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「いやあ、やっぱり俺の直感は間違ってなかったんだ。ずっと欲しかった最新のスペックのPCも買えるし、キャンプ道具もあのメーカーのものに一新したいな。あと、ゴルフのドライバーも新調して…」
祥太の口から溢れ出るのは、すべて「自分」を主語にした願望ばかりでした。私は少しだけ、背中に冷や水を浴びせられたような気分になりました。
「ちょっと待って。家計から出していたお金で当たったんだよね? 毎月、食費や光熱費と同じ口座から引き落とされていた分だよ」
「え? まあ、そうだけど……。でもさ、数字を選んで、継続して買い続けたのは俺だろ? 執念の勝利っていうかさ。俺が買ってなきゃ、この200万は存在しなかったんだから、俺の手柄でしょ?」
その瞬間、部屋の湿度が数パーセント上がったかのように、空気が重くよどみました。宝くじという、本来なら手放しで喜ぶべき幸運が、私たちの足元に潜んでいた価値観のズレを、容赦なくあぶり出そうとしていたのです。 ※1
宝くじの当選で夫の本性が…
数年間、宝くじの購入費用は家計から捻出していました。それなのに、当選した途端、自分の権利と欲しいものを主張し始めた祥太。夫婦の価値観のズレが、あぶりだされてしまったのです。
このあと、汐里は冷静に話し合いをするために、現在の家計の状況を書きだします。200万円の内、100万円は子どもの教育資金に、50万円は家電の買い替え、そして残りの50万円は祥太が自由に遣っていいお金、と最大限に譲歩します。
夫の取り分は50万円!それなのに…
我ながら、かなり祥太の功績に配慮したつもりでした。一般的なサラリーマンが一度に自由にできるお金として、50万円は破格です。彼の欲しがっていたPCもキャンプ道具も、これなら十分賄えるはず。しかし、祥太の反応は私の予想を裏切るものでした。
「……だったらさ、今まで数年間、家計から出した購入代金の合計を計算して、その分だけを家計に戻すよ。で、残りは全部俺がもらっていいじゃん。原資は戻すんだから文句ないでしょ?」
一瞬、何を言われたのか理解できず、耳を疑いました。
「それ……本気で言ってるの? 外れてた間はずっと家計にリスクを負わせて、当たった時だけ『自分の手柄』として利益を総取りするってこと? 当たらなければ、その購入代金は永遠に家計からの垂れ流しだったのに」
「結果として当たったんだからいいじゃん。俺の選んだ数字が正解だった。俺がいなければ当たらなかったんだから、俺に決めさせてほしい」
祥太の言葉には、家族としての連帯感よりも、個人としての損得勘定が透けて見えました。私は悲しさと呆れが混ざった溜息をつきました。 ※2
祥太の言い分、呆れてしまいますね…。当たったのは結果論です。宝くじを買うために、家計の管理をしていた汐里の労力は、なかったことになっています。これでは、あまりにも不平等で、夫婦として対等に扱われていないようで悲しくなります。
さらにこのあと、祥太は信じられないことを言いだします。汐里の表情を読み取り、これ以上揉めるのは面倒だと思ったのか「譲ってやる」と口にしたのです。
態度まで変わってしまった夫
祥太はその後、自分の取り分である50万円で、真っ先に最新のゴルフセットをフルパッケージで買いそろえました。
「明日、部長たちと回ってくるわ! 道具がいいとスコアも上がりそうだしさ」
そう言って、ピカピカのバッグを担いで意気揚々と出かけていく彼の後ろ姿を見送りながら、私は一人、新しく届いた冷蔵庫の前に立ち尽くしていました。
高機能な冷蔵庫、静かな洗濯機。家の中は便利になったはずなのに、私の心はどんどん削られ、貧しくなっていく。自分だけが、夫の幸運を素直に喜べない「器の狭い妻」に成り下がってしまったような孤独感に苛まれていました。
お金は確かにある。けれど、夫婦の絆という、目に見えない資産が音を立てて崩れていくのが分かりました。 ※3
宝くじが当たったのは、ほぼ運です。それなのに、家庭での地位も上がったかのように振る舞われるのは、納得できませんね。
本来であれば、宝くじの当選は家族で喜び合うものですね。ですが、夫が独占欲をあらわにしたせいで、大切な家族の絆が崩れてしまいました。夫婦でお金の価値観がズレるのは、とてもおそろしいことですね…。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
イラスト:糸野内たおる










