🔴【第1話から読む】「旦那さん、稼ぎ悪いの?」→失礼すぎる!新居の近くに住む“不穏なボスママ”|近所のヤバいママ
東城さんの執拗な干渉に耐えかね、中村さんは突然の引っ越しを決意。残されたみのりは「次は自分たち」という恐怖を抱える。そんな状況の中、東城さんはさらに佐藤家へと標的を向け始めていて…。
忍び寄る視線と悪意
中村さんが突然引っ越してしまってから、東城さんが家の前を通る頻度が、明らかに増えた。朝、子どもたちを送り出すときにも。夕方、買い物帰りにも。まるで私たちの生活リズムを覚えたかのように。
最初は、偶然だと思い込もうとした。けれど、すれ違うたびに浴びせられる言葉で、偶然ではないと気づいてしまう。
「佐藤さんちょっと…。最近、旦那さんとの仲…大丈夫? 最近見かけないわよね」
「お子さんたち、ちょっと表情が暗いように思えて心配よ…。ご家庭の中でうまくいってないところがあるんじゃない?」
無邪気な顔で、悪意だけを押しつけてくる。笑顔なのに、目が笑っていない。それでも私は、とりあえず愛想笑いを返すしかなかった。
もちろん、わが家で夫と私が不仲ということもないし、子どもは毎日明るく楽しく暮らしている。東城さんがなぜ、不仲説を吹聴したがるのか心底わからず、ナゾに思うばかりだった。数日後、ママ友の一人が小声で忠告してきた。
「みのりさん……東城さんが、あなたの家のこといろいろ言って回ってるみたいよ」
「いろいろ……?」
「旦那さんが浮気してる、とか。子どもに問題がある、とか……」
胸が詰まり、呼吸が浅くなる。事実は一つもない。それなのに、噂は真実より早く、広く伝播する。
「東城さんこそ、数年前に旦那さんがひどい不倫してたみたいで大変だったのよ。それから『どこのうちもそんなものだ』って思いこみたいみたいで、関係ない人の話をでっちあげたり、ふくらませて噂したりしているみたいよ…」
ママ友のこの話で合点がいった部分もある。東城さんは「不幸な人」を作り上げて、相対的に自分は幸せだと思いたいだけなのかもしれない。大変だった事実があるにしても、なんて自分勝手な思想なんだろうか。
日常が奪われていく
ある朝、家族の見送りに外に出るとゴミ捨て場が目についた。そしてすぐに気づいた。ゴミ袋の向きが変わっている。
「……あれ?」
今朝と違う位置。袋の口がわずかに開いている。私の背中を、嫌な汗が滑り落ちた。その時、視線を感じて顔を上げると、東城さんが少し離れた場所からこちらを見つめ、にこっと笑った。その笑みはとにかく不快で、ねっとりとした雰囲気だった。
(まさか、家のゴミを漁られた?)
心臓が強く脈打ち、脚が震える。でも、証拠はない。私は、気づかないふりをするしかなかった。
守りたいもの
そして決定的なことがおきる。
その日の夕方。子どもたちと工作をしていると、カリ……と、通り沿いの窓のあたりで金属の擦れる音がした。
「ママ、なんか音がする……」
娘が不安そうに私の腕を引っ張る。そっとカーテンの隙間を広げると、その隙間には東城さんの目があった。
「ギャッ……」
思わず声が漏れた。すると東城さんは、ゆっくりと顔をこちらへ向けて笑う。その笑いは、親しい友人に向ける笑顔ではない。狂気じみた表情だった。
「かわいい声がするからつい近づいちゃったのよ~ごめんなさいね。仲良しでうらやましいわね」
声だけは明るいのに、言葉の端々にじわりと冷たさが滲む。
「ママ、こわい……」
長男が私の服を握りしめた。その小さな手が震えているのを見て、私の中で何かが軋んだ。さすがにこれは、ただの近所付き合いの範囲じゃない。家族が怯えるところまで来てしまった。
「……やめてください。覗かないでください!」
東城さんは、一瞬驚いたように目を丸くした。けれどすぐに、口元だけで笑った。
「やだ~そんなに怖がらなくても。それとも、絶対見られたくなかった秘密でもある?」
東城さんは「冗談よ」とひらひらと手を振り、ゆっくりと去っていった。私の胸の中で、ざわざわと黒い不安が膨れ上がる。
このままではいけない。 でも、どうしたらいいのだろう―――。
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あとがき:恐怖と向き合う、小さな一歩
平穏を守るために、見て見ぬふりを続けてきたみのり。しかし、子どもたちが怯えながら暮らす姿を目の当たりにし、「守るべきもの」をはっきりと自覚します。恐怖に押しつぶされそうになりながらも、勇気を振り絞り声を上げた一歩は、小さくても確かな前進。
けれど、これで終わりではありません。むしろ、東城さんの執着は強まり、対立は深まっていく予感がします。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










