32歳独身の由紀は、実家で平穏に暮らしていた。しかしある日、銀行員でエリートの弟・義人に700万円もの借金があることが発覚。過去にも両親が肩代わりしていた事実を知り、由紀は不穏な予感に包まれる。
自慢の弟と仲の良い義妹
「ねえ、由紀。ちょっといいかしら」
母がそう言って私の部屋に入ってきたとき、私は呑気に雑誌をめくっていました。 私は由紀、32歳。まだ独身で、今は両親と実家で暮らしています。仕事は事務職で、派手さはないけれど平穏な毎日を送っていました。
私の自慢……というほどではないけれど、自慢の種は3歳下の弟・義人でした。義人は真面目で、地元の銀行に勤めるエリート。29歳で、同じ年のまいこさんと結婚して、今は隣の市でかわいい盛りの子ども2人と暮らしています。
まいこさんは看護師で、美人で愛想もいい。たまに実家に顔を出してくれるときは、私とも美容の話で盛り上がるような、そんな「仲の良い義姉妹」だと思っていました。
弟に700万の借金?
「義人のことで、お父さんと話があるの。下に来てくれる?」
母の顔は青ざめていました。リビングへ降りると、父が厳しい表情で腕を組んで座っています。
「由紀、驚かずに聞いてくれ。……義人に、借金があることがわかった」
「えっ、借金? 車のローンなら、お父さんたちが肩代わりしたんじゃ……」
「そうじゃない。消費者金融やカードローン。700万円もあるらしい」
頭を殴られたような衝撃でした。700万? 銀行員の弟が?
「どうして……?だって、住宅ローンも組んでるし、車だってお父さんたちが買ったじゃない。生活に困るはずがないよ」
「俺たちもそう思っていた。でも、事実らしいんだよ」
実は両親、以前にも弟夫婦に300万円貸しているんです。結婚式のブライダルローンと、まいこさんの奨学金を一括返済するためという名目で。「もうこれっきり」と言って渡したお金だったのに。
モヤモヤした一晩
私はその夜、一睡もできませんでした。真面目な義人が、ギャンブルにでも手を出した?
それとも、投資の失敗? あんなに幸せそうに見えた家庭の裏側に、真っ黒な穴が空いている。その事実に、私の心はざわついて仕方がありませんでした。
「お父さん、お母さん。今回は絶対に甘やかしちゃダメだよ」
翌朝、私は両親に告げました。でも、両親の顔には「かわいい息子を助けたい」という甘さが滲んでいました。これが、地獄への入り口だとも知らずに―――。
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あとがき:「真面目な弟」という幻想
物語の導入として、一見幸せそうな家族に亀裂が入る瞬間を描きました。銀行員という堅い職業の弟が抱えた「700万」という具体的な数字は、読者に現実的な恐怖を与えます。
これまで弟を甘やかしてきた様子がわかる両親と、冷静になろうとする姉の対比が印象的ですね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










