🔴【第1話から読む】半年で本性が見え隠れする「パートさん」→いつも同じシフトにいる“厄介な2人”|残業代がほしい同僚
おばさん達の不要な残業に巻き込まれてイライラしているはるこには、1人の味方・東村山さんがいました。彼女も一緒に怒ってくれていますが、果たしてその効果は…?
心強い味方も、いるにはいるけれど…
私は何度か、残業について2人に「仕事が長引いて大変ではないのか」と聞いたことがありました。すると2人はこう言うのです。
田中さん「家族もいないし、早く帰ってもテレビ見るだけ。だったらここで皆とお喋りしながら仕事してた方が楽しいじゃない」
山田さん「それにほら、少しでもお給料が増えた方が嬉しいしねぇ」
悪気なく、あっけらかんと言うのです。 「残業代が欲しい」と。
私は残業代なんていりません。 数百円、数千円のお金よりも、家族と過ごす時間や、自分の体を休める時間が欲しいです。 社会人としても、自分の契約時間内にできるだけ多くの仕事を終わらせるのが当たり前のように思います。
そんな私の苦悩を、痛いほど理解してくれている人が1人だけいました。 ショートパートの東村山さんです。 彼女は短髪がよく似合う、テキパキとしたサバサバ系の女性です。ランチタイムのピーク時など、彼女の動きは神業のように無駄がありません。ある日の休憩室で、東村山さんが怒りを露わにしていました。
「はるこさん、あの2人の様子見てよく我慢してますね。私だったらブチ切れてますよ」
東村山さんはまかないとして淹れたコーヒーをテーブルにドン、と置きました。
第三者の目があっても、おばさん達は止まらない
「あの2人の遅さ、絶対わざとですよね?さっきだって、レシートのロール交換にまさかの5分かけてましたよ。あんなの10秒でしょ」
「……やっぱり、そう思いますよね」
「思いますよ! しかも、あの仕事の手際で、私たちと同じ時給だなんて。正直、気に入らないです」
東村山さんの言葉は、私の心の声を代弁してくれているようでした。彼女はショートパートなので、時間が来ればサッと帰ることができます。 ですが、仕事に対するプライドが高い彼女にとって、ダラダラと仕事をして給料を貰っている2人はいら立つ存在だったようです。
しかも厄介なことに、田中さんも山田さんも、本気を出せば仕事ができる人。 忙しいランチタイムの時などは、驚くほどの手際でオーダーをさばいています。能力がないわけではないのにわざと発揮しない。 それが、東村山さんには余計に我慢ならなかったのでしょう。
「私が店長に言います。このままじゃ店の士気に関わります」
東村山さんの目は本気でした。
そして数日後。事態は少しだけ動きました。 東村山さんが「山田さん・田中さんのお喋りがうるさい。集中できない」と店長に直訴したのです。 「残業稼ぎ」という点には触れず、あくまで「業務中の私語」という観点からの報告でした。 店長は、すぐに田中さんと山田さんを呼び出し、注意を与えました。
「お客様からも見えていますから、業務中の私語は慎んでください」
さらに店長は、2人が物理的に離れるように配置転換を行いました。田中さんをホール専属に、山田さんをキッチン専属に固定したのです。 これでお喋りはできなくなるはず。 私は心の中で東村山さんに拍手を送りました。
しかし――現実はそう甘くはありませんでした。 確かに、私語はなくなりましたが、残業代稼ぎはなくならなかったのです。田中さんはホールで、一枚のメニュー表を10分かけて拭き上げます。 山田さんはキッチンで、野菜のカットをのんびり。お喋りができない分、それぞれの作業にかける時間がさらに長くなったようにも見えます。
結果として、作業効率は以前よりも落ちてしまいました。 当然、私の帰宅時間は遅いまま。むしろ、無言の重苦しい空気が店内に漂う分、精神的な疲労は増してしまいました…。
「……計算通りにはいきませんでしたか」
東村山さんが悔しそうに呟いたのを覚えています。 2人は、ただのお喋り好きなおばさんではなかったのです。 確固たる意志を持って「楽をして稼ぐ」ことを追求する、ある種のプロにすら見えてきました―――。
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あとがき:悪い意味で「たくましい」パートおばさんたち
東村山さんがあまりにも頼り甲斐ありすぎて「こんな同僚がほしい」って思うような展開でした。
しかし、それでも止まることはない残業代おばさんたち。ここまできたらおばさん達をもう止められないのでしょうか?
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










