思い描いたのは「菜の花畑」
我が家の子供達は、女の子が三人。全員「菜」が付きます。「菜」は菜の花の「菜」。そして、三人にぴったりな意味を持つ、「晏」「栞」「晶」の字。
子供達の名前を付ける度、私達夫婦は、「晏」「栞」「晶」それぞれの字から連想される「菜の花畑」の風景を思い描きました。
長女の名前は「晏菜」
「晏」には、「穏やか」「空が晴れる」「安らか」「静か」「鮮やか」といった意味があります。かつて、漢文の授業でこの字を見たような気がしましたが、あまりこの字を使った名前を見たことがありませんでした。
調べてみると、意味もなかなか良いですし、どしゃ降りの日に産まれた長女に、「空が晴れる」という意味のこの字がぴったりだと思い、この名前を付けました。
「晏菜」と名付けるにあたって
初めての妊娠。お腹の子は女の子。名付けの本を参考に、画数にもこだわり、「栞菜」という名前を最初に候補に挙げました。他にも考える中、「晏」という字を見つけました。
「字の意味もいいし、菜の字も画数がいいから晏菜ってどうだろう?でも「栞菜」も捨てがたい。生まれてきた子供の顔を見て決めよう」
ところが顔を見ても判断が出来ません。ただ、晏菜が生まれた日はどしゃ降りでした。「晏」という字には「空が晴れる」という意味があります。双方の両親に「晏菜」と「栞菜」、どちらが良いか意見を聞くと、全員の意見が「晏菜」で一致。
主人も私も、「晏菜」という名前に一枚の絵を思い描きました。「菜」は「菜の花」。一面の菜の花畑。先ほどまで降っていた雨がやみ、雲の隙間から日の光が射し、青空も見えている…そんな絵です。
次女の名前は「栞菜」
「栞」には、「道しるべ」「道案内」「導く」という意味があります。前述した通りこの名前は、長女を妊娠した時に、一番最初に候補に挙げた名前です。
しかし、長女には「晏菜」という名前を付けたので、次女がまだお腹の中にいる時にまた女の子かもしれないと分かった時、「今度は『栞菜』と付けよう!」と決めていました。
生まれてきた子はダウン症
栞菜はまさかのダウン症でした。打ちひしがれている私達に、「栞」の字に「導く」という意味があることは、慰めになりました。「きっとこの子は、私達をどこかに導いてくれる。きっとそこは、私達が今まで知らなかった世界に違いない!」
そして私達夫婦は、長女を「晏菜」と名付けた時に思い描いた、想像の菜の花畑の絵に、片腕をまっすぐ伸ばしてどこかを指さし、指している方をじっと見つめるような妖精を付け足しました。一面の菜の花畑で道に迷う私達を、行くべき方向へと導いてくれる妖精です。
私達がダウン症の栞菜を育てるにあたり、進むべき道が分からなくなっても、きっと栞菜自身が私達の道しるべになってくれるだろう。今のところ栞菜のことで道に迷ったと思ったことは一度もありませんが、栞菜は生まれてから今日まで、私達を様々な「発見」とたくさんの「出会い」へと導いてくれています。
三女の名前は「晶菜」
「晶」という字に使われている「日」は、「星」を表し、「晶」は「三つの星が集まって光り輝く」という意味があります。
三女の名付けが一番悩んだのですが、この字の意味を知り、さらに「晏菜」「栞菜」「晶菜」という名前を並べて書いた時に受けた印象に、「これだ!」と思い、この名前を付けました。
「晶菜」と名付けるにあたって
お腹の中の三人目も女の子。「晏菜」「栞菜」ときているので、やはり「○んな」でいきたい。考えつく「○んな」は「はんな」。「あんな」「かんな」「はんな」では、なんだかちょっとふざけているように感じなくもない。しかも、「はん」と読める漢字で画数にもこだわると、あてはまる字がありませんでした。
名付けの本を何度見ても、納得出来る名前に巡り会えません。でももう、生まれてくるまでに時間がなく、ある夜、私達夫婦は強硬手段に出ました。「晏」も「栞」も十画。でも、十二画の字の方が良いようで、名付けの本の十二画のページの全ての漢字に「菜」を付けて、そこから良さそうな名前を選ぶことにしました。
その中にあった「晶」という字。本をただ見ていた時はピンと来なかった字でも、紙に「晶菜」と書いてみると悪くないですし、意味は「光」「きらきらと輝く」、そして「三つの星が集まって光り輝く」!
三人姉妹が仲良く寄り添って、光り輝く人生を送ってくれたらいいな”と思い、この名前を候補に挙げました。それでも、本当にこの名前で良いのか、少し迷いがありました。
三つの名前を並べて書いてみる
三女の名前は本当にこれでいいのだろうか。そう思いながら、何気なく「晏菜」「栞菜」「晶菜」と、縦に三人の名前を並べて書いてみました。
すると、同じ「日」が使われている『晏菜』と『晶菜』の雰囲気がなんとなく似ている気がして、この二つの名前が、真ん中の、全く違う雰囲気をもった「栞菜」という名前を、支えてくれている・守ってくれている、そんな風に見えました。主人も私も顔を見合わせ、「これだ!」と言いました。
三人姉妹が仲良く寄り添って、光り輝いていけますように。そして、ダウン症の栞菜を、晏菜と晶菜が、守ってくれますように。「晶菜」という名前には、そんな願いが込められています。
この名前に決まった時、毎度恒例の想像の「菜の花畑」の絵は、夜になりました。星がいっぱい出ている空ですが、その中に、ひときわ輝く三つの星が描かれている、そんな絵です。
名付けにあたり注意した5つのこと
子供達の名前を付けるにあたり、私達夫婦は、画数、意味のある名前、漢字の縁起、読みにくい漢字は避ける、知り合いと被らないという点に注意しました。
画数
画数にこだわった私達は、例えば『菜』の字に関して、くさかんむりを三画と数えるか、旧字体と考えて四画とするかで姓名判断の結果が違ってくると思い、新字体で占っている本と、旧字体で占っている本の、二冊の本を購入し、どちらの本でも極端に結果が悪くない名前を付けるようにしました。
意味のある名前
上記エピソードに書いたように、その漢字にどんな意味があるのかは、名付けの本や漢和辞典、インターネットを使って調べました。
漢字の縁起
漢字の意味を調べる際に、名前によくある字でも、「実はもともとはこんな意味のある字なのです」ということが書かれている本やサイトがあり、縁起の悪い字ではないか、成り立ちはどうか、というところにもこだわりました。
読みにくい名前は避ける
「晏菜」の「晏」の字は、あまり見かけることのない字で、その珍しさに惹かれましたが、読みにくいということはないだろうと思って付けました。「何て読むのだろう」と考えこまれてしまう名前より、分かりやすくパッと呼んでもらえる名前がいいなと思いました。
知り合いと被らない
漢字も読み方も、できるだけ親戚・友人・知人と同じにならないように心がけました。
我ながら良い名前を付けました!
三女は特に悩みましたが、三人とも良い名前が付けられたと思っています。長女の「晏」の字も大変気に入っていますし、長女に付けたいと思った名前をダウン症の次女に付けたことによって、多くの方々に親しみをもって「カンちゃん」と呼んでもらっています。
一番悩んだ三女に関しては、三女個人というより、姉妹三人への願いがこもった名前となりましたが、我が家の三姉妹にぴったりの意味をもった名前が付けられたと思っています。