DV夫と離婚し、シングルマザーとして生きるえりか。離婚後に出会った年下の同僚・隆司との交際は順調で、幸せな日々を送っていた。だが、彼の束縛めいた言動に、えりかの心はわずかな違和感を抱き始める。
つらい過去を乗り越えて
「えりか、最近すごく顔色が良いよね。隆司くんのおかげ?」
仲がいい同僚・康子の言葉に、私は思わず頬が緩む。彼女は私の一番の理解者であり、この部署で唯一、私が元夫から受けたDVのこと、そして3年前に離婚したことを知っている親友だ。シングルマザーとして、3歳の息子タツキと毎日を必死に生きる私にとって、康子の存在は心の支えだった。
「どうかな。でも、毎日が楽しいのは確かかも」
「そっか。良かった。あのころのえりかを知ってるからさ、本当にうれしいよ」
あのころ。それは、元夫との結婚生活を指す。彼の支配的な態度、些細なことで罵倒され、人格を否定される日々。暴言を吐かれ、「お前は役立たずだ」と言われ続けた。
心の底から疲弊し、もう二度と誰かを愛することはできないかもしれないとさえ思っていた。だからこそ、今の彼・隆司と出会い、再び心から愛おしいと思える人ができたことが、自分でも信じられないくらいうれしかった。
親友も認める私の恋人
隆司とは付き合って4か月。彼は私のいる部署に配属されてきた、まだ23歳の後輩だ。若いのにどこか落ち着いていて、仕事にも真面目に取り組んでいる。そんな彼が、まさか私のことを好きになってくれるなんて、最初は冗談だと思っていた。
けれど、真剣な瞳で
「えりかさん、真剣にお付き合いしたいです」
と告げられた時、私の凍っていた心は、ゆっくりと溶けていくのを感じた。
毎日同じ空間で仕事をして、両親が子どもを見てくれる日は食事をして帰ることもあるし、休日はタツキも含めて遊びに出かけることも。彼がタツキに優しく接してくれるのを見るたびに、胸が温かくなった。
「隆司くん、タツキくんにも優しいんでしょ?本当に良い男だよね。えりか、次こそは幸せになってほしいな」
康子の言葉が、心にじんわりと染み渡る。康子は、元夫と結婚していたころの私をよく知っているからこそ、隆司との関係を心から応援してくれている。彼女の言葉は、私に大きな安心感を与えてくれた。
小さな違和感を無視する
でも、最近、隆司の言動に少し、ほんの少しだけ、違和感を覚えることがある。
たとえば、彼の「もっと一緒にいたい」という言葉。夜、一緒に食事をしたあとにも、可能な限り彼と過ごすことを要求する。そして、もしそれが叶わないと、彼はわかりやすく不機嫌になる。それはまるで、私の都合よりも、彼の欲求が優先されるべきだとでも言っているようで。あとは、休日に会えないと伝えたときもそう。
「明日はタツキと二人で過ごしたいから、ごめんね」
そう伝えた時、隆司は口を尖らせた。
「えりかさん、俺のこと嫌いになった?それとも、俺よりタツキの方が大事?」
冗談だとわかっている。でも、この言葉を聞いたとき、胸の奥で何かがちくりと刺さったような気がした。彼の愛情表現は、時々、私を少しだけ息苦しくさせる。
このときの私は、隆司の「大好き」という言葉の裏に隠された、得体の知れない感情に、まだ気づいていないふりをしていた―――。
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あとがき:信頼と違和感の始まり
新しい恋に心躍らせるえりかですが、隆司の言葉の端々に、過去の経験からくるトラウマが警鐘を鳴らし始めます。この違和感が、今後の展開にどのように影響していくのか、彼女の心情の変化に注目してください。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










