Ⓒママリ/画像の生成にAIを使用しています
その日の出来事は、あまりにも日常的な一瞬から始まった。夫の和也は、いつものようにコンビニへタバコを買いに出かけ、スマートフォンをテーブルの上に置き忘れていった。彼は普段から「ママ一筋だから、いつでも携帯見ていいよ」と笑う人だった。その言葉を信じていたはずなのに、なぜだろうか。急に心臓がざわつき、何かに突き動かされるように、沙織はその画面に手を伸ばしてしまった。その時、彼女の勘が、これから始まる苦い真実を予感していたのかもしれない。
飛行機の距離にいる女。ロック画面に飛び込んできた見知らぬ名前の通知
和也が玄関のドアを閉めてから、わずか数十秒。沙織は震える手でスマートフォンを手に取った。ロック画面を解除し、まず目に飛び込んできたのは、協力戦闘アプリの通知と、見知らぬ女性の名前。彼女の名前は、和也が協力戦闘アプリでよく一緒にプレイしているという女の子だとすぐに察しがついた。
沙織がタップしたのは、次にLINEのアプリだ。2人のやり取りは、わずか1週間ほど前から始まっていたようだった。たった1週間。されど1週間。その間に交わされたメッセージの量は、尋常ではなかった。
深夜に何度もボイスチャットをしていた形跡もあり、その時間に沙織が隣で眠っていたと思うと、背筋が寒くなった。
「しよたくさん」「ぎゅーってする」— 家族への愛とは全く違う熱を帯びた気持ち悪いメッセージ
メッセージの内容は、友人同士のやり取りとは明らかに一線を画していた。和也は「きたらいっぱいくっつこう」「しよたくさん」「すきになりそう本当に」と、露骨な言葉を送り、女性も「ぎゅーってする」と応じている。しかも、2人は頻繁にハートの絵文字を送り合っている。特に和也は多用していた。
沙織は吐き気を催した。和也が送る、あの甘い、親密なメッセージ。それは、彼が沙織や子どもたちに向ける愛情の言葉とは全く違う、気持ち悪いほどの熱を帯びていた。
彼は、この女性に「おやすみ」や「おはよう」といった、家族にすら毎日言わないあいさつを送っていたのだ。しかも、LINEの名前は偽名。プロフィールには家族のことが一切書かれていない。彼はきっと、この女性に独身だと偽っていたに違いない。
「これで、魔が刺しただけなんて言えるはずがない」
沙織はスマホを握りしめ、和也が帰ってくるのを、リビングのソファで待ち構えた。彼への信頼が、音を立てて崩れていくのを感じながら―――。
🔴【次の話を読む】「今は一人になりたい」と逃げた夫が送ってきた不倫の「テンプレート謝罪文」
たった一週間。されど一週間。深夜のやり取りがもたらしたもの
この第1話は、主人公・沙織が夫の秘密を知る瞬間を描いています。夫・和也の「ママ一筋」という言葉とは裏腹に、スマホの中には裏切りの証拠が散りばめられていました。
特に、ゲーム仲間という枠を超え、LINEで偽名まで使って親密なやり取りをしていたことは、和也が意図的に家庭を隠し、関係を深めようとしていたことの決定的な証拠です。
沙織の胸に去来する「気持ち悪い」という感情は、単なる嫉妬ではなく、長年の信頼を裏切られたことによる深い嫌悪感であり、今後の夫婦関係に重くのしかかることになります。










