🔴【第1話から読む】建築士の夫に“タダで図面を見てほしい”→ママ友の【お願い】非常識?|他人の夫をタダ働きさせるママ友
夫との相談の末に藤川さんの依頼を断った真帆。しかしそれ以降、PTA内で距離を置かれるようになる。さらに陰口を言われていることを知り、動揺を隠せない。追い打ちをかけるように、息子・悠真の友人関係にも変化が生じ、問題は大人同士だけでは済まなくなっていく。
広がる違和感と陰口
藤川さんのお願いを断ってから、数日が経った。
最初は、何も変わらないと思っていた。
けれど──
「……あれ?」
PTAの集まりで、私は小さな違和感を覚えるようになった。
いつもなら、藤川さんが中心になって話を進めていた。
「じゃあこの担当、誰やる?」
「ここはこうした方がいいんじゃない?」
そんなふうに、周りに声をかけながらまとめていく。
でも最近は──
私にだけ、ほとんど話を振ってこない。
「この資料、どうする?」
誰かが聞くと、藤川さんはちらっと私を見てから言う。
「どうしようね」
そのまま別の人と話し始める。
まるで、私がそこにいないかのように。
「……」
気のせいかな?
そう思おうとした。
でも、やっぱりどこか空気が違う。
そんなある日のことだった。
会議が終わり、片付けをしていると、同じPTAのママが小声で話しかけてきた。
「ねえ、石田さん」
「はい?」
少し言いづらそうな顔をしている。
「大丈夫?」
「え?」
「最近さ……」
その人は周りをちらっと見てから言った。
「藤川さん、石田さんのこと、ちょっと悪く言ってるみたいで」
胸が、どきっとした。
「え……?」
「なんかさ」
そのママは困ったように続ける。
「『旦那が建築士だからって偉そう』とか」
私は思わず固まった。
「あと、『ちょっと図面見てほしいって頼んだだけなのに断られた』って」
「……」
「愚痴っぽく言ってて、なんとなく雰囲気もぎこちないから大丈夫かなって」
言葉が出なかった。
そんなふうに言われていたなんて。
「ごめんね、変なこと言って」
そのママは申し訳なさそうに言った。
「でも、石田さんは悪くないと思うよ」
「……ありがとうございます」
私はなんとか笑顔を作った。
でも、胸の奥がじんわり痛んでいた。
──偉そう。
そんなつもり、全然なかったのに。
子どもに及ぶ影響
家に帰ってからも、その言葉が頭から離れなかった。
ため息をつきながら夕飯の準備をしていると、悠真が帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえり」
でも、いつもより元気がない。
ランドセルを置くと、そのまま椅子に座り込んだ。
「どうしたの?」
私が聞くと、悠真は少し迷うような顔をした。
「……ねえ、お母さん」
「うん?」
「陽翔くんがさ」
その名前を聞いて、私は思わず手を止めた。
悠真がぽつりと言う。
「最近ね、僕と仲良くしない方がいいって言われたんだって」
「……え?」
耳を疑った。
「誰に?」
「お母さんに」
胸が、ぎゅっと締めつけられる。
「それでね」
悠真は困った顔をして続けた。
「仲良くできないって言われた。なんか、前みたいに話してくれなくなったの」
声が小さくなる。
「今日もさ、休み時間に話しかけたら……」
悠真は目を伏せた。
「ごめんって言われた」
私は何も言えなかった。
藤川さんが、陽翔くんに言ったんだろうか。
──「仲良くしない方がいい」
その言葉が頭の中で響く。
大人同士の問題だったはずなのに、それが子どもたちにまで影響しているなんて。
「……悠真」
私はそっと声をかけた。
「陽翔くん、何か理由言ってた?」
悠真は首を横に振る。
「分かんない」
そして、小さく言った。
「僕、何かしたのかな……?」
その言葉に、胸が痛くなった。
「そんなことないよ」
私は急いで言った。
「悠真は何も悪くない」
でも、心の中では分かっていた。
原因は親の問題だって。
夫の決意と新たな不安
その夜。
夕飯のあと、私は恒一に今日の出来事を話した。
PTAのこと。陰口のこと。そして、悠真の話。
話し終える頃には、胸の奥が重くなっていた。
「……ごめん」
思わず、そんな言葉が出る。
「私の断り方で怒らせたのかもしれない」
恒一は静かに聞いていた。
そして、ゆっくり口を開く。
「真帆」
「うん」
「それ、真帆のせいじゃないよ」
きっぱりと言った。
「でも」
恒一は少しだけ眉をひそめた。
「子どもにまで影響させるのは、さすがに良くない」
その声は、いつもより少し低かった。
私は驚いて顔を上げる。
恒一は穏やかな人だ。怒ったところを、ほとんど見たことがない。
でも今は、はっきりと不快そうな表情をしている。
正直、私も親同士の問題を子に波及させる藤川さんの行動は許せない。
「ちょっと、僕が話すよ」
「え?」
「そのママ友」
私は戸惑った。
「でも…」
「大丈夫、もうすぐ運動会だろ?そこで顔合わせるはずだから」
そして、ゆっくり続けた。
「僕も当事者だし、子どもの友達の親なんだから穏やかにやるから」
その言葉を聞いて、私は少しだけ胸が軽くなった。
でも同時に、別の不安も浮かぶ。
──本当に、話して大丈夫なんだろうか。
そう思いながら、私は小さくうなずいた。
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あとがき:“断ること”の代償と、その歪み
正しい判断をしたはずなのに、その結果として人間関係が崩れていく──そんな理不尽さを描いた回です。本来、大人同士で完結すべき問題が、子どもにまで影響してしまう構図は、強いストレスと共感を与えます。一方で、恒一の「子どもに影響させるのは良くない」という言葉が、物語の倫理的な軸を示しています。次回、当事者同士の対話がどのような結果をもたらすのか、見どころです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










