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幼稚園児の息子を育てる美咲は、公園で出会った理沙というママ友と親子で交流を深めるが、理沙による子ども同士のトラブル対応や雨の中で無理に遊びを続ける様子に、違和感を覚え始めます。
公園での出会い
私は佐藤美咲。夫と幼稚園に通う息子の陽向(ひなた)と3人で、慎ましくも楽しい生活を送っています。陽向は活発で遊び盛りなこともあり、近所の公園に連れていって遊ぶことが私の日課になっていました。
その日もいつものように、陽向とともに公園で遊んでいると、ある1人の男の子が陽向に声をかけてきました。
「なにしてるのー?」
陽向は初対面の子には人見知りしがちで、さっきまではしゃいでいたのが嘘のようにモジモジし始めました。
「こんにちは〜。今ね、お砂で遊んでたの」
口ごもる陽向の代わりに私が話していると、その子の後ろから一人の女性が駆け寄ってきました。
「すみませ〜ん」
その女性はどうやら男の子のお母さんでした。声色や物腰が柔らかく、陽向に対しても優しく会釈する様子に、私は自然と好感を抱いていました。
「いえいえ。逆に、息子に話しかけてくれて嬉しかったです。ね!陽向?」
「あはは、知らない人だと恥ずかしいかな〜?」
人見知りから私に隠れる陽向にも、気さくに対応してくれる男の子のお母さん。これが、彼女との出会いでした。
彼女は川村理沙さん。私と同じく、旦那さんと陽向の1つ下の息子さんである拓海くんの3人家族で、どうやらご近所さんだったようです。
最初の出会い以降、私たちは度々公園で顔を合わせるようになりました。育児のお話をしたり、子どもと遊んだりして、子ども同士も次第に打ち解けて一緒に遊ぶようになりました。次第に距離も縮まり、連絡先を交換。公園で遊ぶ約束をする仲になっていきました。
理沙さんと知り合ってから、公園遊びは一緒に過ごすことの方が多くなっていきました。陽向はもじもじしながらも一緒に遊べる歳の近い子がいることが嬉しいようだし、拓海くんはウチとは別の幼稚園に来年入園予定らしく、幼稚園のママ友には話しづらいことを理沙さんに話せて、私も新鮮な気分でした。
子ども同士のトラブル
良い関係を築けている、そう思っていたある日。その日も理沙さんと約束して、子どもたちを遊ばせに公園に連れてきていました。彼らは持参した道具を使って砂場遊びを始め、私たちはそばのベンチで息子たちを見守りつつ、ママ友トークをしていました。
しばらくして会話がひと段落。理沙さんと2人、子どもたちの方にふと視線を向けて様子を見ていると、拓海くんが陽向の使っていた途中の道具を何も言わず横取りしていました。陽向はすぐに気づき「かえして」と穏やかにお願いするも「いや!」と拒否する拓海くん。次第に言い合いになる子どもたちを仲裁しようと、私たちは2人の元へ寄っていきました。
「どうしたの?ふたりとも」
「たくみくんがおもちゃとったの!ぼく、つかってたのに」
「ちがうよ!『かーしーてー』っていったよ!」
相反する主張をする子どもたち。気持ちは汲みつつ、私はさっき見ていた事実から話を進めようと考えていました。その時、理沙さんが口を開きました。
「そしたら、たくみの『かーしーてー』がひなたくんにきこえてなかったのかもね〜」
その言葉に、私はモヤっとしました。私たちは確かに会話をひと段落させて、言い争いが起きた一部始終をはっきりと見ていました。そして拓海くんは「かーしーてー」とは一言も言っていないのを、理沙さんも確認していたはずです。言葉やコミュニケーションが拙い年頃だからトラブルは付き物ですが、事実がはっきりしているなら、謝ることを学ぶことも大事なはず……。
結局、理沙さんの仲介のもと、おもちゃの横取りの件はうやむやになり、拓海くんが陽向に謝ることはありませんでした。私も、関係が崩れることを躊躇して追求することはありませんでした。
親子への違和感
その後、モヤモヤしながらも子どもたちを遊ばせていると、ぽつぽつと雨が降り始めました。私は子どもたちに声をかけつつ、理沙さんに「帰りましょうか」と声をかけました。「やだー!まだあそぶー!」そんな子どもたちの訴えを聞いてなのか、理沙さんは微笑みながら答えました。
「まだ遊ぼうよ?これくらいの雨なら、どうってことないでしょ?」
私は言葉を失い、開いた口を閉じることができませんでした。雨はこれから強くなる可能性もあるし、砂場ではお洋服もドロドロになってしまうかも。
(私たちはともかく、子どもたちが風邪をひく心配はしないのだろうか?)
そんな疑問に胸をモヤつかせながら、スマホの雨雲予想を見せて、これから雨足が強くなることを伝えてやっと帰宅の準備を始めました。
「幼稚園外の良きママ友」理沙さんに抱いていた私の中のイメージは、こんなを“ちょっとした違和感”をきっかけに陰りを見せ始めました──。
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あとがき:信頼の芽生えと、その裏に潜む小さな違和感
理沙との出会いは、美咲にとって心強い出来事でした。夫や幼稚園外では得られない、ママ同士の共感を分かち合える存在。けれど、子どもへの接し方やトラブル対応に見え隠れする“違和感”は、やがて信頼を揺るがす種となっていきます。親子関係の価値観は人それぞれ。しかし、すべてを飲み込んで関係を保ち続けることが本当に良いことなのか──。その問いが、美咲の心にじわじわと芽生え始めていました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










