マイホームに引っ越した佐藤家。近所付き合いにも恵まれたように思えたが、斜め向かいに住む東城さんは他人の生活を探る「ボスママ」だった。徐々に言動がエスカレートし、主人公・みのりは不安を覚え始める。
新しい街での期待
私の名前は、佐藤みのり。夫と、小学1年の息子・そうた、4歳の娘・ゆいの4人家族だ。春の終わり、念願だったマイホームに引っ越した。子ども達がのびのび遊べる環境で、私たちの新しい生活は穏やかに始まった。
ご近所さんとの付き合いも楽しみのひとつだった。ある日、向かいに住む中村さんが声をかけてくれた。気さくな雰囲気で、私と年齢も近い。引っ越しで心細かったから、その距離感がとてもありがたかった。
にじむ違和感
中村さんとは引っ越して間もなくから意気投合して、会えば世間話ができる関係性になった。ある日「近所に同じくらいの年の子がいる家は…」という話をしていたとき、中村さんは少し表情を曇らせ、視線を斜め前の家へ向けた。
「あの…気をつけて。東城さんは、ちょっと…」
中村さんが小声でつぶやく。東城さん。斜め向かいの立派な家に住む、キリッとした目つきの女性。近所では「ボスママ」と呼ばれていると聞いた。引っ越し当日にあいさつに行った時は、普通の人に見えたのだけど。
「ご近所さんが増えてうれしい!よろしくお願いします〜!」
その時の東城さんは、確かににこやかな笑顔だった。だけど、1点だけちょっと違和感があったのは、荷物に異様に興味がありそうだったこと。
「随分荷物多いのね?引っ越しって大変よね!」
口調は軽かったけれど、目線は私の家の荷物に釘付けだったように見えたのが気になった。でも、私は気にしないようにした。変に悪い印象を持ちたくなかったから。
子どもたちはすぐに新しい環境になじみ、公園へ行けば同じ幼稚園の子とも遊べた。私も少しずつ近所のママと話すようになり胸をなでおろした。でもそのころから、違和感は、じわりとにじむように現れた。
ある夕方、公園から帰るときのこと。東城さんが近づいてきて、ちらりと息子の靴を見た。
「佐藤さん、お子さんの靴ちょっと古すぎない?転びそうで心配よ」
「え…これは本人が好きなので、たしかに古いですけど…」
その時、東城さんはわざとらしく声を小さくしてこう言った。
「もしかしてさ…旦那さん、稼ぎ悪いの?」
にこっと笑いながら、ずけずけ踏み込んでくる。背筋が冷たくなった。
「え、いや、そんなことは…」
「あら、変なこと聞いてごめんね!困ったことがあるなら、なんでも話してほしかっただけなのよ」
私の表情が固まったのに気づいたのか、東城さんはすぐに引き下がった。でもその後、さらに衝撃的な光景を目にすることになる。
ボスママの本性の影
朝、ゴミ出しの時間、玄関先で不穏な物音がした。
「えっ…何してるんですか!」
ゴミステーションの近くにいた東城さんは、ためらいなく中村さんが出したゴミの中をのぞき込んでいた。その様子を見て、中村さんは何とも言えない表情を浮かべている。
東城「ちょっと中村さんち、お惣菜ばっかりじゃーん」
中村「ちょっと、やめてくださいよ」
すると東城さんはまた、私に話しかけた時のようにコソコソ声を作ってこう言った。
東城「ご主人とさ、うまくいってないとか?」
中村さんの顔色がみるみる青くなる。
中村「……そんなことないですよ!」
東城「あらごめんなさい、そういう噂を聞いたから本気にしちゃったわ」
東城さんは鼻で笑い、そのまま去っていった。残された中村さんは、呆然としていた。私は少し離れたところにいたけれど、急いで駆け寄った。
「大丈夫ですか…?」
「……どうしたらいいんでしょうね?あの人…」
私は声をかけることしかできない自分に、悔しさがこみ上げた。みんな普通に暮らしているように見えるこの街で、私たちは誰に見られているのかもわからない。ただ一つ、確かなことがある。東城さんは、ヤバい人だ。
(この街で、暮らしていけるのだろうか……?)
不安だけが、ゆっくりと心に沈んでいった―――。
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あとがき:忍び寄るボスママの影
初めての街での生活は、誰にとっても不安がつきものです。そこで出会ったご近所さんが、もし“境界線のない人”だったら……?主人公・みのりにとって東城さんは、まさにそんな存在でした。
明らかに違和感があるのに、表面上は笑顔で近づいてくる。その恐ろしさは、静かに、しかし確実に生活へ浸食していきます。まだ序章にすぎませんが、引っ越し早々こんな人がいたら怖いですよね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










