🔴【第1話から読む】「最近、当たりが強くて...」パート先の厄介なベテランさん|お金貸しておばさん
主人公とパート仲間の藤井さんは、高山さんからの圧力や金銭の貸し借りの話を全て上司に話しました。上司は事実確認を進め、ようやく平穏が訪れようとしていました。
本当の解決
私たちが上司に報告した日から、1週間が過ぎました。その間、高山さんは職場に姿を見せませんでした。そして、ある日の朝礼でついに告げられました。
上司「本日をもって高山さんは退職です。詳細は説明できませんが、業務上の不適切行為が確認されました」
集まった人たちは静かにざわめきましたが、誰一人として驚いた顔はしていませんでした。
藤井「……本当に、終わったんですね」
その表情は不安と安堵が半分ずつ混ざっていましたが、明らかに以前のように怯えてはいませんでした。上司に呼ばれた私たちは、後にバックヤードで話を聞くことになりました。
上司「まず、2人のおかげで状況を把握することができました。ありがとう」
藤井「いえ、私のほうこそ迷惑を……」
上司「迷惑なんかじゃありません。むしろ、言ってくれてよかった」
そして、少し声を落として続けました。
上司「金銭の件ですが……会社の顧問弁護士を紹介します。返済について、高山さんは少しずつでも返すと言っていました。弁護士がいれば安心できるでしょうから、よかったら」
藤井さんは両手で口を押さえました。
藤井「私のお金、返ってくるんですか……?」
上司「はい。法的に正しい手続きを取りましょう」
その瞬間、藤井さんの目から涙がぽたぽたとこぼれ落ちました。弱くて苦しい涙ではなく、胸の奥に固まっていたものがようやくほどけて流れ出したような、そんな涙でした。私も隣で思わず目の奥が熱くなりました。
上司の聞き取りによると、高山さんの借金の理由である「子どもの入院」はやはりウソだったそう。パチンコで家のお金を溶かしてしまったことを夫に言い出せず、ウソをついて立場の弱い藤井さんに借りていたようなのです。やはり、許されるべきではない人でした。
未来へ
仕事を終えて帰り支度をしていると、藤井さんが私の方に歩いてきました。
藤井「助けてくれて、本当にありがとうございました。私、本当に救われました」
そう言って、深々と頭を下げました。そんな姿を見て、私は慌てて手を振りました。
私「そんな、やめてよ。私はただ見てられなかっただけだから」
藤井「今日久しぶりに、来週のシフトを見るのが怖くなかったんです」
藤井さんは穏やかに笑っていました。あの日、びくびくと物音に怯えていた藤井さんではなく、ちゃんと前を向く力を持った一人の母親の姿がそこにはありました。
私「これからは、もっと楽に働けるよ。少なくとも、怒鳴る人はいなくなるし」
藤井「そうですね」
そう言って藤井さんは窓の外の夕焼けを見つめていました。その横顔を見て、私は思いました。どんなに小さくても、誰かの味方になれる瞬間はある。その一歩で、救われる人が確かにいる。そして、今回の一歩は、確かに藤井さんの未来を変えられたのだと。
あとがき:職場の人間関係
働くお母さんたちが抱えやすい複雑な職場の人間関係。「職場だから」「我慢しなきゃ」と抱え込んでしまう気持ちに、共感できる方も多かったのではないでしょうか。声を上げるのは勇気が必要ですが、誰かの味方になる一歩が状況を大きく変えることもありますよね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










