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「パパと離れて悲しいの?」息子の純粋な問いと元夫へ抱く複雑な感情|シングルマザーの揺らぐ心

元夫の不倫をきっかけに離婚し、5歳の息子を育てるシングルマザー・真由。おだやかで誠実な恋人・直人と出会い、前を向き始めていたはずなのに、父親として変わっていく元夫の姿に心がゆれて…。離婚後の元夫婦の変化について描いた作品、『シングルマザーの揺らぐ心』第2話をごらんください。

PIXTA

🔴【第1話から読む】離婚後、父親らしくなった元夫と優しすぎる恋人…2人の男の間で揺れる本音

元夫との旅行から戻った息子の姿に安堵する、真由。真由は、たのしかった結婚当初の思い出と、不倫発覚時の記憶がよみがえり、複雑な感情を胸に抱いていた…。

結婚当初を思い出してしまう

 ラブラブ デート PIXTA

旅行から帰ってきた、翌日。

洗濯機を回しながら、私は小さなリュックの中身を一つずつ取り出していた。

砂の入ったくつ下。しわくちゃの遊園地のパンフレット。お土産のキーホルダー。

「ママ! パパとのったジェットコースター、こわかったけど、おもしろかった!」

陽向は、昨日のできごとを何度も話す。その声を聞きながら、胸の奥に、ぽっと灯るものがあった。

(たのしそうで、よかった)

そう思う反面、別の感情がゆらりと顔を出す。どうしても思い出してしまうのだ。健吾と、まだ“夫婦”だったころのことを…。

健吾との結婚生活は、最初は本当にたのしかった。

外食に行けば、店員さんともすぐ打ち解けるし、友だちを呼べば場が盛り上がる。私が落ち込んでいると、くだらない冗談で笑わせてくれた。

「真由はさ、考えすぎなんだよ」

そう言って、頭をぽんと叩かれるのが、くすぐったくてうれしかった。たよりになる人で、私にはないものを、たくさん持っていた。妊娠が分かった時も、健吾は泣いてよろこんだ。

「絶対、いいパパになるから!」

あの時の笑顔は、今でもはっきり思い出せる。でも──少しずつ、何かが変わっていった。

少しずつこわれていった日常

女性 デート 夜 PIXTA

おなかが大きくなるにつれ、私は不安が増えていった。

体調も安定しない。将来のことも考える…。なのに、健吾は相変わらず飲み会や友だちからの誘いに出向いていた。

「つきあいだから」

その言葉を、何度聞いただろう…。

出産時、立ち会いはしてくれた。でも、どこか“他人事”のような空気を感じた。

陽向が生まれてからは、さらに距離ができた。

夜泣きで眠れない日々…。私はボロボロで、髪も振り乱していた。それでも健吾は、スマホをいじりながら言った。

「俺、明日、早いから」

陽向が1歳を過ぎたころには、ほとんど目を合わせなくなっていた。抱っこも数えるほどで、休日も「ちょっと出かけてくる」と言って帰りがおそい。

(…おかしい)

そう思ったときには、もう心のどこかで答えは出ていた。

──不倫。

うたがいたくなかった。でも、証拠がなければ、私は前に進めなかった。

探偵事務所のドアを叩いた日のことは、今でも忘れられない。ふるえる手で契約書にサインをした。

数週間後、わたされた写真。見慣れた背中が、知らない女性とならんで歩いていた。世界の音が、すべて遠のいていくように感じた。その後、弁護士を立てて話し合いをした。

健吾は最初、言い訳をした。

「本気じゃなかった」「魔が差しただけ」

でも、私の中で何かが、完全に折れていた。陽向を抱きしめながら、私は決めた。

このままでは、笑えない。この子に、こんな空気を吸わせたくない。離婚届に判を押した日、涙は出なかった。ただ、空っぽな感情だけがそこにあった。

きらいになれない…それが厄介

子供 見上げる 息子 家 PIXTA

洗濯機の終了音で、現実に引き戻される。

ふと気づくと、ほほがぬれていた。たのしかった思い出と、苦しかった記憶が、ぐちゃぐちゃに絡まっている。

「ママ?」

小さな声が足元から聞こえた。見上げると、陽向が心配そうな顔で立っている。

「どうしたの?」

あわてて涙を拭う。

「パパとバイバイしたから、かなしいの?」

その一言に、胸がぎゅっとしめつけられる。

(ちがう。悲しいのは、もっと昔のこと)

でも、それをこの子にどう説明すればいいのか分からない。

私は、少しだけ笑った。

「……そうかもね!」

泣き笑いのまま、陽向を抱きしめる。

傷つけられた過去は、たしかにある。あのころの痛みは消えていない。

それでも、離婚後、父親として変わろうとしている健吾を見ると、完全にきらいになれない自分がいる。それが一番、厄介だった。

陽向の背中をなでながら、私は思う。私はまだ、あの人との思い出を、きれいに“過去”にできていないのかもしれない。

🔴【続きを読む】優しさだけで、足りる?おだやかな恋人への"違和感"が消えない理由

【全話読む】
シングルマザーの揺らぐ心

あとがき:「きらいになれない」は未練なのか

うらぎられた過去があっても、たのしかった記憶まで消えるわけではありません。人を完全にきらいになることの方が、実はむずかしいのかもしれませんね。

ゆるしたいわけではない…。なかったことにもできない。そのゆらぎは、弱さではなく、真剣に向き合った証なのではないでしょうか。真由の心は、まだ整理の途中にあります。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています

🔴【全話読む】シングルマザーの揺らぐ心

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