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「おべんとう箱の下にかくす」という、子どもならではの知恵が、園のきびしいルールを無効化してしまいました。ルールを守ろうとする秋穂さんと、手段を選ばない美緒ちゃん。この対照的な姿勢が、後に大きな亀裂を生むことになります。
「シール交換しよう」と言う娘の友だち
32歳の主婦、秋穂(あきほ)は、夫の利一と、幼稚園年長になる5歳の娘・ユリの3人暮らしをしています。
ユリが通う幼稚園は、一つだけきびしい「鉄の掟」がありました。
それは、「物の貸し借り・譲渡の禁止」です。
過去に、親同士の大きなトラブルがあったらしく、登園時には、先生が一人一人のカバンの中身をチェックするほど、徹底されていました。
「お母さん……また、美緒ちゃんに"シール交換しよう"って言われちゃった」
お迎えの園庭で、ユリがこまった顔で教えてくれました。
美緒ちゃんは、あずかり保育に行くため、まだ園に残っていましたが、帰り際にユリを見つけてかけよってきたようです。
「ユリは、ちゃんとおことわりできた? 園のルールだもんね」
「うん。でも美緒ちゃん、"次は絶対持ってきて"って……」
「ルール違反」をする友だち
秋穂も、美緒ちゃんのシールへの執着について、ユリからよく聞いていました。
しかし、園のきびしいカバンチェックがあるはずなのに、なぜ、彼女はそんなに強気なのでしょうか…。気になった秋穂は、ユリにたずねました。
「ねえ…先生は、美緒ちゃんがシールを持ってきてることに気づかないの?」
すると、ユリが耳元で言いました。
「あのね、美緒ちゃん、おべんとう箱の袋の底にシールをかくして持ってくるの。先生が見てない時に、こっそり見せてくるんだよ」
秋穂は、(確信犯だ)と、思いました。
その数日後、ユリがカバンから一通の封筒を取り出しました。
中には、小さな袋に入った大量のシールが。
「先生がいないスキに、美緒ちゃんにムリやりわたされちゃったの……」
ルールを潜り抜けてまで、押し通す執着心。
秋穂は、この時、これが単なる子どもの遊びではなく、身勝手な親子に翻弄(ほんろう)される泥沼バトルの幕開けになるとは…まだ知る由もありませんでした。
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あとがき:ルールもムシする「執着心」
園の「鉄の掟」を前に、まじめにルールを守ろうとする、秋穂さん親子と、手段を選ばず、欲望を通そうとする、美緒ちゃん。
"おべんとう箱の下にシールをかくす"という、子どもらしい知恵が、大人たちの決めた秩序を、静かに、しかし、確実に侵食していく様子に、背筋がこおります。
純粋な「好き」という気持ちが、ルールを逸脱するほどの執着心へと変わる時、それは平和な日常をこわす火種となります。対照的な両親子の価値観が、物語の不穏な幕開けを告げていますね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
イラスト:まい子はん










