カフェのオープニングスタッフとして楽しく働くはるこだったが、残業代目当てでダラダラ残業するおばさん達にイライラしていた。そんなはるこの気も知らず、彼女たちは今日も不要な残業をしていて…。
素敵なカフェでの仕事に、ちょっとした悩み
豊かなコーヒーの香りと、焼き立てのクロワッサンの甘い匂い―――。私が勤める「カフェ・ルミエール」は、街路樹の美しい通りに面した、ガラス張りの喫茶店です。
開店から半年が経ち、ようやく常連のお客様も増え始め、店内のオペレーションも安定してきた……はずでした。少なくとも、表向きはそう見えているのかもしれません。 けれど、カウンターの内側、スタッフルームにいる私は、ちょっとしたモヤモヤを抱えていました。
「はるこさん、お疲れ様。今日のランチタイムも戦争でしたね」
「本当、目が回るかと思いました」
私は更衣室のロッカーを開けながら、深いため息をつきました。時刻は16時を回ったところ。朝の開店準備から夕方までのロングパートという条件は、子どもが少し手を離れてきた私の働き方としては理想的でした。
7時間勤務。社会保険にも加入でき、家計を支えるには十分な条件です。同じようにロングパートとして採用されたのが、田中さんと山田さんでした。 お2人は50代。どちらも一人暮らしで、時間には余裕があるようです。
オープニング研修の時から、私たちは3人1組のセットとして扱われ、シフトもほぼ同じ時間帯。 最初の頃は、女性同士で和気あいあいと仕事ができることを嬉しく思っていました。 田中さんはおっとりとした雰囲気の方で、山田さんは世話焼きなタイプ。2人とも、決して根っからの悪人というわけではないのです。 ただ、半年という時間を経て、私は二人の本性に気づいてしまいました―――。
そして今、その「本性」こそが、私の平穏なパート生活を脅かす最大のストレス源となっているのです。
ダラダラ残業に付き合わされる苦痛
「じゃあ、締め作業に入りましょうか」
田中さんがエプロンの紐を締め直しながら、のんびりとした口調で言いました。 その言葉を聞いた瞬間、私の胃のあたりがキリキリと痛み始めます。
私たちのカフェには、「その時間のシフトに入っているメンバー全員で、シフトの締めをする」というルールがあります。 チームワークを重視する店長の方針で、本来、お互いを助け合うためのルールでした。
しかし、田中さんと山田さんにかかると、そのルールは最悪の足枷へと変貌するのです。
「あ、山田さん。そっちのシンク、私がやりますから」
「いいのよぉ、はるこさんはレジ閉めお願いねぇ。私たちはこっちをゆっくりってるからね」
山田さんがスポンジを手に取り、まるでスローモーション映像を見ているかのような速度で、コーヒーカップを洗います。 キュッ、キュッ、と同じ箇所を何度も。 もうそのカップ、十分きれいですよ、と言いたくなるのを必死で飲み込みます。
田中さんは田中さんで、ホールの床掃除をしますが、とんでもなくゆっくり。 モップを1回動かすたびに立ち止まり、窓の外を眺めたり、壁のポスターの傾きを直してみたり。おまけに近くで働いていると、井戸端会議もひどいのです。
「そういえば田中さん、この間のドラマ見た?」
「見たわよぉ。あの俳優さん、最近老けたわよねぇ」
「やっぱり? 私もそう思ったのよ。昔はもっとシュッとしてたのにねぇ」
手が止まっている2人を見つつ、私はレジのお金を数えながら、焦りで冷や汗が出てくるのを感じていました。この2人とのパートは、この時間が一番の苦痛なんです…。
あとがき:わざと?残業になってものんびり作業する人
残業は本来「やりたくないな」と思う人も多いと思いますが、実際には残業代を目当てに職場に残りたいと思う人もいるようです。
とはいえ、巻き添えを喰らっている人にとってはいい迷惑ですし、時間内に終わるはずの仕事を引き延ばして残業代を得るのは、よいこととは言えませんよね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










