年末調整の期限はいつまで?
年末調整とは、1月から源泉徴収(給与天引き)で払ってきた所得税額と、年収が確定した時点で再計算した所得税額との過不足を精算する手続きです。
年末対象の対象になるのは、年末時点で特定の勤務先に所属している会社員や公務員、パートタイマーなど。たとえば自分で生命保険に入って保険料を払っている方は、生命保険料控除が適用されます。1年の途中で扶養する親族が増えた方は、年末調整のときに配偶者控除や扶養控除を新たに適用してもらうことで、払い過ぎた所得税が戻ってきます。
年末調整の時期に配布される書類に必要事項を記入して提出すれば、勤務先で手続きが完了します。わざわざ税務署へ行ったり確定申告をしたりしなくてもよいのが便利ですね。
では「年末調整の期限」はいつかというと、従業員側と会社側で異なります。
従業員にとっての期限
会社員やパートタイマーなど、雇われている側の立場からしたら、年末調整の期限=書類の提出期限でしょう。年末調整で配布される書類は以下の通りです。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の配偶者控除等控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
住宅ローン控除の手続きを年末調整で行いたい方は、税務署から送られてくる「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」という書類も使います。
書類の提出期限は勤務先によって変わります。勤務先によって書類を受理した後の事務手続きにかかる時間などが異なるからですが、実際には11月中旬から11月末のところが多いようです。
扶養している配偶者や親族がいたり、自分で保険に入っていたりすると、記入欄が多くて面倒なのも事実です。しかし払い過ぎた所得税を取り戻すには必要な手続きなので、勤務先で指定された提出期限はきちんと守りましょう。
会社にとっての期限
経理など会社で年末調整を担当する部署は、10月頃から準備を始めます。11月に入って年末調整書類を配り、11月半ばから月末にかけて回収した後、所得税を再計算します。それぞれの従業員がいくら還付・追納になるのか確定したら、多くの会社では12月の給料日にあわせて精算をします。
なお、法律上の最終期限は、源泉徴収票を従業員に配る翌年1月31日までとされています。年末調整書類に書いた内容に間違いや変更があったとしても、翌年1月31日までは「再年末調整」として手続きは可能です。
- 国税庁「No.2662 年末調整のしかた」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2662.htm,2018年10月19日最終閲覧)
- 国税庁「No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7411.htm,2018年10月19日最終閲覧)
- 国税庁「法第190条《年末調整》関係」(https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/32/01.htm,2018年10月19日最終閲覧)
- 国税庁「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm,2018年10月19日最終閲覧)
- 国税庁「[手続名]給与所得者の配偶者控除等の申告」(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_71.htm,2018年10月19日最終閲覧)
- 国税庁「[手続名]給与所得者の保険料控除の申告」(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_05.htm,2018年10月19日最終閲覧)
年末調整し忘れた控除があったら?
年末調整でうっかり所得控除を申請し忘れる場合もあるでしょう。たとえば次のようなケースが考えられます。
- なくしたと思った生命保険の控除証明書ハガキが見つかった:生命保険料控除
- 1年の途中で妻が退職して扶養に入った:配偶者控除もしくは配偶者特別控除
- 妻が育児休業をとって収入が減った:配偶者控除もしくは配偶者特別控除
- 離れて暮らす親に仕送りをした:扶養控除
- 休職中に社会保険料を自分で払っていたことを思い出した:社会保険料控除
- 家族分の社会保険料を代わりに払った:社会保険料控除
- 離婚して子供を引き取った:寡婦控除(寡夫控除)
年末調整の法律上の最終期限は翌年1月31日までとご説明しました。ただ会社側としては、従業員から再年末調整の依頼を受けた後、改めて所得税の精算手続きをし、給与支払報告書を作り直したりするなどの事務手続きが発生します。
従業員の立場からしても、年末調整がいったん済んだのに改めてお願いするのは精神的にもハードルが高いでしょう。
確定申告をすればOK
このような場合は、面倒ではありますが自分で確定申告をしましょう。払い過ぎた税金を取り戻すための確定申告(還付申告)は翌年1月から受け付けてもらえます。
会社員やパートタイマーなどの給与所得者が確定申告をしてはいけないという決まりはありません。年末調整という便利な仕組みがあるだけで、別に自分で所得税の精算をしてもよいのです。
また、直近の分だけでなく、過去の年末調整で申請し忘れた所得控除についても、過去5年分までなら還付申告が可能です。もう間に合わないとあきらめず、確定申告にチャレンジすることをおすすめします。
- 国税庁「平成30年版 給与所得者と年末調整(リーフレット)(平成30年9月)」(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/leaflet2018.pdf,2018年10月19日最終閲覧)
- 国税庁「No.2030 還付申告」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm,2018年10月19日最終閲覧)
年末調整書類は期限までにきちんと提出しましょう
年末調整は会社員やパートタイマーなどの給与所得者にとって、払い過ぎた所得税を取り戻すチャンスです。所定の書類に必要事項を正しく記入して、所得控除の適用漏れがないよう気を付けてください。
年末調整の法的な最終期限は翌年1月31日ですが、会社側としては従業員から書類を受け取った後、所得税の再計算をしたり書類を作成したりとさまざまな事務手続きを行います。会社で決められた提出期限は厳守しましょう。
なお、年末調整し忘れた所得控除に後から気づいたら、確定申告をするのが賢明です。払い過ぎた所得税を取り戻す還付申告なら5年間の猶予期間があります。