🔴【第1話から読む】「ご祝儀で返すから」弟夫婦への不安な貸し出し
弟夫婦の結婚式費用として、姉・美雪は60万円を貸すことに。式は成功したが、ご祝儀で余裕が出ても返済の話はありません。弟の妻に確認すると「両親はお祝い金として返さなくていいと言っていて…」と、謎理論を繰り広げて…。
返済拒否の真相
弟夫婦が結婚式を終えてから1週間が経った。「義妹が支払いを渋っている」と弟から聞かされてショックを受けつつも、私も貸したお金を諦めきれず、弟に連絡を続けていた。けれど「まだ話し中」「俺は口座の暗証番号がわからなくて…」の一点張りで、進展はなかった。
弟をこれ以上探っても埒が開かないと思った私は痺れを切らし、義妹に連絡することにした。正直、お金の話だから気まずいと思ったけれど、返済を渋る理由は義妹の口から聞く他ないと思った。
「もしもし、愛梨さん?」
「お義姉さん!先日の結婚式ではご出席ありがとうございました」
電話の応答は礼儀正しく明るい、私が馴染みある愛梨さんの声だった。この娘が借金の返済を渋るようには、到底思えなかった。
「お招きいただいてありがとね」
「とんでもないです!どうされました?」
義妹からの問いに私は、気の進まない質問を恐る恐る投げかけた。
「あぁ、実はね……結婚式の前払い金のことで…。健太には、貸したお金を振り込んでほしいってお願いしてるんだけど……」
すると、一瞬の沈黙の後に義妹は真相を話し始めた。
「ご心配おかけしてすみません。実は、うちの両親からは『お祝い金として渡すから返さなくてもいい』って言われたんです。だからうちの両親からもらったお金はそのまま、新婚旅行と新生活の資金にしようと思ってて…」
淡々と話していく義妹だが、一向に私への返済の話は出てこない。
「え~でも、ちょっと言いにくいんですけど、謙太さんのご両親からは援助してもらってないので、それもどうなのかなって…。援助は同額の方が、あとあとすっきりするかなっていうか…」
そこから先は、ずばり「返さない」とは言わないまでも「返さなくていいですよね?」というオーラ全開の弁明が続いた。私はどう返せばいいかわからず、気の抜けた相槌をうつくらいしかできなかった。
謎理論に絶句
義妹からの説明は理解に苦しむ。仮に義両親がが返さなくて良いと言っていたとしても、それは義両親のお気持ちであって、私が貸したお金の返済は別問題だ。義妹の謎論理に動揺と憤りを感じながらも、そのことを伝えてみた。
「……そうだったんだ。ただ、愛梨さんのご両親から借りたお金は良くても、うちから貸したお金は返してほしいよ。申し訳ないけど、そんな余裕があるわけじゃないんだからさ」
荒れる心を何とかおさめつつ、慎重かつていねいに義妹に提案する。
「そうなんですね…。だったら健太さんの家からは支援なしで、うちだけ支援したってことでいいですか?私たちとしては、今後、何かしらの方法で支援していただいた分を還元していく方が平等かなとか思ったんですけど」
引き下がらない義妹の様子に、私はこれ以上の説得は無意味だと呆れてしまった。
「うちはそう思えないけど、愛梨さんの考えはわかったよ。新婚旅行楽しんでね」
そう心にもない言葉を力無く吐き出して通話を終えた。夫にも相談して何とか捻出した大金は、もう手元に戻ってこないのだろうか。あまりにも不本意で情けない…。
父の決断
それから日が経たないうちに、私は用事のために実家に立ち寄った。お金の問題について、私の中では解決していなかったけれど、両親には心配をかけさせまいと黙っていた。
お茶を飲み終え、実家を出ようとした時だった。父がふと私に訊ねてきた。
「そういえば、健太に貸したお金はちゃんと返ってきたか?」
心が見透かされたようで驚いたけど、同時に嬉しくもあった。諦めかけていた問題に光が当たり、グッと胸が熱くなった。私は両親に、貸したお金の現状を正直に相談した。
「そうだったのか。悩ませてすまなかった……俺に考えがある」
ひと通り話し終えると父は深々と私に頭を下げた後、そう言った。凛々しい父の表情に、諦めかけていた私の中に、期待が灯った―――。
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あとがき:父、立つ
結婚式という「祝い事」を理由に、返済しない選択肢を当然のように語る義妹。「借りたものは返す」という当たり前を揺るがす言葉に、美雪は深い無力感を覚えます。しかし、その姿を見逃さなかった父が動き出し、事態は思わぬ方向へ。
そして、この“父の一手”が、弟夫婦の態度にも変化を促すきっかけになるのです。身内だからこそこじれるお金の問題。いよいよ反撃が始まるようです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










