1. トップ
  2. 妊娠
  3. 妊娠中の病気・トラブル
  4. 妊娠中に注意すべき病気
  5. 【医療監修】妊娠中の子宮筋腫のリスク。分娩方法や産後の注意点

監修:清水なほみ

【医療監修】妊娠中の子宮筋腫のリスク。分娩方法や産後の注意点

婦人科系の疾患としてよく知られている子宮筋腫。妊娠が判明してから妊婦健診で子宮筋腫が見つかるということがあります。もし子宮筋腫が見つかった場合、妊娠中に治療はできるのか、出産には影響がないのかなど気になりますよね。妊娠中の子宮筋腫は経過観察していくことが基本とされていますが、下腹部痛などが生じている場合や、子宮以外の臓器を圧迫しているような状況であれば手術が検討されることもあります。

PIXTA

子宮筋腫を伴う妊娠のリスク

子宮筋腫は、女性にみられる良性の腫瘍のことを指します。高齢妊娠の増加や超音波技術の進歩により、子宮筋腫を伴いながら妊娠、分娩を迎える「子宮筋腫合併妊娠」の割合が増えています。

妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合、以下のような合併症のリスクがあります。

  • 切迫流産・早産
  • 逆子などの胎位異常
  • 前置胎盤
  • 常位胎盤早期剝離(じょういたいばんそうきはくり)
  • 羊水量の異常
  • 妊娠高血圧症候群
  • 前期破水

妊娠初期から中期にかけて子宮筋腫が大きくなると、痛みが出たり、早い段階から子宮収縮を引き起こしたりする可能性があります。また、妊娠後期になると胎児は頭を下にする頭位に落ち着くことが多いですが、子宮筋腫ができている場所によっては逆子などの胎位異常が起こる頻度が高くなります。

子宮筋腫があることでさまざまなリスクが高まる可能性がありますが、不安になりすぎず、気になったことは妊婦健診で確認するとよいでしょう。

【医療監修】切迫流産や切迫早産の治療薬ウテメリンとは?副作用と費用

関連記事:

【医療監修】切迫流産や切迫早産の治療薬ウテメリンとは?副作用と費用

切迫流産や切迫早産と診断された際に使うウテメリン。状態によって服用する…

【医療監修】羊水が少なくなる「羊水過少症」とは?治療法や胎児への影響

関連記事:

【医療監修】羊水が少なくなる「羊水過少症」とは?治療法や胎児への影響

妊娠中、子宮内の羊水が少なくなってしまうことを羊水過少と呼びますが、子…

出典元:
  • 井上裕美(監)「病気がみえるvol.10産科」P185(メディックメディア,2015年)
  • 遠藤俊子(編)「ハイリスク妊産褥婦・新生児へのケア」P73~76(日本看護協会出版会,2016年)
  • 産婦人科学会ガイドライン 産科編2017「日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会(編)」P317(日本産科婦人科学会事務局,2017年)
  • 佐野産婦人科医院「妊娠と子宮筋腫について」(http://www.sanolc.com/blog/2014/04/post-29-430658.html,2018年4月17日最終閲覧)

妊娠中に子宮筋腫を治療する方法

妊娠中 治療 PIXTA

妊娠中の子宮筋腫に対する治療は対症療法を行いながら経過観察することが基本です。筋腫による下腹部痛がある場合は、鎮痛剤が出されることがあります。

子宮筋腫部分だけを取り除く子宮筋腫核術(しきゅうきんしゅかくじゅつ)は術中に出血を起こしたり、流産率が上昇したりするなど、妊娠中の子宮に影響を及ぼす可能性があるため原則行いません。

しかし、筋腫による痛みや筋腫に茎ができてキノコ状になった有茎筋腫がある場合は、妊娠中でも子宮筋腫核出術によって筋腫を取り除くことがあります。帝王切開で出産した場合、産後の子宮の回復を考えて出産と併せて子宮筋腫核出術を行うこともあります。

出典元:

子宮筋腫がある場合の出産方法

帝王切開 PIXTA

妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合、筋腫のある位置や大きさによって慎重に出産方法を検討します。

子宮筋腫が小さければ経膣分娩できる可能性がありますが、筋腫の大きさや数、できている場所によっては予定帝王切開での出産となります。また、妊娠前に子宮筋腫核出術(しきゅうきんしゅかくしゅつじゅつ)を行っている場合も予定帝王切開による出産となるでしょう。

経膣分娩が可能と判断された場合でも、子宮筋腫の大きさや数によっては陣痛が弱くなる微弱陣痛になる可能性があるため、陣痛促進剤を使用することがあります。また、分娩の経過によっては緊急帝王切開に切り替わる可能性もあります。

帝王切開は高額療養費の給付対象になる?申請方法と注意点や助成金の種類

関連記事:

帝王切開は高額療養費の給付対象になる?申請方法と注意点や助成金の種類

出産する際には病院に入院したり検査を受けたり、これまでより医療費がかさ…

出典元:

出産後の注意点

産後 入院 PIXTA

出産後は子宮筋腫が子宮の収縮を妨げることがあるため、子宮の回復が遅れてしまう子宮復古不全になる可能性があります。子宮の収縮ができないと産後の出血量が増える弛緩出血(しかんしゅっけつ)が起こり、出血量が多い場合は輸血が必要になることもあります。

産後急激に子宮筋腫が大きくなることはありませんが、妊娠中に子宮に向かって流れていた血液が減少することで筋腫の組織が壊れる「筋腫変性」を起こす可能性があります。筋腫変性によって、子宮内感染や腹痛といった症状が出た場合は抗生剤の投与が必要です。

出典元:

無理のない妊娠生活を送りましょう

安静 妊娠中 PIXTA

子宮筋腫があることで切迫流産や切迫早産などの合併症を起こしやすくなります。子宮筋腫がある中での妊娠生活は、不安に思うことがあるかもしれませんが、子宮筋腫があっても妊娠継続は可能です。

子宮筋腫を伴う妊娠のリスクは人によって異なるため、不安なことがあった場合は妊婦健診時に医師に相談するようにしましょう。無理なく安心して妊娠生活を送ることができるとよいですね。

記事の監修

ポートサイド女性総合クリニック〜ビバリータ〜 院長

清水なほみ

通常の婦人科診療のみならず、最新の脳科学×心理学×医学を統合的に駆使した診療を行う婦人科医。日本で100名しか習得者がいない、トランスフォーメーショナルコーチのテクニックを学び、診療の現場においても、3年間で延べ6000人の患者に同テクニックを用いて診療を行っている。
中学時代のいじめや研修医時代のうつ経験から、「病は気から」を科学的に解明するための研鑽を積む。何気ない会話の中で患者に気付きを与え、片頭痛やイライラをあっさり「忘れさせる」診療には定評がある。5分で病気の「本当の原因」を見抜くため、患者からは「先生は占い師ですか!」と驚かれる。

おすすめ記事

「子宮筋腫」「妊娠中」 についてもっと詳しく知る

出典元一覧

本記事は必ずしも各読者の状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて、医師その他の専門家に相談するなどご自身の責任と判断により適切に対応くださいますようお願いいたします。なお、記事内の写真・動画は編集部にて撮影したもの、または掲載許可をいただいたものです。

カテゴリー一覧