ハンディキャップを持つ子供と家族の現実
ハンデキャップのある子が生まれると、ママは「自分が悪いのではないか…」。そんな自責の念にかられてしまいがちです。時には周りから「母親のせい」と言わんばかりの言葉を投げられる事も。それは、今だけでなく、ずっと昔から社会に根付く、深く、そして暗い現実です。
筆者の母親も同じで、息子のことで親戚から陰口を叩かれたり、姑からは「母親の育て方が悪い」と言われたり、挙句の果てに娘である筆者やその妹に対してまで「躾のなってない子」という言葉をかけられたりしました。
母が部屋の隅で泣いているのを見て、幼い頃から筆者も悔しいやら悲しいやら苦しい気持ちをずっと持ち続けてきました。筆者の家庭の場合は父がとても良い理解者であったため、家族みんなで弟を支えて乗り越えていけました。
綺麗事ではなく、そんな負の連鎖を何としても食い止めたい。そう思います。今回は、子供の発達障がいに悩む全ての方に向け、心が少し楽になる、おすすめの本をご紹介したいと思います。
発達障がいは「不憫な事」では決してない
何らかのハンデキャップを持つ兄弟をもつ人のことを「きょうだい児」と言います。筆者ももちろんきょうだい児ですが、幸い弟が自閉症だったからといって誰かを恨んだりすることはなく育ってきました。逆に弟が生まれてきてくれて、家族の絆が深まったし、自分はちょっとしたことでも挫けない強い性格になったのだと思っています。
今筆者が子育てをしていて周りのママより心に余裕があるなと感じるのは、紛れもなく弟がいたから。
でもそれも全て両親のおかげ。小さい頃は弟にかかりきりでも、妹と私のフォローは忘れなかった母。学校で弟のことで差別的なことを言われたりすることもありました。でもそれは向こうが圧倒的に悪いんだから、絶対に落ち込まず堂々と生きろと言ってくれた父。
きょうだい児であるということは、決してマイナス要素ではありません。両親次第では、確実に人生のプラスになります。現に、祖父母からは筆者の兄弟は「不憫だ」と言われ続けてきましたが、筆者も妹も自分が「不憫でかわいそう」などと思ったことは一度もないからです。
もしも皆さんのお子さんが発達障がいと分かった時、その兄弟についても少し考えてもらえると嬉しく思います。
自閉症は=「自分で殻に閉じこもる」ではない
自閉症は、決して「自分で殻に閉じこもる」とか「人との関わりを持ちたがらない引きこもり」という障がいではありません。
むしろその逆で、人と関わりを持ちたがる傾向にあるんですよ!最近は、自閉症者は対人距離が短い傾向にあるという事も分かってきているとの事です。これからご紹介する自閉症作家東田さんはこの事を、著書の中で「人が好き」と表現しています。
筆者の弟もなぜが話しかけてくる時、かなり顔が近かったり無駄に声が大きかったりすることがけっこうあります。弟の場合は知的障がいも重複していて病院の判定では脳内が2歳から6歳という事なので、20歳を超えた今でも姪っ子である2歳の筆者の娘と、同じようなことを言ったり喧嘩したりしています。
本人たちの思いが綴られた本の紹介5選
現在は、自身のハンデキャップを抱えながら本を書く、あるいはハンデキャップのお子さんを抱えて作家として活躍している方もたくさんいらっしゃいます。
本人の思いが書かれた本はきょうだい児である筆者も目からウロコの内容になっています。ここからは、本人たちの思いが綴られた5冊の本について詳しくご紹介していきたいと思います。
その本の書き方と内容から海外で注目を浴びた、東田直樹さん
東田さんは普通の会話ができない重度の自閉症です。最近の作家さんで、海外で著作が取り上げられて一躍有名になりました。子供の頃から本を書き、その言葉の一つ一つは洗練されていて心にスっと溶け込んで行くようです。
この地球にすんでいる僕の仲間たちへ
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こちらは東田さんが12歳の時にお母さんと一緒に書いた作品です。自閉症者の子どもが自分の言葉で書いた本として、非常に貴重で価値があります。ハンデキャップのお子さんをもつ親御さん、健常者のお母さんにも是非読んで欲しい作品です。
DVD付きで非常にわかりやすいので、自閉症に理解のない人に配って読んでもらう本としてもおすすめします。
自閉症の僕が跳びはねる理由
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海外で大きな衝撃を与えた作品です。
筆者の弟もしょっちゅうへ手をひらひらさせながら飛び跳ねます。楽しいことがあった時、嫌なことがあった時、興奮したとき…家族から見てもなんの関連性も感じられなかったこの行為がこの本のお陰で一つに繋がり、ストンと腑に落ちるのです。
自閉症者はどうしてこんな不可解な行動をとるのだろうかと思われがちですが、この本を読めば全て解決すると思いますよ!
