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🔴【第1話から読む】離婚後、父親らしくなった元夫と優しすぎる恋人…2人の男の間で揺れる本音
離婚から2年後に出会った直人は、息子・陽向の存在も、過去の傷も静かに受け止めてくれる誠実な人。おだやかな時間を過ごす一方、真由は、元夫・健吾の陽気さとくらべてしまい、優しさだけでは埋まらない、小さな違和感を抱き始めていた。
まよいを打ち明けた昼下がり
「で、どうなの? 正直なところ」
向かいに座る美咲が、コーヒーカップを置きながら言った。
平日の昼間。久しぶりに有給を取り、駅前のカフェでランチをしている。陽向は保育園。こんなふうに美咲とゆっくり話すのは、いつぶりだろう。
美咲は学生時代からの親友で、私の結婚も離婚も、全部知っている。探偵事務所に行く前夜、泣きながら電話した相手も彼女だった。
私は、フォークをにぎったまま、少しまよってから口を開く。
「……健吾がさ、ちゃんとお父さんしてるのを見ると、なんか…」
言葉がうまくまとまらない。
「ゆれる?」
図星を突かれて、苦笑する。
「……うん」
旅行のこと。陽向と笑い合う姿。昔みたいに自然に話せる空気。そして、直人とのおだやかな時間の中で感じる、ほんの少しの物足りなさ──全部、彼女に正直に話した。
美咲は、途中で一度もさえぎらなかった。だまって聞いて、最後に小さく息を吐く。
「…健吾さん、変わったよね」
「……うん」
それは、私も認めている。父親としては、本当に誠実になった。約束を守るし、陽向を大切にしている。
「でもさ……」
美咲は、まっすぐ私を見る。
「真由が泣いた夜のこと、忘れてないからね、私」
「父親」と「夫」は別の話
「妊娠中に放置されたことも…陽向くんが熱を出してるのに、飲み会行ったことも」
思い出したくない場面が、鮮明によみがえる。
「あの人、明るいけどさ…自分中心なところあったよね?」
(否定できない)
いつも、あいまいな笑いでごまかす。自分が正しいと信じてうたがわない。私の不安を「考えすぎ」で片づける。健吾は、私の悩みに、真剣に向き合ってくれたことがあっただろうか…。
「不倫もそうだけどさ…ああいう人って、根っこは変わらないと思うんだ」
美咲の声は冷静だった。責めるでもなく、感情的でもなく、ただ、事実をならべるように。
「父親としてはいいかもしれない。でも、夫婦として、真由がしあわせになれるかどうかは、別問題じゃない?」
彼女の言葉が、静かに刺さる。私は視線をおとした。
選びたい"未来"
「……でも、たのしかったのも本当なんだよ」
「分かるよ」
美咲はすぐにうなずいた。
「たのしかったから結婚したんでしょ?」
そう、たのしかった。笑い合って、くだらないことで盛り上がって…あの時間は、ウソじゃない。
「直人さんは?」
私は、息を詰まらせた。
「やさしい。誠実だよ。陽向にもちゃんと向き合ってくれる」
コーヒーの水面に小さな波紋が広がっている。そこに映った自分の顔が、どこか暗くらいのをみて、はっきりと気づいた。
「でも……なんか、たまに息苦しい」
美咲は、少し考えるように視線を上げた。
「それってさ…安心してるってことなんじゃないの?」
「え?」
「ドキドキとか、刺激とか、テンポの良さとかってさ…不安定さや緊張とセットなことが多くない?」
思わず顔を上げる。
「健吾さんといた時、たのしかったかもしれないけどさ、同時に不安もあったでしょ?」
たしかに、いつもどこかで気を張っていた。きげんをうかがっていた。飲み会の帰りを待ちながら、胸がざわざわしていた。
「直人さんは?」
美咲が問いかける。直人といる時間を想像する。どなられないし、不安になることもない。急に連絡が取れなくなることもない。
「……落ち着いてる」
「それが“安心”だよ。物足りないって感じるのは、波がないからかもしれない。でも、その波のなさってめちゃくちゃ大事だと思う」
何も言えない。胸の中で、何かがゆっくりほどけていく。
(刺激と安心…私は、どっちを求めているんだろう)
食事をおえ、店を出るころには、不思議と呼吸がかるくなっていた。
駅までの道を歩きながら、空を見上げる。
(何にゆれていたんだろう。健吾の“変化”に期待していた?それとも、過去のたのしかった自分に未練があった?)
答えは、少しずつ見えてきている。家に帰ったら、直人に連絡してみよう。ちゃんと、今の気持ちを話してみよう。そう思えた時、胸の奥のモヤモヤは、ほとんど消えていた。
私はもう一度、自分に問いかける。
(私が選びたい未来は…一緒に生きていきたいのは、どっち?)
その答えは、もう、ほとんど決まっていた。
🔴【続きを読む】「あのころ俺…」台風の夜、元夫からの告白…私が選んだ"未来"とは
あとがき:くらべてしまう心の正体
あたらしいしあわせを前にしたとき、なぜか過去とくらべてしまう──それは未練というより、「自分にとってのしあわせの形」をたしかめる作業なのかもしれません。
安心できる相手なのに、胸が高ならないことに戸惑う。たのしかった記憶がよみがえり、選ばなかった未来を想像してしまう。
けれど、くらべることで見えてくるものもあります。自分はどんな空気の中で笑っていたいのか。どんな日常なら、肩の力を抜いていられるのか。
まよいは遠回りに見えて、実は「納得できる選択」をするための大切な時間。真由が向き合っているのは、だれかではなく“これからの自分”なのかもしれません。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










