30歳の真央は、1歳双子の育児に追われる過酷な日々を送っている。夫の智裕は優しいが、育児に関しては完全な「指示待ち人間」。周囲のサポートも得られず、孤独と疲弊の中で真央の心は限界を迎えようとしていた。
双子育児の現実
「ママ、ママ……ッ!」
朝の6時。寝室に響く、1歳児特有の高音の泣き声で私の意識は強制的に引き戻されます。 右側に長男のりく、左側に長女のそら。
双子育児。その言葉の響きは、妊娠中こそ「かわいさも2倍だね」なんて周囲に言われて微笑ましく思えたけれど、現実はそんな甘いものじゃありませんでした。
「……おはよう、二人とも。もうちょっとだけ、寝かせてほしかったな……」
独り言をこぼしながら、重い体を引きずって起き上がります。 私の名前は真央、30歳。夫の智裕と、1歳になったばかりの双子との4人暮らしです。
夫にもモヤモヤしたものを感じる
ここ数か月、二人は体力がつき、自我が爆発しました。 一人が泣けば、もう一人も呼応するように泣き叫ぶ。 私が抱っこできるのは一人だけ。
選ばれなかった方は、まるで世界の終わりかのように地面に突っ伏して泣き喚きます。 その声を聞きながら、私はいつも「ごめんね」と心の中で謝り、同時に「もう勘弁して」と耳を塞ぎたくなる衝動を必死に抑えていました。
「真央、おむつ替えたほうがいいかな?」
リビングから、寝癖だらけの智裕がのんびりと声をかけてきます。
「……見て分からない? パンパンだよ。替えてあげて」
「あ、そっか。やり方、これで合ってるっけ? テープの向きとか」
智裕は31歳。優しくて、ギャンブルもしないし、浮気もしない。 けれど、育児に関しては驚くほど「指示待ち人間」なのです。
指示がないと動けない夫
「智裕、そこにあるおしり拭きで拭いて、ゴミは専用の袋に入れて……。あと、着替えも出して。今日は寒いから長袖の……」
「えーっと、長袖はどこ? いつもの引き出し?」
「そう、右から二番目」
朝の忙しい時間、自分の身支度どころか顔を洗う暇もありません。 私はキッチンに立ち、子どもたちの離乳食を準備しながら、智裕に一から十まで指示を出します。
ふと、窓の外を見ました。 実家は新幹線で3時間の距離。 市のサポートセンターにも、民間の家事代行にも、片っ端から登録はしています。 でも、返ってくる返事はいつも同じ。
『申し訳ありません、現在スタッフが不足しておりまして……』
『双子ちゃんのお宅への派遣は、安全面から二人体制が推奨されますが、調整がつきません』
社会からも、親からも、誰からも手が差し伸べられない。 私の毎日は、この狭いマンションの中で、延々と続く「指示」と「作業」と「泣き声」だけで構成されていました。
「ねえ真央、朝ごはん何? 俺も手伝おうか?」
智裕のその言葉に、私は精一杯の皮肉を飲み込みます。 「手伝う」じゃない。あなたの子どもでもあるのに。 でも、それを口にする気力すら、もう残っていませんでした。
🔴【続きを読む】ご飯を食べる暇もない!夫は子どもたちと遊ぶだけ、家事や片付けはすべて指示待ちで...
あとがき:「独り」で育てる孤独と、消えない違和感
「双子ならかわいさも2倍」という言葉が、どれほど残酷に響くか。第1話では、母親が直面する物理的・精神的な「詰み」の状態をリアルに描きました。特に夫の「手伝おうか?」という言葉に宿る、当事者意識の欠如。殺意に近い落胆を覚える真央の姿に、胸が締め付けられる方も多いはずです。社会からも切り離され、狭い家の中で「司令塔」を強いられる孤独。この静かな絶望が、のちの爆発へのカウントダウンとなります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










