおは、私が何も言い返さないと思ってこんなに平気でいられるのだろう。姉妹の中で親に期待されているのはまおで、私は両親にとっての「失敗作」くらいに、まおは思っているのかもしれない。
このままでは、よつばまで私と同じように、自信をなくしてしまうのでは…。そう思うと、居ても立っても居られなくなった。
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あらすじ:妹の心に潜む闇
この章では、まおの言葉の背景にある、彼女自身の心の闇に触れました。完璧でなければならないというプレッシャーは、まおが抱えていたコンプレックスだったのかもしれません。姉の失敗を許せないのは、自分自身に課した完璧な世界が壊れるのを恐れているから。彼女の冷たい言葉は、そんな心の悲鳴だったのかもしれないと気づかされます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