東田さんの独特の本の書き方はこちらのインタビューと共にNHK番組で特集しています。
面白おかしく自身を描くアスペルガー症候群の作家、ニキ・リンコさん
ニキ・リンコさんは30歳で高機能自閉症・アスペルガー症候群と診断されるまで、周りとの違いに苦しみ悩みながら生きてきた作家さんです。東田さんとは対照的に会話も普通にできるので、ずっとわからないまま受けられるサポートも受けられず普通学級で過ごして大人になりました。
この作家さんのようにグレーゾーンと呼ばれるハンデキャップを持っている人は、学校に必ず1人以上はいます。そんな周りから「変わり者」扱いを受けている子どもの本音を書いた作品は珍しいので、興味があったら是非手に取って欲しいと思います。
俺ルール!
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こちらは漫画を挿みながら、面白おかしく自身の体験談や思いを綴っている作品です。普通学級に通っていた頃の話などは、ハンデキャップがあるけれど普通学級に通わせている(もしくは通わせたい)親御さんに注目の内容になっています。
非常にテンポが良く、読みやすいので、大人になってハンデキャップがわかった人や、きょうだい児が初めて手に取る本にもおすすめです。
自閉っ子、こういう風にできてます!
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2004年11月発売。高機能自閉症やアスペルガー障害は「見えない」障害であるゆえに、理解されにくい。自閉の翻訳家と作家が「雨が当たると痛い」というような独特の身体感覚や、世界観、生活方法について語る。〈ニキ〉翻訳家...
ニキさんと同じくアスペルガー症候群の藤家寛子さんとの、花風社社長の浅見淳子さんを介しての対談形式になっている本です。藤家さんも大人になってから自分がハンデキャップ持ちだったと診断を受けた方です。
インタビューのような感じで、健常者の感じることと自閉症スペクトラムの方の感じることの相違が浮き彫りになっており、とてもわかりやすく面白いので子供でも読み切れる内容になっています。筆者は中学生の頃に読んだ本です。
日本の障がい児教育を変えた漫画家、山本おさむさん
山本おさむさんはご自身は健常者ですが、描く漫画は障がい者を取り扱ったものが多く、まだそのような作品が少なかった時代の日本に大きな衝撃をもたらした漫画家です。それぞれがたくさんの取材を重もねたことが良くわかる非常に心に迫る内容で、誰もが引き込まれます。
作品が発端となり、特別支援学級に重複障がい児のクラスが設けられるなど、日本の障がい児教育に大きな影響をもたらした漫画家さんです。
どんぐりの家(第1巻)
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言わずと知れた、山本さんの代表作です。全7巻あります。
主人公は重複障がいを抱えた子どもたち。それぞれの子ども達に濃いストーリーがあり、先生や親の対応など実際の障がい者の家族から見ても実にリアルだと言えます。障がい児と共に生きることを、真剣に考えさせてくれる漫画です。
日本漫画家協会賞優秀賞を受賞し、1997年には自身が脚本・総監督を務めアニメ映画化。社会に大きな影響を与えました。今では小中学校の図書室に置いてある所も多く、漫画なので老若男女問わず読むことができます。
ハンデキャップをまるごと受け入れる
自分の子にハンデキャップがあるとわかった時、普通学級に入れるか否かで悩む親御さんも多いかもしれません。しかしその前に、お子さんと向き合ってお子さんのハンデキャップを詳しく知って欲しいと思います。全てを受け入れられない限り、答えのない道を迷い続けることになります。
納得がいくまで本などで調べつくして、たくさん主治医に質問して、家族で話し合ってそしてまるごと受け入れた上で、その子の人生を考えてみてください。我が子の幸せとは…おのずと答えが見えてくるはずです。
ちなみに筆者の弟は特別支援学級から高等養護学校卒業後、地元の障がい者の作業所で働いています。そして実家を出てグループホームというシェアハウスのような形式で、生活上必要なサポートだけを受けながら同世代の仲間と一緒に暮らしています。休日には実家に帰ってきて両親と過ごし、また仕事に行く。生活スタイルは普通の独身青年と変わりません。
ただ、周りに理解され受け入れてもらえているか、そこがとても大きいのです。最後に、幼児にも読み聞かせできる絵本をご紹介します。
わたしのおとうと、へん……かなあ
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発売日 : 2001/09著者 : マリ=エレーヌ・ドルバル/作 オカダヨシエ/訳 スーザン・バーレイ/絵書籍 : 47ページ 21cm出版社 : 評論社
うさぎの女の子は弟のドードが大好き、でもちょっと心配…みんなと違うって友達に言われるから。
きょうだい児を主人公に、障がい児をありのまま受け入れる大切さと家族愛を伝えるフランスの作家の絵本です。可愛い動物たちに心温まるストーリーになっています。まだ障がいについて理解が難しいお子さんにおすすめです。
我が子と向き合ってみよう
ここに紹介した本以外にも、良い本はたくさんあります。テレビ番組もあります。是非図書館などで探してみてください。ハンデキャップへの理解を深めることの原点は、我が子と向き合うことです。それは、筆者も含め健常児の親にも大変重要なことですよね。
現在、発達障がいを含む、人が持つハンディキャップについての研究はどんどん進んでいます。
皆さんの理解がより深まれば幸いです。