配偶者控除制度ってどんなもの?
9月9日から始まった政府の税制調査会の中で、配偶者控除制度の見直しなどを含めた税制改正の議論が行われています。これについてマスコミをはじめネット上でも大きな話題になっています。
今年11月に配偶者控除制度が廃止され、その代わりに「夫婦控除」と呼ばれる制度が新たに設けられることになっています。
皆さんは、そもそも配偶者控除制度がどんな制度かご存知ですか?
配偶者がいる場合に受けることができる控除が「配偶者控除」
配偶者控除は、配偶者のいる納税者に対して税金額を配慮するための制度です。配偶者控除を受けることによって税の負担が軽くなり、多くの家庭では世帯主である夫側に適用されています。
配偶者控除の金額は決まっていて、一般的な控除対象の配偶者がいる場合に38万円、老人控除対象の配偶者の場合は48万円となっています。また、配偶者が障害者である場合は、配偶者控除にプラスして障害者控除の27万円を受けることができます。
配偶者控除を受ける時は、勤務先の年末調整時に配布される「扶養控除等(異動)申告書」に記載し申告する必要があります。
配偶者控除を受ける条件とは
配偶者のいる納税者が受けることができる配偶者控除制度ですが、実は配偶者控除を受けるのには以下の条件があります。
- 合計所得金額が38万円以下
- 対象者が婚姻の届け出のある配偶者であること
- 納税者本人と同一生計であること
- 青色申告の専従者給与等を受け取っていないこと
所得金額と言われてもいまいちピンときませんよね?
そこで説明としてよく聞かれるのが、「年収103万円以下」という言葉です。この「年収103万円」は給与の収入金額の事を指しています。
所得税は、その年度の収入から所得控除などの必要経費が差し引かれた「所得」から決まります。例えば、年収が103万円の場合、所得控除は65万円と定められているので、この金額が差し引かれた38万円が所得金額となります。
つまり、共働きをしていて配偶者の年収が103万を大きく超えると配偶者控除を受けることができないことになっています。そのため、旦那さんにかかる税金が増えないよう、奥さんの年収が103万円以内になるように調整しながら働いている家庭も多いのです。
2重の控除は不公平!?
もう一つ指摘されているのが、配偶者特別控除という制度です。配偶者特別控除とは、配偶者の年間所得が76万円未満、年収でいうと141万円までであれば控除を受けられる制度の事です。
この場合、納税者側(夫)の配偶者特別控除と配偶者側(妻)の基礎控除を受けることができるため、2重に税制の控除を受けていることになります。
そのため、配偶者の年収が65万円から141万円の場合は不公平だ、という声も少なくないのです。
配偶者控除見直しによって起こりうるママ達への影響とは
もしも配偶者控除制度が廃止され「夫婦制度」が導入された場合、ママ達にとってはどのような影響があるのでしょうか。現在働いているママ、そしてこれから働くことを考えていたママにとっては興味深いところではありますよね。
それでは、配偶者控除制度の廃止によって実際に起こりうるかもしれないママへの影響について一緒に確認してみましょう。
年収103万円を意識せずに働ける
配偶者控除制度がなくなって夫婦控除が適用されると、これまで配偶者控除を受けていた納税者(夫側)は控除がなくなります。そのため所得税が増税される形になりますが、配偶者の年収とは別個になりますので影響を受けることはありません。
一方で、配偶者(妻側)は控除の制度が無くなるので、いわゆる「103万円の壁」を気にせずに働くことができるようになります。
しかし、収入額によっては所得税を納めなければならなくなります。
妻の収入によっては夫側の所得税が安くなる!?
現状の配偶者控除制度では、配偶者の年収が103万円までの場合、配偶者の所得を算出する際に配偶者の基礎控除分である38万円が使えずに無駄になっていました。
しかし、新設される夫婦控除では配偶者の収入が少ない場合、配偶者側で使われずに余ってしまった配偶者の基礎控除分を夫側に振り替えて使うことができるようになるため、場合によっては夫側の所得が安くなり、所得税が安くなる場合もあります。
一般的には所得税や住民税が増える!?
