🔴【第1話から読む】姉の子がキッチンで「ビリッ…」→新築に招いて露わになる“しつけの常識”の違い|姉の子育てがおかしい
子どもが生まれて以降、姉・香織に対して違和感を抱くようになった結衣。第3話では、香織視点でその背景にある嫉妬や劣等感が描かれた。結衣は関係修復を願い、母や義兄に相談したうえで香織に直接気持ちを伝えるが、その思いはすれ違い、関係はさらに悪化していく。
消えない違和感と、周囲の言葉
蓮くんが家に来た日のことが、どうしても頭から離れなかった。
破れたキッチンマット。蒼を突き飛ばしたこと。
そして──それを軽く流した姉、香織の態度。
(私が気にしすぎなのかな……?)
そう思おうとしても、胸の奥のモヤモヤは消えなかった。
数日後。私は母に電話をかけていた。
「どうしたの、結衣?」
母の声はいつも通り穏やかだった。
私は迷いながらも、あの日の出来事を話した。
蓮くんのこと、蒼のこと、香織の反応、全部。
話し終えると、母は少し考えるように黙った。そして、静かに言った。
「もしかしたらね」
「……うん」
「香織は、結衣のこと羨ましいのかもしれない」
「え?」
思わず聞き返す。
「蒼くんのことも」
母は続けた。
「親戚の集まりでも、蒼くんよく褒められてたでしょ」
「……」
思い出す、あの正月の空気。
「それが、香織にはつらいのかもしれない」
母の声は優しかった。
でも私は、うまく理解できなかった。
「でも……」
私は言う。
「だからって、蒼を突き飛ばしたことまで何も言わないのは……」
母は小さくため息をついた。
「子育てってね」
「……?」
「余裕がなくなると、視野が狭くなることもあるのよ」
私は黙ってしまった。
その言葉が、胸に引っかかった。
見えてきた姉の姿、それでも拭えない違和感
それから数日後。私は買い物の帰りに声をかけられた。
「結衣ちゃん?」
振り向くと、そこにいたのは姉の夫、拓也さんだった。
「あ、こんにちは」
「久しぶりだね」
穏やかな笑顔だった。蒼を見て、にこっとする。
「蒼くん、大きくなったね」
少し立ち話をしてから、私は迷った。でも、せっかくの機会だと思い、思い切って聞いてみた。
「拓也さん」
「うん?」
「ちょっと相談してもいいですか?」
カフェに入り、私は香織のことを話した。
最近の態度、子育てのこと、蓮くんのこと、全部。
拓也さんは、途中で口を挟むことなく聞いていた。
そして、苦笑いしながら言った。
「うーん……」
「……」
「香織ね」
少し困ったように頭をかく。
「子育てのことになると、ちょっと視野が狭くなるんだよね」
「視野が……」
「うん」
拓也さんは頷いた。
「蓮のことになると、どうしてもムキになっちゃうというか」
私は小さく息をついた。
「やっぱり……」
「悪いやつじゃないんだけどね」
拓也さんは言った。
「余裕がないときは、周りが見えなくなるタイプなんだ」
母も似たようなことを言っていた。
(でも……)
それだけで片付けていいことなんだろうか。
伝えた本音、そして決裂
その日の夜。私はスマホを手に取った。
少し迷ってから、香織に電話をかける。
数回のコールのあと、香織が出た。
「なに?」
少し不機嫌そうな声だった。
「突然ごめん」
私は言った。
「この前のこと、ちょっと話したくて」
「この前?」
「うちに来たときのこと」
少し沈黙が流れる。
私はゆっくり話し始めた。
「私も、蓮くんにいきなり注意しちゃって」
「……」
「香織に配慮が足りなかったかもしれない」
正直な気持ちだった。
「そこは、ごめん」
そう言ったあと、続ける。
「でも」
「……なに?」
「蒼を突き飛ばしたこととか」
私は言葉を選びながら言った。
「マットを壊したこととか」
「……」
「そのあと、ちゃんと謝ってほしかったなって思って」
電話の向こうが、静かになる。
そして、香織が言った。
「は?」
その声は、明らかに怒っていた。
「なにそれ」
「え?」
「結局、私の育て方が悪いって言いたいわけ?」
「違う、そうじゃなくて──」
「結衣さ」
香織の声が鋭くなる。
「いつもそうだよね」
「……?」
「正しいこと言ってるつもりなんだろうけど」
私は言葉を失った。
「蒼はいい子」
香織が続ける。
「結衣はいいお母さん」
皮肉っぽい声だった。
「そう思ってるんでしょ?」
「そんなこと──」
「もういい」
香織は言い切った。
「そうやって人の子どもに口出しするくらいなら」
「……」
「もう会わなくていいよ」
プツッ。
通話が切れた。
私はスマホを見つめたまま動けなかった。
(なんで……)
ただ、話し合いたかっただけなのに。分かり合えると思っていたのに──
胸の奥が、どっと疲れる。蒼が横から声をかけてきた。
「おかあさん?」
私は慌てて笑顔を作る。
「うん、大丈夫」
でも、心の中では、はっきり思っていた。
(もう……)
香織との関係に、私はすっかり疲れてしまっていた。
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あとがき:すれ違いの先にあったもの
歩み寄ろうとした言葉が、かえって関係を壊してしまうことがあります。結衣は責めるつもりではなく、理解し合いたい一心で気持ちを伝えました。しかし、その言葉は香織にとって“否定”として届いてしまいました。価値観や状況の違いがある中で、同じ言葉でも受け取り方は大きく変わってしまう──そんな現実が浮き彫りになった回です。次回、結衣の決断が描かれます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










