妊娠初期は飛行機に乗って大丈夫?
妊娠中は、経過が順調であれば飛行機に乗ること自体は問題ありません。航空会社では、国際線、国内線にかかわらず出産予定日を含め28日以内に搭乗する際は、医師の診断書を提出する必要があるとしていますが、妊娠初期の搭乗に制限は設けられていません。
ただし、乾燥しやすく揺れやすい機内環境や母体への影響を考えると、飛行機の利用に適している時期は、だいたい妊娠12週から妊娠28週頃とされています。
妊娠初期に飛行機を利用することは可能ですが、体調が変化しやすい時期のため、やむを得ない事情がある場合を除いては利用を避けた方がよいでしょう。
体調によっては搭乗できない場合も
妊娠の経過や体調が思わしくない場合は飛行機に搭乗できないことがあります。
特に妊娠初期は出血や下腹部痛、つわりといった症状が出やすいため、少しでも体調に不安があるときは搭乗を控えた方がよいでしょう。
- 福田産婦人科医院「今月のトピックス」(http://fukuda-lc.com/page/topix/topix2005_6.html,2018年11月29日最終閲覧)
- はなおかレディースクリニック「空の旅と妊娠を考える会(医療法人 雙葉会)」(https://www.hanaoka-ladiesclinic.com/gynecology/airtravel.html,2018年11月29日最終閲覧)
- 小郡三井医師会「病気と健康の話」(http://www.ogorimii-med.net/column/1484-2,2018年11月29日最終閲覧)
- ANAホールディングス「妊娠中のお客様(国内線)」(https://www.ana.co.jp/ja/jp/serviceinfo/domestic/support/family/maternity.html,2018年11月29日最終閲覧)
- ANAホールディングス「妊娠中のお客様(国際線)」(https://www.ana.co.jp/ja/jp/serviceinfo/international/support/family/maternity.html,2018年11月29日最終閲覧)
妊娠初期の飛行機移動の影響
妊娠初期に飛行機に乗る場合は、経過が順調で体調に問題がないことが前提です。飛行機は地上での移動とは異なり、高度約1万メートル上空を飛行するため体にさまざまなストレスがかかります。
放射線の量
地球には宇宙や大地から降り注ぐ自然放射線があります。日本では、年間一人当たり約2.1mSv(ミリシーベルト)の自然放射線を受けているとされ、日常生活でも知らないうちに放射線を受けています。
一定の高度を保ちながら飛ぶ飛行機は、地上にいるよりも宇宙からの放射線(宇宙線)による被ばくの影響を受けやすく、高度1万2千メートルで飛ぶ飛行機では、1時間当たり約0.005mSv、東京とニューヨークの往復1回で約0.19mSvの宇宙線を浴びています。
放射線の影響を受けていることに不安を感じるかもしれませんが、健康診断で行う胸部のレントゲンで約0.05mSv、胃部のレントゲンでも約0.6mSvの放射線量があり、比較してみると飛行機を利用したときに受ける放射線量は少量であることがわかります。
気圧の変化
飛行機に乗ると、飛行する高度が上昇すればするほど気圧が低下します。上空を飛んでいる飛行機では、できるだけ機内の気圧を地上にいるときと同等に保つため、与圧装置という機械によって機内に高い圧力がかけられています。
ただし、機体の構造上与圧装置での気圧調整には限界があり、機内の気圧は地上よりも多少低い状態で保たれているため、気圧の低下による体の不調が出やすくなります。
手荷物検査などのX線
空港で飛行機に乗る前に行う手荷物検査は必ず受けなくてはなりません。検査時に使用されている検査装置は、金属探知機であるため、体に悪影響を及ぼすことはありません。
ただし、妊娠中で金属探知機での検査に不安を感じている場合は、金属探知機以外での検査を行ってくれることもあるため、検査員に妊娠している旨を伝えてみるとよいでしょう。
- 成田国際空港「保安検査」(https://www.narita-airport.jp/jp/security/faq/faq-09,2018年11月30日最終閲覧)
- 放射線医学総合研究所「放射線被ばくの早見図」(http://www.nirs.qst.go.jp/data/pdf/hayamizu/j/20180516.pdf,2018年11月30日最終閲覧)
- 航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討について「文部科学省 科学技術・学術政策局 放射線安全規制検討会」(http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2009/05/21/20051214_02a_1.pdf,2018年11月30日最終閲覧)
- 日本産科婦人科学会 日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン産科編2017」P67-71(日本産科婦人科学会,2017年)
妊娠初期に飛行機に乗るときの注意点
妊娠中に飛行機を利用する際、搭乗時間は5時間くらいまでが望ましいとされています。どうしても国際線を利用しなければならないときでも、できるだけ5時間以内の利用にとどめましょう。
また、飛行機の座席を予約する際は、通路側の席を選ぶようにするとトイレにも行きやすく便利です。機内は湿度や気圧が低いため、搭乗時の対策が必要です。
エコノミークラス症候群の対策をする
妊娠中は、妊娠していないときの約6倍も血栓症になりやすいとされています。血栓症の一つである肺静脈塞栓症(はいじょうみゃくそくせんしょう)は、エコノミークラス症候群とも呼ばれ、スペースの限られた座席で長時間座りっぱなしの状態が続くと、足の血管に血行不良が起こって血液が固まり、血栓ができてしまう疾患です。
血栓症を予防するために、機内では30分~1時間ごとに歩いたり、かかとの上げ下ろし運動やふくらはぎをもんだりして、こまめにストレッチやマッサージを行うとよいでしょう。
水分補給をする
飛行機の機体内は湿度を低く設定しているためとても乾燥しています。こまめに水分補給をして乾燥対策をしましょう。水分摂取することは、エコノミークラス症候群の予防にもつながります。
シートベルトは骨盤あたりで装着する
飛行機に乗る際、離着陸時や気流が不安定な中を飛行するときのシートベルト着用は必須です。おなかが目立たない妊娠初期でも腹部の圧迫を防ぐため、おなかではなく骨盤あたりで装着しましょう。
- 山本ウィメンズクリニック「スタッフブログ」(http://yamamoto-women.com/blog/2012/12/217/,2018年11月29日最終閲覧)
- 桜台マタニティクリニック「妊娠中の旅行について」(http://www.sakuradai-mc.com/sakumata.php?v=4,2018年11月29日最終閲覧)
- 厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170807.html,2018年11月29日最終閲覧)
- はなおかレディースクリニック「空の旅と妊娠を考える会」(https://www.hanaoka-ladiesclinic.com/gynecology/airtravel.html,2018年11月29日最終閲覧)
国内の移動は飛行機と新幹線をうまく使い分けて
国内の移動の場合、目的地によりますが飛行機だけでなく新幹線の利用も考えるかと思います。新幹線移動は、万が一乗車中に体調が悪くなってしまっても、途中下車をすることが可能です。
ただし、場所によっては新幹線移動よりも飛行機移動の方が目的地までの所要時間が短いこともあるため、移動の負担を考えて選択するようにしましょう。
妊娠初期に飛行機に乗る場合は、余裕をもって計画を
妊娠中でも帰省や仕事などで飛行機に乗る理由はさまざまあるかと思います。妊娠初期の飛行機利用には特に制限はありません。ただし、体調が不安定な時期のため、移動中の体の負担を考えるとできるだけ飛行機の利用は控えた方が安心です。また、飛行機を利用する場合は、事前に医師に相談するようにしましょう。