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保育園の送り迎え、ご飯の準備、お風呂、寝かしつけ…。
すべてが私の肩にかかっていた。信男は疲れて帰ってきても、自分の趣味のことで頭がいっぱいで、私の苦労には気づいていないようだった。一度、「少しは育児を手伝ってほしい」と伝えたことがある。
信男は一瞬、顔をくもらせたかと思うと、
「俺の方が稼いでるんだから、これくらいは当然だろ」
と吐き捨てた。その一言に、私の心は完全に閉じてしまった。
「なんで、私ばっかり…。子育てなんてしたくない。仕事をしてた方がラク」
いつしか、そんな考えが頭に浮かんでしまう自分がいた。
私は、「母親に向いていないんじゃないか」と毎日、自分を責めた。マモルの寝顔を見るたびに、「こんな母親でごめんね」と心の中であやまった。
育児中のつらさや孤独から逃げ出したくて、私はあることをしてしまった。
それは、不倫だった。 ※1
ワンオペ育児で追い詰められた妻の過ち
仕事をしながら家事も育児も、すべてこなすのは、精神的にも体力的にもツラいもの。
夫にSOSを出したものの、里子は希望を打ち砕かれます。その結果、「不倫」という道へ逃避してしまったのです。
そんなある日、夫から不倫の証拠を突きつけられた里子は、凍りつきます…。
不倫がバレ、すべてをうしなった日
信男の冷たい声が、部屋に響き渡った。私は声が出せず、ただ、信男の突きつけたスマホの画面を凝視することしかできなかった。
「探偵を雇った。ずっとお前を調べていた」
信男の言葉は、まるで映画のセリフのように現実感がなかった。彼の目は、まるでゴミを見るかのようだ。私の不貞行為は決定的なものだった…。
「もうお前とはやっていけない。離婚だ」
信男は淡々とそう告げた。
「り、離婚…?」
のどから、かろうじてしぼり出した声は、ひどく震えていた。
「そうだ。そして、マモルの親権は俺が取るからな」
信男はそう言うと、リビングで遊んでいたマモルを抱き上げた。 マモルは信男のうでの中でうれしそうに笑っていた。何も知らないその笑顔が、私の心をさらに深くえぐった。 ※2
里子にとって、不倫はツラい現実から逃避する手段でした。ですが、息子・マモルを取り上げられ、里子は取り返しのつかないことをしたことに気づきます。
このあと、里子は家を追い出され、ビジネスホテルに滞在。離婚、親権の問題と、課題が山積みの中、さらに里子を追い詰めるできごとが起こります。
まさか…不倫の代償
「うそ…でしょ」
私は、トイレでそのマークを目にして、ヒザから崩れ落ちた…。
信男に自宅を追い出され、とりあえず、ビジネスホテルに宿泊していた。 すると、突然の吐き気におそわれた。「気持ちの問題かな」と、思っていたが、私はあることを思い出したのだった。
「そういえば、生理がきてない…?」
「 まさか」とは思ったが、急いで薬局で妊娠検査薬を買った。 震える手で検査薬を試すと、くっきりと陽性反応が出た。 妊娠をしていたのだ。
元々、子どもはできにくい体質で、マモルが妊娠した時は不妊治療に通っていたし、その時は体外受精で妊娠した。
油断していたのだ…。不倫相手と関係を持った時、避妊していなかった。正直、おなかの子どもが、信男の子なのか…それとも、不倫相手の子なのか分からなかった。
混乱する頭の片隅で、冷静な自分の声が聞こえた。
「シングルマザーで、2人の子どもを育てるのは無理だ」
「母親が有利」という弁護士の助言が本当なら、私はマモルの親権を得るかもしれない。しかし、おなかの子どもも育てなければならない…。
私一人で、2人の子どもを育てていく自信も、十分な経済力もない…。 私は、マモルの親権を信男…父親にすることに同意し、離婚に応じることにした。 ※3
不倫の発覚と同時に、里子は妊娠していることが判明しました…。泣く泣く、マモルの親権はあきらめるしかありません。
本作では、家庭のストレスから不倫に走り、大切な家族をうしなってしまった女性の姿が描かれています。ワンオペ育児に限界を感じていた、里子。夫から助けを得られなかったことは、とても残念ですが、不倫をしてしまう前に、他の方法を選ぶことはできなかったのでしょうか。
一人で悩みを抱え込む前に、信頼できる家族や友人、専門機関を頼ることができていれば、里子の未来は変わっていたのかもしれません。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










