優子と浩介は、優太にとって誇れる親になろうと様々な努力を重ねました。果たしてそれは、児童相談所に無事伝わるのでしょうか?
児童相談所へ、決意表明
一週間後、私たちは再び児童相談所を訪れました。
迎えてくれたのは、あの日と同じ、厳しい目をした職員の女性でした。
私たちは、二人で話し合って決めた「更生案」を彼女に提示しました。
「夫婦カウンセリングに通います。お互いのコミュニケーションの癖を見直すためです」
「私はアンガーマネジメントの講座を受けます。怒りの感情を、暴力や暴言ではない形で発散する方法を学びたいんです」
「それから、浩介は今の職場を辞めて、転職します。ストレスの原因を断つために」
職員の方は、私たちの話を静かに聞いていました。
しかし、その表情が和らぐことはありません。
「……その結論に行き着くのが、あまりに遅すぎます」
彼女の言葉は冷徹でした。
「一歳の時に警察沙汰になった時、なぜ改善しようと思わなかったのですか? あの時、あなたたちは『仲直りしたからいい』と問題を先送りにした。そのツケが、今の優太くんの涙なんですよ」
ぐうの音も出ませんでした。
「反省の言葉だけなら、誰でも言えます。大切なのは、それを継続できるかどうかです」
彼女は一呼吸置き、手元の資料に目を落としました。
「……ただ、この1週間、私たちは優太くんから定期的にお話を聞いてきました」
私たちの心臓が跳ね上がりました。
優太は、私たちのことをなんて言っているのだろう。「怖い」「帰りたくない」と言っていたら……。
「優太くんはね、『パパとママ、大嫌い』とは一言も言いませんでした。それどころか、『パパはトラックを運転しててかっこいいんだよ』『ママのご飯はおいしいんだよ』と、私たちに自慢するんです。……『喧嘩するのは嫌だけど、パパもママも大好きだから、早くお家に帰りたい』。そう言って、毎日泣いています」
帰ってきた三人の日常
私は堪えきれず、声を上げて泣き出しました。
浩介も、真っ赤な目で天井を仰いでいました。
あんなに怖い思いをさせたのに。あんなに傷つけたのに。
優太は、まだ私たちを「いいパパとママ」だと信じて待っていてくれている。
「お子さんのその気持ちを、絶対に踏みにじらないでください。……今回は、あなたたちの決意を信じて、一時保護を解除します。ただし、今後定期的な家庭訪問と、各機関への通報義務が伴うことを忘れないでください。次に同じことがあれば、二度と優太くんには会えないと思ってください」
「ありがとうございます……ありがとうございます!」
私たちは何度も頭を下げました。
その日の夕方、職員の方に送り届けられ優太が家に帰ってきました。
玄関で私たちの姿を見つけた瞬間、優太は短い足を必死に動かして走ってきました。
「パパ! ママ! ただいま!」
浩介が優太を抱き上げ、強く、強く抱きしめました。
「ごめんな、優太。本当にな。……おかえり」
優太の小さな体温が、冷え切っていた家の中に、再び明かりを灯してくれました。
けれど、これはゴールではありません。
本当の意味で「親」になるための、長い長い道のりの始まりだったのです。
🔴【続きを読む】大人になっても、変わることができる。息子のために手に入れた新生活
あとがき:親として認められた二人
職員さんの言葉は厳しいですが、それも子どもをもつことという責任感を改めて痛感させてくれましたね。親子三人で、新たな生活の再スタートです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










