🔴【第1話から読む】離婚後、父親らしくなった元夫と優しすぎる恋人…2人の男の間で揺れる本音
直人への“物足りなさ”と、健吾との過去の思い出の間でゆれる真由。だが、親友・美咲の言葉に背中を押され、真由は自分が求める未来へと手を伸ばし始め…。
台風の夜、元夫からの謝罪
その日は、健吾が家に泊まることになった。台風で電車が止まり、帰れなくなったからだ。
陽向は「パパとねる!」と大はしゃぎで、布団にもぐり込み、あっという間に眠ってしまった。
リビングに戻ると、静けさが広がる。久しぶりに、健吾と2人きりだった。
「……なんか、変な感じだな」
健吾が苦笑する。
「……だね」
お互い、少し距離を保ったままソファーに座る。テレビもつけず、ただ雨音だけがひびいている。
「この家、やっぱ落ち着くな」
健吾がぽつりと言った。
「……前はさ、俺、ちゃんと見てなかったんだよな」
私はだまって聞く。
「真由がどれだけがんばってたかも…陽向のことも…」
しばらく沈黙が続いたあと、健吾は深く息を吐いた。
「……ごめん」
その一言は、思っていたよりもおもかった。
「…不倫のことも、あのころの態度も。俺、本当に最低だった」
いつも不機嫌だった。私の不安を笑って軽んじた。陽向が熱を出しても、飲み会を優先した夜──。
全部、全部、胸の奥に残っている。でも…
「もう、過ぎたことだから」
自分でもおどろくほど、静かな声だった。
ゆるしたわけじゃない。忘れたわけでもない。ただ、それにしばられて生きる時間は、もうおわりにしたいと思った。
私が選んだ答え
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私は手のひらをぎゅっと握った。
(言うなら……今だ)
そう決心し、私は深く息を吸って口を開いた。
「健吾さ、私ね……」
健吾が顔を上げる。
「直人さんと、結婚しようと思うの」
言葉にした瞬間、胸が少しだけふるえた。
健吾はほんの一瞬、目を見開いた。それから、ほんの少しの間、沈黙した。雨音だけが、2人の間を埋める。
「……そっか」
健吾はさっきと同じように、目を伏せた。ひと呼吸置いて、彼は私に視線を向けて言った。
「よかったな…」
その声はおだやかだった。でも、その言葉の奥にある、ほんの少しの切なさに、胸がきゅっと締め付けられた。
(もしも…あの時、不倫なんてなかったら…)
──そんな“もしも”が、一瞬よぎる。
でも、私は健吾の目をまっすぐ見た。もう迷いはない。あの日、美咲に言われた言葉が背中を押してくれた。
──安心してるってことなんじゃないの?
私が選びたい未来はそっちだ。
「陽向の父親であることは、これからも変わらないよ」
そう伝えると、健吾は小さく笑った。
「あたりまえだろ?」
あたらしい家族のかたち
それから数か月後──。
「真由さんと陽向と家族になりたい」
直人から、改まった顔で言われた。
派手な演出はなかった。でも、その言葉はまっすぐだった。
「よろしくお願いします」
私は笑顔でうなずいた。このことを陽向にも話した。
「なおとくんといっしょにすむの?」
と、首をかしげながらも、最後は笑っていた。どうやら心配はいらないようだ。
あたらしい生活は、おどろくほどおだやかだ。
朝、同じ時間に起きて、同じ食卓を囲む。小さなことで言い合いになっても、ちゃんと話し合える。どなり声も、不安で眠れなくなる夜もない。
ふとした瞬間、あの夜の健吾の表情を思い出すことがある。
切なげで、少し寂しそうで、胸が痛む──。
でも、それは後悔じゃない。あれは、私が一つの人生を閉じた証。そして、あたらしい人生を選んだ証。
陽向がリビングで笑っている。直人が、そのとなりで静かに見守っている。
その光景を見ながら、私は思う。
(もう、ゆれていない)
選んだのは、刺激的な生活じゃない。たしかに“幸せ”だと、胸を張って言える未来だ。
🔴【1話から読む】離婚後、父親らしくなった元夫と優しすぎる恋人…2人の男の間で揺れる本音
あとがき:“選ぶ”という強さ
人生には、正解が一つに決まらない選択があります。たのしかった過去も、傷ついた記憶も、どちらも本物。その上で、「これから」を決めるのは、勇気のいることです。
真由が選んだのは、胸が高なる刺激ではなく、毎日を安心して過ごせる時間でした。
ゆれた時間があったからこそ、彼女は胸を張って言えるのでしょう。“これが私のしあわせだ”と。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










