🔴【第1話から読む】建築士の夫に“タダで図面を見てほしい”→ママ友の【お願い】非常識?|他人の夫をタダ働きさせるママ友
夫が建築士であることを知った藤川から図面を見てほしいと頼まれ、違和感を覚えた真帆。その違和感の正体を探るように、幼稚園時代の出会いからこれまでの関係を振り返る。頼れる存在だった藤川の言動に、少しずつ見えてきた“引っかかり”とは。
頼れる存在だったはずのママ友
藤川さんに図面の相談を持ちかけられた帰り道。
私はゆっくり歩きながら、さっきの会話を思い返していた。
──「旦那さん、建築士でしょ?この図面ちょっと見てもらえない?」
軽い調子だった。
まるで、ちょっとした世間話みたいに。
でも、胸の奥に引っかかるものがある。
その違和感は、実は今に始まったことじゃなかった──
思い返せば、藤川さんと初めて出会ったのは、息子の悠真が幼稚園の年中だった頃だ。
春の入園説明会。まだ知り合いも少なくて、私は教室の端で静かに座っていた。
周りではすでに何人かのママたちが楽しそうに話している。
「はぁ……」
知らない人ばかりの空間は、どうしても緊張する。
そんなときだった。
「ねえ、ここ空いてる?」
明るい声がかかった。
顔を上げると、笑顔の女性が立っていた。
「え?あ、どうぞ」
「ありがとう!」
その人は隣に座ると、すぐに話しかけてきた。
「お子さん、どのクラス?」
「ひまわり組です」
「あ、うちも!」
ぱっと顔を輝かせる女性。
「じゃあ同じクラスだね。よかった〜」
そう言って笑ったのが、藤川さんだった。
少しずつ積み重なっていった違和感
「私、藤川美咲。息子は陽翔っていうの」
「石田真帆です。うちは悠真です」
それが、私たちの最初の会話だった。
藤川さんはとにかく人懐っこい人だった。
園庭でも、送り迎えでも、すぐに他の保護者と打ち解ける。
気づけば、自然とママたちの中心にいるようなタイプだ。
「真帆ちゃ〜ん!こっちこっち!」
送り迎えの時間になると、よく声をかけてくれる。
「このあと公園行くんだけど、悠真くんも来る?」
「え、いいの?」
「もちろん!」
そんなふうに誘ってくれることも多かった。
私はどちらかといえば、あまり自分から輪に入っていくタイプじゃない。
だから、藤川さんみたいな人がいてくれると本当に助かった。
「陽翔くんママってすごいよね」
ある日、別のママが感心したように言った。
「この前の親子イベントも仕切ってくれてたし」
「ほんとほんと。頼りになるよね」
周りのママたちも口々にうなずく。
私も同じ気持ちだった。
“頼もしいママ友”。
それが、当時の藤川さんの印象だった。
でも少しずつ、ほんの小さな違和感を感じることも増えていった。
無意識に踏み込んでくる距離感
ある日のこと。
幼稚園の保護者会で、イベントの係を決める話になった。
先生が困ったように言う。
「どなたか、お手伝いしていただける方は……」
教室が、しん……と静まり返る。
みんな目をそらしている。
そのときだった。
「じゃあさ」
藤川さんがぱっと手を挙げた。
「真帆ちゃんと私でやろうか?」
突然名前を出されて、私はびっくりした。
「え?」
「真帆ちゃん、こういうの得意そうだし」
にこにこしながら言う藤川さん。
周りのママたちも安心したように言う。
「助かる〜」
「ありがとう!」
気づけば話はどんどん進んでいき、私はそのまま係になっていた。
帰り道。
藤川さんは悪びれる様子もなく笑った。
「ごめんね、いきなり名前出しちゃって」
「いや、大丈夫だけど……」
「でもさ、誰もやらない空気だったじゃん?」
「うん。だけど……」
「だったら、ちゃっちゃと決めた方が早いかなって」
あっけらかんと言う。
確かにその通りかもしれない。
でも──
「まあ、真帆ちゃんなら大丈夫でしょ」
軽く言われたその一言に、少しだけ引っかかった。
また別の日。
公園でママたちと話しているときのことだった。
「うち今さ、車買い替えようと思ってるんだよね」
藤川さんがそう言った。
「え〜いいなぁ」
「旦那にさ、『ファミリーカー欲しい』って言ったらさ」
藤川さんは笑いながら続ける。
「『まだ乗れるじゃん』って言うわけ」
周りのママたちが苦笑する。
すると藤川さんは、肩をすくめて言った。
「だからさ、『じゃあ子ども送迎全部あなたやってね』って言ったら」
「え?」
「次の日、ディーラー行くことになった」
藤川さんは得意げに笑った。
「男なんてさ、ちょっと追い込めば動くんだよ」
その言葉に、周りのママたちは
「藤川さんらしい〜!」
と笑っていた。
でも私はなぜか、その笑いにうまく混ざれなかった。
──なんだろう。
胸の奥に、小さな違和感が残る。
藤川さんは明るいし、頼れる人だ。
でも時々、相手をぐいっと押し切るような強さがある。
それが、少しだけ気になっていた。
──そして、今。
「旦那さん、建築士でしょ?」
藤川さんの言葉が、頭の中でよみがえる。
「この図面、ちょっと見てもらえない?」
私は歩きながら、ため息をついた。
もしかして、あの違和感は──ずっと前から、始まっていたのかもしれない。
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あとがき:小さな違和感の積み重ね
人との関係の中で感じる違和感は、突然生まれるものではなく、少しずつ積み重なっていくものかもしれません。藤川の言動は一つひとつ見れば些細なものですが、真帆の中では確実に引っかかりとして残っていました。「頼れる人」という印象の裏側にあったものとは何だったのか──。その正体が、次第に明らかになっていきます。次回、真帆はこの“お願い”にどう向き合うのかが描かれます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










