働きたいママの不安を解消する、自治体の取り組み
就職活動といえばハローワークなどの求職者向けサービスや、求人サイトなどを想像するのではないでしょうか。しかし、どのような仕事に就きたいかはっきりと決まっていない場合や、働き方について悩んでいる段階では、いきなり職探しをするのはハードルが高いものです。
そんなママたちの悩みを解消するために、無料の就職相談を行っている自治体があります。地域によって取り組み内容は異なりますが、無料で1時間程度の相談を受けられることも。
ただ、『変えよう、ママリと』が実施した働くことに関するアンケートでは、98.3%が「自治体の就職相談を利用したことがない」と答えました。また、使ったことのない理由としては「内容がよくわからないから」が50.8%と最多でした。
ママの働きづらさ、原因は「職場の雰囲気」にあり。 『変えよう、ママリと』ユーザー調査vol.1
身近に便利な行政サービスがあっても、よく知られていないから利用されていない。この結果を受けてママリ編集部は、横浜市男女共同参画センターの「女性としごと 応援デスク」を訪問。その取り組み内容や、再就職を希望するママが抱える疑問についてアドバイスをもらいました。
働くかどうか決めていなくても相談に乗ってもらえる
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「女性としごと 応援デスク」では、キャリアコンサルタントによる50分間のカウンセリングを無料で行っています。相談は予約制で、有料での託児も利用可能なため、安心してじっくり話すことができます。再就職を希望する方だけでなく、現在働いていて転職を検討している方の相談にも乗ってもらえます。
「女性としごと 応援デスク」で相談を担当しているキャリアコンサルタントの山崎悦子(やまざきえつこ)さんによると、当日までに自分の職歴などをまとめておくと相談がスムーズだそう。職務経歴書や履歴書がなければ、簡単なメモ書きでもかまわないといいます。
相談内容は「面接に受かるコツを教えてほしい」という具体的なものから「育児だけの毎日に行き詰まり、働きたい気持ちはあるけれど、いろいろな不安があって決断できない」という悩みまでさまざま。働くことに関する悩みはママ友や家族に本音を打ち明けにくいものですが、自治体のサービスなら秘密が守られ、正直に気持ちを吐き出せる点がよいですね。
具体的にやりたい仕事が決まっていなくても大丈夫。予約のいらないカウンター相談窓口もあります。就活ナビゲーターと一緒にゲーム感覚で、自分の強みや弱み、働く目的などを見つけていきます(写真参照)。「どのような就職先が良いか」の前に「どのように働きたいか」の段階から整理することができるのです。
再就職にあたってママが抱く不安へアドバイス
今回、ママリ編集部は再就職をしたいママが抱く代表的な悩みをいくつかピックアップ。前出の山崎さんにアドバイスをいただきました。
Q. 育児に理解がある職場かどうかを判断するには、何を見れば良い?
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山崎さんによると、育児に理解がある職場を探しているなら、求人票に注目するとよいといいます。
「求人票にある企業のPRポイント欄に『主婦・子育てママ歓迎』などと書いていることは一つの判断基準です。また、求人サイトで探しているなら、そもそも主婦層をターゲットにしているサイトを利用してもよいでしょう。
もし自分で選ぶことに不安があるなら、マザーズハローワークを活用する手もあります。職員が求人票を確認し、とくにママに合うと判断した求人や、託児つきの求人を紹介してくれます」(山崎さん)
子育てをしながら、自分に合う就職先を探し出すのは大変。情報収集は一人で頑張ろうとせず、プロの力を借りましょう。
Q. 働きたいけれど、育児や家事と両立できるか不安です…
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働き始めてからの生活には不安がつきもの。とくに仕事と育児家事の両立方法は、一人では答えが出ない問題かもしれません。
山崎さんは、もっとも大切なのは、完璧にやろうとしないことだといいます。
「家にいる時間が減るということは、家事や育児に時間を割けないということ。これまでの家事のできに対するOKラインを下げてください。とくに仕事を始めてしばらくの間は、働いて家に帰ってくるだけでクタクタのはず。無理をしないでくださいね」(山崎さん)
また、そんな忙しい生活に加え、子供の急な体調不良にあたふたすることも。乗り切るためには、働く前の準備が大切です。とくに自治体の「ファミリーサポート」のような支援サービスや、病中病後の子供を預ける「病児保育」は、事前の登録が必要なことがほとんど。働き始める前に登録を済ませ、いざというときに備えましょう。
夫や実家・義実家などを頼れるのが理想ですが、そうでない場合には、頼れる先とのつながりが何よりも大切です。行政や民間のサービスを調べておいたり、ママ友や近所の信頼できる人に手助けをお願いしたりしておくと安心。実際に利用するかどうかにかかわらず、セーフティネットはできるだけ多く用意しましょう。
なお「女性としごと 応援デスク」では写真のようなチェックリストを用意。これに沿って、再就職までの流れや再就職後の乗り切り方について具体的にイメージして備えられます。
Q. 働きたくても保育園が見つからない。保活のポイントは?
求職中は、面接や職探しなどのために子供を預かって欲しい日があるでしょう。横浜市の場合、3ヶ月以内の就職を条件に子供を認可保育園に預けられるといいます。ただし、居住エリアなどによっては認可保育園に空きがなく、入園が難しい場合も考えられます。
「もし通える範囲の認可保育園に空きがない場合には、認可外保育園も検討してみてください。認可外保育園に預けている間に就職が決まれば、認可保育園に転園希望を出したときには就労中の扱いになります」(山崎さん)
就職が決まったときに備えて、預け先は求職中から確保しておきたいもの。もしも保活に関して悩んだときには、自治体の窓口にたずねてみましょう。横浜市の場合は、区役所の「保育・教育コンシェルジュ」に相談すれば、預け先に関する情報を得られるそうです。
Q. ブランクがあるから自分のスキル面が不安です
家にいる時間が長い生活に慣れると、仕事をする生活に戻れるか自信が持てませんよね。働く自分に戻るためには、就職後の生活をシミュレーションしてみましょう。
「仕事をする予定の時間はあえて家事をせず、自宅にいる想定の時間だけでやってみてください。働いた後の毎日がどうなるか想像しやすくなり、自分だけでなく家族が新しい生活への準備をする機会にもなるでしょう」(山崎さん)
また、就労後のスキルに不安がある場合には、まずビジネスマナーやメールの書き方などの本を読んでおくと安心。具体的な資格やPCスキルは企業によって必要性が変わるため、応募する会社に合わせて考えてみてください。働くにあたって少し心の準備ができているだけでも自信につながるでしょう。
働く目的に沿った、納得のいく就職を
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山崎さんは働きたいママたちに、主婦でいた時間を「マイナス」ととらえないでほしいと話します。
「子育てをしている間、ママたちは立ち止まっているのではなく、育児というキャリアを積んでいます。子供の行動に常に気を配りながらマルチタスクをこなしたり、食べてくれない離乳食をなんとか工夫して作ったり。それは育児を経験しなくてはできないことです。そうした毎日の中で積み重ねてきたスキルをいかす仕事に出合うために、私たちが相談に乗ります」(山崎さん)
身近な自治体の施設で、親身になって相談に乗ってもらえると心強いですね。再就職を考えている方だけでなく、転職を考えている方も、お住まいの地域に相談窓口があるか調べてみてはいかがでしょうか。「女性としごと 応援デスク」のように託児サービスを実施している場合がありますので(写真参照)、あわせて検討してください。