叱り方の制限は難しい、大事なのは「叱った後のフォロー」
「親が怒ると、子どもの自己肯定感が下がる?」と感じる方はいるかもしれません。実際、私自身も感じる時があります。しかし危険なことだったり不道徳なことであれば、叱ることは必要です。叱り方は時と場合に合わせて変わってきますし、その叱り方のさじ加減に正解はないので、そこが悩みどころ。
子どもの心を気にして叱り方を制限しても、わが子が大切であればあるほど、感情は入ってしまいますよね。教科書通りに冷静に叱れない・うまくいかないのも当たり前のことです。
そこで保育士としておすすめしたいのは、叱ったり怒ったりしたそのあとの行動や言葉掛け、フォローの仕方を大切にすることです。
「叱りすぎた」と思ったら「あなたが大切」を言葉にして
「つい言い過ぎてしまった」と感じたときは、親の方も自己嫌悪でパニックになりがち。でも大丈夫です。子どもの自尊心は十分に取り返せます。
お互いに心が落ち着いてから、子どもを抱きしめて「さっきはごめんね」と「あなたのことが大切」という気持ちを伝えてください。こうした言葉が、子どもの自尊感情に訴えかけます。
注意したいのは、心が落ち着いてない中途半端な時に無理やりこれをしようとすること。反発してぶり返す場合があるので、落ち着くまで時間を十分にとってからがいいかもしれません。最終的に子どもとの信頼関係につながることが大切です。
次に怒りすぎないために、考えてほしいこと
毎度しっかりフォローをすればいいとはいえ、できることなら平穏に冷静に叱り、大切なことを伝えたいですよね。そんなとき、以下のようなことを意識してわが子と接すると、突発的な怒りがわいてくるのを防げると思いますよ。
子どもと距離を置いてもOK
ライラが止まらない日や許せないことがあったときは、子どもと少し距離を置きましょう。怒りがおさえられないのは、何時間もべったり一緒にいたからかもしれません。
そういうとき、急に子どもを突き放してしまうのではなく「ママ具合が悪いんだ、だから今はお話できないの」と、理由をつけて少し距離をとりましょう。毎回うまく距離が取れるかはわかりませんが、うまくいけば、時間とともに心も落ち着いてくるはずです。
うまくいっている時間に目を向ける
日々の生活の中で、怒ってしまうことは、誰しもがあるはず。しかし、うまくいっている時間もあるはずですよね。
例えば、3回のお着替えのうち1回がうまくいかず、子どもがかんしゃくを起こしたり、親が叱ったりしてしまったとします。でも、他の2回は、一緒に仲良くお着替えができたことになります。1日24時間のうち、感情的に怒ってしまった時間は3分なら、残りの時間は楽しく過ごせていますね。
そのたくさんの時間に目を向けてみると、親の方も心が落ち着くと思います。
また、そうした「うまくいっている時間」に自己肯定感の根っこにある自尊感情に訴えるような「あなたがいて良かった」「大好き」という声かけをたくさんしてみましょう。言葉に出すと親子がお互いに心が温かくなり、「うれしい」が倍増します。お子さんは行動と存在を両方認められて「もっといいことをやりたい」というサイクルができます。叱られた・怒られたという体験より、うれしかった記憶がまさるはずです。
親も自分自身を大切に
子どもの自己肯定感はもちろん大切ですが、親自身はどうでしょうか。「いい子に育てたなきゃ」「私の声かけで子どもの自己肯定感が下がってしまうかも」と縛られてしまっていませんか?子どもとずっと仲良く楽しく過ごせるのは当たり前ということはありません。子どもの存在を認めるとともに、親自身の存在も大切して欲しいです。
例えば、日々の中で親がやっていることをメモしてみたらどうでしょう。子ども以外にも、家族のためにやっていることを含めたらたくさんあるはずです。そんな親の存在は「いてくれてよかった。ありがとう」ですよね。自分にも言葉に出して言ってみてください。気づいたら心が軽くなりますよ。
感情任せになってしまっても大丈夫、親子双方のフォローで心は温まる
感情的に叱ってしまい自己嫌悪してしまう方も、フォローを大切にすることを意識すれば気持ちが軽くなります。
自己肯定感の根っこにある、自分を尊重する感情を「自尊感情」と言います。これは、自分に自信があることではなくて、「自分はここにいていいんだ」「自分は大切存在なんだ」という感覚です。親子ともに、この気持ちを大切にしたいですね。
そしてのそれと同時に「自分は誰かの役に立っている」「必要とされているんだ」というように、自分がやることやできることが、誰かに認められている感覚もセットでフォローできるといいでしょう。
怒ってしまったあとは「あなたが大切」「こんなことをしてくれてうれしかった」という声掛けを。そして親自身も自分自身のよかった点、頑張っている点を認めるようにしてくださいね。