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毎月家計から捻出した数千円で、夫・祥太がついに宝くじ200万円を当選させる。歓喜する妻・汐里だが、祥太は「俺の直感と執念の勝利だ」と自分一人の手柄のようにふるまいはじめて…。
夫の宝くじが当選!家族で大喜び!
「ねえ、汐里!見て、これ!当たった、当たったよ!」
平日の夜、夕食の片付けをしていた私の背中に、リビングに飛び込んできた夫・祥太の怒鳴り声が突き刺さりました。振り向くと、彼の顔は見たこともないほど上気し、額にはうっすらと汗まで浮かんでいます。差し出されたスマートフォンの画面。そこには、宝くじ公式サイトのマイページが表示されていました。
「えっ……嘘、200万!?」
思わず手に持っていた布巾を落としそうになりました。心臓がドクンと大きく跳ね上がります。32歳、共働きながら絶賛子育て中の私たちにとって、200万円という大金は、あまりにも唐突で、あまりにも衝撃的な数字でした。
「パパ、どうしたのー?」
「わーい!すごーい!」
4歳のりつかと2歳のののかが、パパの異様な興奮に当てられて、意味もわからずリビングを走り回りはしゃいでいます。
宝くじ資金の出どころ
「すごいじゃない、祥太!信じられない、本当に当たる人っているのね」
私は手放しで喜びました。脳裏には、古くなってきた家電の買い替えや、子どもたちの習い事の月謝、あるいは少し豪華な家族旅行など、バラ色の使い道が瞬時に駆けめぐります。しかし、その高揚感は数分も持ちませんでした。喜びの波が引いた後、砂浜に残されたゴミのように、ある「現実」が頭をもたげ始めたのです。
祥太は結婚してからずっと、毎週欠かさずロトやナンバーズを自動購入していました。新婚当初、私が家計簿をつけていた時にその引き落としを見つけ、「これ、お小遣いからやってるの?」と聞いたことがあります。その時、彼はこう答えました。
「いや、これは『家計の夢』だから。月数千円だし、生活費から出させてよ。当たったら家族全員で分ければいいんだからさ」
「もったいないから、もうやめたら? その分を貯金に回したほうが確実だよ」
「いや、継続は力なりだって。夢を買わなくなったら、人生味気ないだろ?」
宝くじの使い道に暗雲が立ち込める
結局、私は祥太の押しに負け、うやむやのまま家計からの支出を許してしまいました。それがまさか、数年の時を経て、こんな形で実を結ぶなんて。
「いやあ、やっぱり俺の直感は間違ってなかったんだ。ずっと欲しかった最新のスペックのPCも買えるし、キャンプ道具もあのメーカーのものに一新したいな。あと、ゴルフのドライバーも新調して…」
祥太の口から溢れ出るのは、すべて「自分」を主語にした願望ばかりでした。私は少しだけ、背中に冷や水を浴びせられたような気分になりました。
「ちょっと待って。家計から出していたお金で当たったんだよね? 毎月、食費や光熱費と同じ口座から引き落とされていた分だよ」
「え? まあ、そうだけど……。でもさ、数字を選んで、継続して買い続けたのは俺だろ? 執念の勝利っていうかさ。俺が買ってなきゃ、この200万は存在しなかったんだから、俺の手柄でしょ?」
その瞬間、部屋の湿度が数パーセント上がったかのように、空気が重くよどみました。宝くじという、本来なら手放しで喜ぶべき幸運が、私たちの足元に潜んでいた価値観のズレを、容赦なくあぶり出そうとしていたのです。
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あとがき:心のシャッターが下りる音
「家計の夢」と言って生活費から出し合っていたはずなのに、当たった瞬間に「俺の金」と言わんばかりの態度。これ、世の妻たちが一番モヤッとする瞬間ではないでしょうか。
200万という金額は、人生を変えるほどではないけれど、本性を出すには十分すぎる額です。無邪気にはしゃぐ夫の横で、冷や水を浴びせられたような汐里の孤独な怒りに、思わず拳を握りたくなります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
イラスト:糸野内たおる










