「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」が2年間延長へ
2020年12月に行われた税制改正の話し合いにより、2021年3月31日が期限だった「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」が2年延長されることになりました。
ただし、贈与を受けてから教育資金管理契約期間中に贈与者が無くなった場合は新たな条件が設けられます。
贈与を受けた者が在学しておらず23歳以上の場合、教育資金として贈与を受けつつも未使用の残金については、相続財産となり相続税額の2割が加算されます。
この改正は、2021年4月1日以降、新たに「教育資金の一括贈与に係る贈与」を受けた者が対象です。
- 内閣府「令和3年度税制改正の大綱」(https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2021/20201221taikou.pdf,2021年1月27日最終閲覧)
- 文部科学省「令和3年度 文部科学関係税制改正要望事項の結果」(https://www.mext.go.jp/content/20201221-mxt_kanseisk01-100000584_1.pdf,2021年1月27日最終閲覧)
「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」とは?
「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は端的に言うと、教育目的であれば孫や子どもへの贈与を1,500万円まで非課税にする、という制度。
教育資金にあてるために一括して金銭を贈与したものが対象になります。2021年4月1日以降に新しく追加される条件以外で、もともと存在する条件などについて説明します。
教育が目的であることが第一条件
教育資金であれば最大1,500万円まで非課税で贈与できますが、教育資金とは何が対象になるのでしょうか。本制度における教育資金は大きく分けて2つあります。
ひとつは、学校教育法で定められた学校など、例えば幼稚園や保育所、認定こども園、小学校等の教育施設に直接支払う入学金や授業料等の金銭が対象になります。
学校の給食費や修学旅行費なども対象です。
もうひとつは、学校等以外の教育。例えば、ピアノや体操教室などの習い事、通う際に必要な物品の購入費用などが教育資金の対象に含まれます。留学も含まれます。
年齢制限・所得制限がある
贈与を受ける子どもや孫が30歳未満であることが条件です。
さらに令和元年4月1日以降において、贈与を受ける人の前年の合計所得額が1,000万円を超える場合は、この制度を使うことができません。
支払先によって非課税限度額が違う
非課税枠の総額は1,500万円ですが、教育資金の支払先によって非課税になる上限が違います。
1,500万円の枠の中で、入学金や入園料、保育費、給食費など、学校等に対して直接支払われる場合は1,500万円まで非課税です。
しかし、通学のための定期代や留学の際の渡航費など、教育資金の中でも学校等に直接支払われない費用については500万円までが非課税となります。
「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」の注意点
教育目的であれば1,500万円まで非課税になる制度ですが、利用するためには気をつけなければいけないことがあります。「はい、幼稚園の入園費用に使ってね」ともらえばよい、というわけではありません。通常の贈与時とは違った注意点があります。
使いきれない場合は贈与税がかかる
教育目的として、30歳に達するまでに使いきれなかったお金には贈与税がかかってしまいます。また、使いきれなかったからといって贈与者に戻すことはできません。
いくら必要なのか事前に計算した上で、贈与を受けるとよいでしょう。
領収書が必要
「教育目的」ということを証明するために、領収書が必要です。金融機関に領収書を提出する必要があるため、気をつけましょう。
領収書原本を提出することが原則ですが、金融機関によってはアプリでの提出も対応している場合があります。
通常の贈与を上手に使うことも一つの方法
通常の贈与であれば、1,500万円を子どもや孫に渡そうと思うと400万円ほどの贈与税がかかるため、この制度を活用することで経済的負担が大幅に減ることでしょう。
この制度を実際に利用する際は、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。しかし、教育目的でなければいけないことや領収書が必要なことなど、制限されていることも多い制度です。
通常の贈与は1年につき110万円まで非課税となるため、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」を使わずとも、数年かけて贈与することも一つの方法でしょう。
- 文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」(https://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/1332772.htm,2020年12月23日最終閲覧)
- 国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201304/pdf/01.pdf,2020年12月23日最終閲覧)