「正行さんが言ってる『疲れてた』とか『寂しかった』っていうのは、全部ただの言い訳にすぎないでしょ」
真衣は、憤りを隠せない様子だった。
「そう…だよね…」
真衣の剣幕におされるようにうつむく私を見て、真衣はハッとしたように目を逸らした。そのあと、静かにこう続けた。
「ごめん…。私も母を亡くしたからさ…そのつらさも悲しさも、痛いほどわかる。でも、それとデリヘルを自宅に呼ぶのは、まったく別の話だよ…」
真衣は母親を昨年、亡くしていた。そのつらさを知っているからこそ、真衣の言葉には重みがあった。
「『一人になるのが怖い』『寂しい』…その気持ちはわかる。でも、もっと違う方法があるはず。趣味を見つけたり、友だちと会ったり…いくらでもやりようはあるでしょ」
真衣はそういうと沈黙し、ゆっくりと息を吐くと、私の目を見つめて言った。
「本当に家族を大切に思うなら、佳奈子やマオが悲しむことなんて絶対にしないよ」
真衣の言葉に、私は何も言い返すことができなかった。 ※1
友人からの的確なアドバイスで視界がひらけた
佳奈子は、夫のうらぎり行為に困惑していました。許せない気持ちと、夫をきらいにはなれない気持ち。そして、離婚をし、シングルマザーで子どもを育てることへの不安…。一度に、すべてを決めるのは難しいですね。
そこで、信頼できる友人に話を聞いてもらい、助言を得ます。的確なアドバイスをもらい、佳奈子は再び夫と向き合うことを決めます。
ただ、夫と2人きりでは、また夫の涙に流されてしまいそうです。そこで、佳奈子はある人物を頼ることに。それは…。
妻が夫の過ちを打ち明けた相手とは?
翌日、私は義父の誠司さんに電話をかけた。
「お義父さん、少し、お話したいことがあるんです…」
私の声が沈んでいるのを感じ取ったのか、誠司さんはすぐに「どうした?何かあったか?」と心配してくれた。
私は正直に、正行がデリヘルを自宅に呼んでいたこと、そして、今悩んでいることを話した。
「正行が…なんてことだ…」
電話口で、誠司さんの声が震えているのがわかった。義父は、私と同じように深く傷ついたようだった。
「佳奈子さん、本当につらい思いをさせてすまない…」
義父は、息子の過ちを自分のことのように感じ、声を震わせながら涙を流しているようだった。その温かい心に、私もまた涙が止まらなかった。
週末、正行と誠司さん…そして、私の3人で話し合いを行うことになった。 ※2
佳奈子は、きびしくも温かい義父を頼ることにしました。すると、佳奈子の胸の内を察し、謝罪をしてくれたのです。心から寄り添ってくれる人の存在は、とても大きいですね。
そして、決戦の日がやってきました。佳奈子が下した決断とは…。
離婚か再構築か?妻が提示した条件
リビングには重い空気が流れていた。正行は誠司さんの前で、再び号泣しながら、自分がしたことの愚かさを謝罪した。
「お父さん…俺は…佳奈子とマオを、裏切ってしまいました…」
「正行!お前…なんて馬鹿なことをしたんだ!佳奈子さんがどれだけお前のことを思ってくれているか…わからなかったのか!マオだって、もし、大きくなってそんな父親の姿を知ったら、どう思うか…」
誠司さんは、私の気持ちを代弁してくれ、正行にきびしい態度を見せてくれた…。その姿に、私は胸を打たれた。義父もまた、この家族を大切に思ってくれているのだと、改めて実感した。
話し合いの末、私は正行に条件を提示した。
「もし、次に同じことをしたら、絶対に許さない。その時は離婚します。そして、きちんと慰謝料を支払ってもらいます」
正行は、深くうなずき、その場で誓約書を書くことに同意した。そこに、義父も証人として署名をしてくれた。
「正行、もう二度と佳奈子さんやマオを悲しませるな。もし、また同じことをしたら、私が許さないからな」
誠司さんの言葉に、正行はただただ頭を下げるばかりだった。
こうして、私たちは「再構築」の道を選んだ。 ※3
夫は心から反省したようです。誓約書を書き、再構築の道を選びました。
本作では、ある日突然、夫のうらぎり行為が発覚し、混乱しながらも自分で納得のできる結論にたどりつくまで葛藤した、妻の様子が描かれています。
また、佳奈子は本当の意味で自立するために、仕事を再開。母として、女性として、強くなろうとする姿に、勇気をもらえる作品です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










