🔴【第1話から読む】親戚同士でお出かけ中「スマホ持つ手が下がらない」→わが子を撮る義姉に違和感|弟の子を独占する義姉
娘の運動会で、沙耶の代わりに義姉が娘と競技に参加。その光景に、沙耶は母親としての自信を失いかける。けれど義母だけは、私の心の痛みに気づいていた。そんな義姉とのすれ違いのまま、年末年始を迎えることになる。
年末の帰省、胸に残るわだかまり
秋の運動会が終わり、季節はすっかり冬。気づけばもう年末に向かっていた。私たち家族は大晦日と元日に夫か私の実家で過ごすようにしていて、今回は義実家で過ごす予定だった。けれど、未だに私は義姉への抵抗感を拭うことができず、今回の帰省も内心では気乗りしていなかった。
私の思うように義姉が子どもたちと距離が近いのか、はたまた私が過剰に義姉に反応してしまっているだけなのか──そんな葛藤もあり、夫にも誰にも相談できないまま、あっという間に年末年始の休みに入った。
「いらっしゃ〜い!寒かったでしょ〜?」
義実家に着くや否や出迎えたのは義姉だった。どうやら私たちより早く帰省していたらしい。義姉は会って早々、娘の花を抱き上げては「お部屋こっちね!」と部屋案内を始めた。相変わらずの子どもとの距離の近さに、早くも私は気持ちを曇らせた。
それ以降も義姉は、しきりに義両親に子どもたちを抱っこさせようとしたり、一緒にお風呂に入りたがったりと、とにかく子どもたちと居る時間や触れる機会を作ろうと動いていた。それが私から子どもたちを引き離されているようにも感じて、余計にモヤモヤした。
初詣での小さな出来事
「明けましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます!」
大晦日から一晩明けた元旦。茶の間では義両親のまねっこをしながら子どもたちが新年の挨拶をしていた。
「よくできました!じゃあこれ、みんなからのお年玉です」
「ありがとう!」
「良かったね。初詣で使わせてもらおうか」
夫が子どもたちにそう声をかけた。今日は地元の神社にみんなで初詣に行く予定を立てていた。娘の花は去年、私の地元の神社の初詣に行ったことがあり、楽しかった思い出があるのか、今朝は目覚めが良かった。
朝食を済ませて少しまったりと過ごした後、私たちは地元の神社に足を運んだ。神社は参拝客と出店を回る人で賑わいを見せていた。参拝のために行列に並ぶも、子どもたちは出店に興味津々で、本堂に着く頃には待ちくたびれた様子だった。
参拝を無事済ませると、息を吹き返したように娘は目を輝かせていた。
「ねぇねぇ、クレープとチョコバナナたべたい!」
興奮気味に私を真っ直ぐ見て伝える娘。ゆっくり回ろうと伝えようとした時、義姉が娘の目線に合わせるようにしゃがみ込んだ。
「そっか!そしたら絵里ちゃんと一緒に行ってこようか!」
娘に微笑みかけながら、義姉がそう言った。あぁ、また勝手に連れていくんだ──私も卑屈になって内心呆れ果てていた。しかし、娘は表情を曇らせて黙り込んだ。
「ん?花ちゃん、行かないの?」
「……はな、ママといきたい」
卑屈になっていた私には意外だった娘からの一言に、一瞬戸惑ってしまった。けれどその直後、胸の奥がジーンと温まるような感覚を覚えた。
「……あ、でもほら、悠くん抱っこしてるし、大変なんじゃないかな?」
「やーだ。ママとがいい!」
誘いたい義姉と私と出店を回りたい娘、気づけばどちらも食い下がる状況になっていた。何とか乗せようと義姉が再び口を開いた瞬間だった。
義母の優しいひと言
「絵里。花ちゃん、ママと行きたいんだって」
そう義姉に声をかけたのは義母だった。優しさの滲む微笑んだ表情の中に、静かな強さを感じた。
「でも沙耶ちゃん、悠くん連れたままだったら大変じゃ……」
「悠くんを啓介とか私たちに任せてもらえば解決でしょ?それに、ゆっくり回るのだって思い出になるでしょ?」
義母は穏やかに諭すように義姉へと語りかける。義姉は困り顔ながら、義母の話に耳を傾けていた。その様子を見て、義母は続けた。
「それにさ、絵里。もしかしたら花ちゃん、もう絵里とは十分一緒に過ごしたから、そろそろママと過ごしたくなったんじゃない?」
「えっ?」
それはまるで、私の心を見透かしたような言葉だった。ずっと義姉に子どもたちを取られているような気がしていた。子どもたちも義姉と過ごす方が楽しくなってしまったんじゃないかとさえ思っていた。そんな私の不安を掬い上げつつ、傷つけないように義姉に気づきを与えるような言葉を義母は紡いだ。
優しくも真剣な義母の眼差しと言葉に、義姉も何かを察した様子だった。義姉は娘に合わせてしゃがみ込んだ体勢から立ち上がり、私に身体を向き直した。
「沙耶ちゃん、ごめんね。子どもたち、独り占めにしてたよね?」
「あ、いえいえ……でも正直、子どもたちともう少し過ごしたいなぁと思ってました」
──義母の言葉がけによって、私の心の中のわだかまりは解けた。その後、義姉は良い距離感で子どもたちと接してくれていて、私も当時より余裕を持って接することができるようになった。
かつての義姉の子どもたちの独り占めには、母親として不安を感じざるを得なかった。でも関わり方を変えた今、義姉のように愛情深く甥っ子姪っ子に接してくれる親戚の存在はありがたい限りだ。すれ違いと葛藤の末に得られたこの関係性を、私は大切にしていきたい。
あとがき:すれ違いの先に見えた“家族”の形
義姉との関係は、ずっと難しいものだと思っていた。けれど、娘の素直な言葉と義母の優しい仲裁が、沙耶たちの関係を静かに変えてくれました。
母としての沙耶を尊重し、義姉も歩み寄ってくれたこと。あの時の小さな一言が、家族を繋ぎ直すきっかけになりました。
彼女はこれからも迷いながら、それでも“家族であること”を大切にしていくのでしょう。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










