パパになることは 自分を見つめ直すチャンス
「結婚し、子供を授かり、夫としてパパとして、どうあるべきか、どう生きたいか、どうやって幸せな家庭を築いていくか……仕事にも追われる毎日のなかで、多くの人が葛藤しています。パパになるということは、人としてのあり方を見つめ直すこと。子育てこそ、最高の自己啓発のチャンスです」。
そう教えてくれるのは、アドラー心理学に基づいた子育て論で知られる熊野英一さん。パパたちが抱える不安やモヤモヤを解消するための心理学のプロである。
「家族を幸せにできるパパは、精神的な自立ができている人です。アドラーが提唱する自立した大人の3つの条件は、①チャレンジする『勇気』、②すぐに逃げ出さない『責任感』、③人と助け合える『協調精神』。まず、パパに必要な意識改革は〝完璧ではない〞部分も含めて自分自身を理解して受け入れ、自分の意思で考え・決めて、行動できることです」。
父親になるからには「こうあるべき」という理想の姿や、「これをできるようにならなきゃ」という義務感から自分を解放しよう。大切なのは〝ありのまま〞の素直な自分を受け入れること。自分で自分を許せる心でいることだ。
ピンチを乗り越えるカギは 他者を頼れるかどうか
新米パパにとって、育児・家事時間の捻出、産後のママの精神的なケア、赤ちゃんのお世話など、すべてが初体験。毎日、課題が目まぐるしく変化するスピード感のある生活のなかでは〝他者とのコミュニケーション〞が命運を分ける。
「他者(妻や子供、仕事仲間)を信頼して助け合える、適切な関係を結べることも大切な要素です。子育ての課題に直面したときは、パートナーを信頼して頼り、適切に依存できること。自分で自分を勇気づけ、課題に直面している自分・妻を勇気づけられる態度と技術を身につけ、少しずつ実践していく……そのプロセスの積み重ねの先に、幸せを実感できる家庭があります」。
日々の意識と行動次第で、家族を幸せにできる〝ポジティブパパ〞にも、不満タラタラの〝ネガティブパパ〞にもなり得るのだ。
プロフィール
熊野英一(くまの・えいいち)
アドラー心理学にもとづく「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナル。株式会社子育て支援代表取締役。1972年、フランス パリ生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本にて人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学し、MBA取得。製薬大手企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。約60の保育施設立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事する。2007年、株式会社子育て支援を創業。日本アドラー心理学会正会員。著書多数。最新刊は『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』(小学館)
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FQ JAPAN vol.52より転載
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