🔴【第1話から読む】母のお金の無心が止まらない…私が知らなかった長年の依存
母の車の買い替え費用をめぐり、真希の支援を考えた美和。しかし長女・春香は家庭の事情から協力を断る。姉妹間の温度差と遠慮の中、真希の疲弊は深まり、妹の葛藤は頂点に達する。
久しぶりの長女との通話と期待
私の姉で長女にあたる春香とは、久しぶりの連絡でした。春香は社会人になって早々に結婚し、嫁いで以降、私たち家族との接点が薄くなっていたのです。まばらながら、最初こそ電話やメールのやり取りをしていたものの、それもいつしかなくなっていました。
今回の件、決して春香のせいではないものの、真希や母の背景を聞くと、「どうして気にかけてくれなかったの?」という不満を抱いてしまっていました。
「もしもしお姉ちゃん?久しぶり、美和だよ」
「久しぶり。どうかした?」
通話越しに子どもたちの声が聞こえる。私と同じく、忙しなくも穏やかな生活を送っているみたいでした。
「実は、相談というか、お願いがあって連絡したの」
「お願い?どんなの?」
私はこれまでの経緯も含め、母の車の買い替え費用を一部出してくれるよう頼みました。さらに真希の現状にも触れて、切迫した状況であることも伝えました。すると、スマホ越しに春香の思案にうめく声が聞こえ、しばらくしてから話し始めました。
「……申し訳ないんだけど、真希と美和の方でなんとかならない?」
予想外の回答に、私は耳を疑いました。
温度差と葛藤が生む苛立ち
「お姉ちゃん、さっき話したよね?今まで散々真希がお母さんにお金貸してきたこととか、まだ返ってきてないとか」
「……うん。気持ちはすごい分かるよ。ただ、ウチも今大変なの。子どもの受験とか入園準備で出費がかさんでて」
姉の言い分にも理解はできました。子どもの出費は一度に大きな額が必要になります。しかし、真希の今までの献身によって私たちが守られてきたことや、参っている現状を話した上のその回答に、私は憤りを覚えました。
「冗談言わないでよ!真希が何も言わずにお母さんの無心を引き受けてくれてたから、私たちは不自由なかったんだよ?」
「今手助けしないと、真希、潰れちゃうかもしれないんだよ?」
昂った感情のまま、私は語気を強めて春香に言葉をぶつけていました。一瞬の間を置いて、姉のため息が聞こえました。
「もちろん分かってるよ。真希にも感謝してる。でも、厳しいものは厳しいの。まして、過去に貸したお金が返ってきてないって聞いたら尚更ね」
「美和も子どもいるから分かるでしょ?子育てのお金は“今”必要なの。それを『無いから待って』は通用しないじゃない?」
春香は淡々と話す。冷たく聞こえるけど、事実でもありました。
「そもそも、車って今すぐ買い替えが必要なの?するにしたって、グレードとか価格を落としてもらうとか、まずそこからじゃない?」
「それに、お母さんからの無心だって、真面目に聞きすぎない方がいいんじゃない?返済されないなら、聞いた方が損よ」
つらつら正論を話す春香。実際そうかもしれないけど、私は姉のどこか他人事で冷めた態度が受け入れられませんでした。
「……じゃ、春香は今回の件に関わる気はないのね?」
「え?別にそういう訳じゃ……」
「もう分かったから。じゃあね」
低い声で私はそう吐き捨て、一方的に通話を切る。理解し合えない憤りと悲しみが込み上げ、誤魔化すように天井を見上げました。
打開策の模索と行き詰まり
家族との関わりが薄くなっている春香のことを考えれば、現実を考慮しつつ、より良い着地点を見つけようとする彼女の姿勢に何も問題はないのでしょう。しかし、真希や母の背景を知る私からすれば、そんな春香の考えや姿勢に温度を感じず、無頓着に映って我慢なりませんでした。
春香からの支援が期待できない今、残るは私と真希で折半するのみとなりました。ただ、これまで通りのやり方では真希への母の依存的な態度はきっと変わらない。それに、真希のこれまで貸してきたお金の返済もされないままになる恐れがありました。
母への説得は避けられない。しかし、既婚の春香と私には遠慮があり、唯一頼る真希とは歪な関係である母を説得できる決め手が欠けていて、私は行き詰まってしまいました。打開策が見つからずに息が詰まり出す心模様を映すように、窓から見える空が急激に曇り始めました……。
🔴【続きを読む】母の説得失敗で手詰まり、それでも…3姉妹再結束の瞬間|無心する母
あとがき:家族の温度差が生む葛藤と限界
本エピソードでは、家族間の温度差や遠慮が、思いやりと葛藤を同時に生む様子を描きました。姉妹それぞれの立場や状況からくる行動は、決して悪意ではないものの、支えを必要とする人にとっては重くのしかかります。家族だからこそ、気づかないうちに負担を押し付け合うこともあるのです。真希の疲弊と美和の焦りは、誰も責められない現実の象徴であり、家族関係の微妙なバランスを改めて考えるきっかけとなります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