配偶者控除の廃止により年収額などを気にしなくてよくなる一方で、私達が納める所得税や住民税の額が増えると言われています。
例えば、現在、配偶者控除によって所得税は38万円、住民税は33万円が差し引かれています。配偶者控除がなくなると、所得税や住民税の額はこれまでのそれぞれの控除額に税率をかけた額になるのです。
具体的に確認してみましょう。
所得税の税率は所得に応じて5%~45%になると言われています。配偶者控除が廃止されると、増税される所得税の額は最低でも38万円の5%~45%である19,000円~171,000円になります。また、住民税は一律10%の税率なので、33万円の10%、33,000円になります。
こうみていくと配偶者控除が廃止されることによって5万~20万強の税負担が新たにかかることになります。何かと支出が多い子育て世帯にはかなりの打撃となりますよね。
配偶者控除改正についてネット上のママ達の声
配偶者控除の見直しが始まったというニュースが取り上げられてから、連日ネット上では配偶者控除に関する様々な声が多く寄せられています。
そこで、今回は配偶者控除に関するママ達のTwitter上のつぶやきをいくつかご紹介します。皆さんはこれを見てどう思われますか?
少子化対策は後回し?
子育てしているとただでさえ出費がかさむのに、実質的な増税がこれから増えていくとなると「子供が欲しくても産めない」状況を逆に後押ししているような気がしますよね。
子育て支援をするとは公言しているものの、昨年まであった助成金などの金銭的なサポートは今年度からありません。以前から問題となっている待機児童の解消すら至っていません。
どの地域に住んでいても女性が働きやすくて子育てもしやすい環境を整えることが最優先事項ですよね。子育て支援は後手後手に回っているのでしょうか。
「女性が輝く社会」なんて大嘘!?
働く環境があったとしても、子供を産める環境、育てる環境、それぞれが万全でなかったら成り立たなくなります。結果的に困るのは子育て中の家庭、という結果になるのだけは避けてもらいたいですよね。
女性が積極的に働ける社会を作るためには、これからママになるかもしれない女性達や子育て中の女性達が安心して働けて、子供が出来ても子育てと仕事の両立ができるような環境をいち早く整備することが重要なのだと思います。
働くだけ働いて、その裏で子育てや日常生活が立ち行かなくなってしまうようなママ達がでないような対策が必要だと思います。
しわ寄せが子供に行くのでは?
皆さんが子供のころにも、両親が共働きで、一人でお留守番して食事などをしていた子もいたでしょう。しかし、その頃と比べると今は物騒な事件が多い時代です。
学童などに行ける時間帯の中でママがお仕事から帰ってこられるといいですが、何かの事情で学童が使えないこともあります。そういう時に一人で過ごさせるのは心配ですよね。
ママ達が働くことを推していくのであれば、ママ達が働きやすいように国や行政がサポートしていく対策が少なからず必要となってくる気がします。
女性が働くというところだけをクローズアップするのではなくて、女性が働くことに付随してくる様々な側面に対しても取り上げ、ケアをしていく必要があると思います。
配偶者控除制度の行方に目が離せない!
働く時間や年収にこだわらずに働くことができそうな一方で、所得税や住民税の増税による家計への負担は特に子育て世帯にとってはかなりの痛手になるかもしれません。
政府は子育て支援についても検討しているとのことで、子育て世代の経済的な負担が何かの形で緩和されたり、あるいは働いているママが安心して子育てしやすい様々な制度が出てきたりすると嬉しいですよね。
しばらくは配偶者控除制度がどのようになっていくのか動向に注目しつつ、働いているママやこれから働くことを考えているママはパパや家族と一度働き方について相談してみる必要がありそうです。