穏やかな夫を持つ萌子は、英会話教室に通い始め、学生時代の知り合い武内と再会。偶然を喜んだのもつかの間、彼は教材交換や廊下での立ち話で、萌子の手や腰を故意に触るなど、既婚者として一線を超えた不快な接触を始めて…。
ずっと習いたかった英会話
私は萌子。今年で30歳になった。
「萌子、今日は何時に帰れそう?俺、今日は直帰だから麻婆豆腐でも作るよ」
朝、私の隣でパンをかじる夫の圭吾は、本当に優しくて穏やかな人。圭吾との結婚生活は、小さな波風すら立たないほど平穏で満たされている。彼は33歳で、IT企業に勤める最高のパートナーだ。
そんな満たされた日常の中に、少しだけ刺激と成長を取り入れたくて、ずっと習いたかった英会話教室に通い始めたのは半年前のこと。週に一度、夜のクラスに通うのが、私の新しい楽しみになっていた。
習い事で昔の知り合いと遭遇
あの日、教室のドアを開けた時、私はまさかあんな形で「過去」と再会するとは思っていなかった。
「あれ?萌子ちゃんじゃない?」
声をかけてきたのは、武内くんという男性だった。彼は学生時代の知り合いで、当時はいわゆる飲み仲間くらいの関係だった。まさかこんな都心の英会話教室で再会するなんて!
「武内くん!久しぶりだね、まさかここで会うなんてびっくり」
「びっくりだよね。相変わらず美人だね、萌子ちゃんは」
昔から軽口を叩くタイプの人だったので、そのくらいはいつもスルーできていた。「課題の疑問点の解消に」とLINE交換を求められたので、特に気にすることもなくそれに応じた。しかし最初の異変はすぐに訪れる。
「これ、萌子ちゃんのペン?」
そう言って私が落としてしまっていたペンを渡す際、彼の指が私の手の甲を必要以上に長く撫でた気がした。気のせいだ、たまたまだ、と自分に言い聞かせた。私は自意識過剰なだけ。学生時代の知り合いに再会して、少し浮かれているだけかもしれない、と。
距離感がおかしい
でも、彼の行動は確実にエスカレートしていった。教室が終わった後、大勢の受講者が建物から出ていく波の中で、武内くんが手を握ってきたのだ。慌てて手を引くと「あ、ごめん、階段危ないかと思って」と笑ったが、まさか手を握るなんてとびっくりした。
そして、ついにその日は来た。レッスンの休憩時間には背後から声をかけられた。
「萌子ちゃん、今日のレッスン予習してきた?」
その瞬間、彼は私の隣を通り過ぎるようにして、一瞬だけ、私の腰をさすった。私の全身の毛が逆立つのがわかった。反射的に数歩下がると、彼は何事もなかったかのように自分の席に戻り、テキストを開いていた。
(絶対、わざとだ)
こうしたいきすぎた接触を「自意識過剰」という言葉で片付けて良いのだろうか?いや、彼はあまりにも調子に乗っていると思う。
このとき、私はまだ知らなかった。この不快な再会が、私の平穏を完全に破壊し、そして私自身の手で戦い抜かなければならない地獄の始まりに過ぎないことを―――。
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あとがき:「気のせい」で片付けられない不快感
日常の中の「小さな違和感」が、いかに人の心を蝕んでいくのかを描きました。萌子が最初「気のせい」「自意識過剰」と自分に言い聞かせるのは、波風を立てたくないという既婚女性特有の心理です。しかし、この「スルーしたい気持ち」こそが、武内のような人間には付け入る隙を与えてしまいます。この段階で、不快な接触はすでにハラスメントです。萌子の満たされた日常に泥を塗る、この不快な再会が、今後の大きな戦いの始まりになります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










