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「土日も部活、育児との両立は無理」教員に聞いた、仕事と育児に関する本音

近頃問題となっているワンオペ育児。パパが育児に十分参加できないことが問題だといわれています。パパ自身の努力で早く帰宅できるようになる家庭がある一方で、職場環境からどうしても帰宅できず、土日も仕事をせざるを得ない場合もいるようです。長時間労働が問題となっている「教員」の職場環境についてまとめ、子供を持った教員の本音を聞きました。ワンオペ育児が問題となる今だからこそ、教員が堂々と育児をすることが必要です。

PIXTA

ワンオペ育児の原因に、子育てしにくい職場環境

育児や家事を1人でこなす「ワンオペ育児」。毎日休みなく働き続けるママの中には、毎晩倒れこむように寝ているという方がいるでしょう。

ワンオペ育児になる理由はいくつかありますが「夫の激務」もその一つでしょう。仕事で遅いとわかっていても、毎日降りかかってくる家事と育児に押しつぶされそうになることがありますよね。

働き者と言われる日本人の中には、仕事を頑張るパパの裏で、寂しさや孤独感を抱きながら頑張っているママがいます。

旦那が医師とか、全然帰ってこない仕事の方いますか?
毎日どのくらい会えますか?

長文です(>_<)
うちは帰りが0時頃朝は6時には出勤、飲み会も週に3回はあるし、当直もあります。
旦那が子供に会えるのはほんとうに短い時間です。
日曜日だけは6時ぐらいには帰ってるのでそこから娘が寝るまでの3時間と…
たまに娘が早く起きた時少しと…
旦那は夜中に呼び出しがあったりするので私と娘とは違う部屋で寝ています。
娘は夜泣き真っ最中で、1時間ぐらいで起きたりするので、私はそばにつきっきりです。
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旦那さんが仕事が忙しく、夜は帰ってくるの遅いし、休みの日は休日出勤とかざらだし…っていう方おられますか?これで、寂しいって思うのは普通ですか?仕事だからって理解はしているつもりだから、旦那にはあまり言わないけど、寂しいです。
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我が家は旦那が深夜1時過ぎに帰宅または泊まりで仕事していて、休みも月に2日くらいしからありません(T . T)

私も週5で働いていて、仕事に家事に育児にほとんど1人でこなしています。
ワーママの雑誌を見ても、朝は旦那が保育園に連れていくとか、帰りはばあばが迎えに行くとかで、羨ましくて、最近気持ちに余裕がありません。
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ワンオペ育児の問題点の1つはパパが育児に参加できないこと。しかしそれはパパの意識だけではなく、企業や社会全体として、子育てを優先しにくい職場環境が原因になっているかもしれません。

土日も休めない。育児に参加できない仕事「教員」

黒板 PIXTA

休日が少ない、休めないといわれている仕事の中に「教員」があります。OECDが行った、世界の教員の働き方を調査する「国際教員指導環境調査」によると、日本の教員が1週間のうちに働く時間は53.9時間。参加国の平均値である38.3時間に比べて約15時間も長いという結果になりました。

授業にかける時間は参加国平均と同程度であるものの、部活動などの課外活動にかける指導時間は日本が特に長く、事務業務、授業の計画・準備時間も長くなっています。

中学校の運動部「土日も部活」42.6%

野球部 PIXTA

授業だけではなく部活動を受け持つ教員は、通常の授業が終わってからも部活動に参加し夜まで付き添い、土日も関係なく練習に参加している場合があります。

スポーツ庁が行った「平成28年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によると、中学校の運動部で「休日は週に1日」と答えた部が54.2%、休日は設けていないとした部が22.4%にのぼりました。また、土日に休養日を設定していないとした部も42.6%という結果に。

中学校教諭が土日に部活動にかける時間の平均は2時間10分。10年前の平成18年(1時間6分)に比べ倍増しています。平日も授業の後に部活動に参加し、それから事務仕事。休日も部活動があっては育児に参加する余裕はないかもしれません。

出典元:

教員に聞いた「仕事と育児」の両立

パパ 仕事 PIXTA

実際に学校で教員として働き、部活指導にもあたっている先生は、教員の仕事と子育ての両立をどのように考えているのでしょうか。

先生にお話を聞くと、教員として授業や部活でしっかり指導したいと思う反面、子育てとの両立は厳しいという声や、周囲の理解あってこその育児だという声があがりました。2名の先生のコメントをご紹介します。

Kさん:本気で部活をやろうとしたら、育児をするのは「無理」

陸上部 PIXTA

「私は陸上部の顧問をしています。部活指導では、指導法の勉強をしたり、研修を受けたりする必要があります。合同練習や練習試合では、打ち合わせや大会の役員などもしなくてはいけません。大会では土日2日間、朝から晩まで拘束される場合があります。

本気で指導するなら、放課後や土日を部活に費やすしかなく、さらに教員としての通常業務をこなしながら、育児するのは無理です。現在は祖父母が子育てを手伝ってくれていますが、父親である私が子育てできない状況があることを、妻には申し訳なく思っています。

現在は育児をするため、練習を見に行く頻度を減らし、大会役員などの役割も受けていません。本当はもっと指導したいのですが、部活に注力するのはもう少し育児が落ち着いた後、妻に相談してからと考えています」

0歳と2歳のお子さんがいるKさん。子育てしたいという気持ちがありつつ、部活指導も本当はしっかりやりたいというジレンマがあるようです。

「仕事」としての部活指導をしっかり行おうとすれば、育児は「無理」。これは仕事上どうしても育児ができないパパたち共通のつらさかもしれません。

現在は部活をセーブすることで育児に関わるよう心掛けているそうですが、そもそも家庭に関わることが「無理」になるほどの仕事がある通常になるしくみに問題があるようにも思えます。

Nさん:周囲の理解を得て、育児をしている

パパ 赤ちゃん amana images

「私の場合は周囲の理解を得て、子供が誕生後の部活は他の顧問に任せています。子供が生まれてからは妻が育児に忙しく、私自身も家事に時間を使うことが増えました。子供が生まれるまではニュースや新聞を読んでいた朝の時間は、ゴミ出し、掃除、子供のおむつ替えの時間に変わり、部活動を行っていた時間は、自宅に早く帰宅して子供と触れ合う時間になりました。他の顧問や学校側の理解あってのことです。

妻とは家事をシェアし合い、夜泣きの対応も一緒に行っています。それでも日々の忙しさから、妻とのけんかや言い合いが増えました。それだけ2人とも、疲れているのだと思います。それでもお互いにほどよく我慢しつつ、言いたいことを言い合うことは貴重な時間です。妻と一緒に、今は子育てを頑張ろうと思っています」

職場に理解があり、現在は育児に重きを置いた生活を送っているというNさん。0歳のお子さんのパパです。子供が生まれる前は時間に余裕があり、家で仕事を行うことも当たり前だったといいます。現在では朝晩の家事を妻と一緒に行い、夜泣きも対応しているそうです。

部活は他の顧問が対応しているおかげで育児に前向きな生活を送れているNさんですが、子育ての大変さで、妻と言い合いになることがあるのだそう。

Nさんのようにパパが育児に関われることは理想的ですが、それには代わりに部活を見てくれる顧問が必要ですし、職場の理解も欠かせません。部活の制度そのものを変え、根本的に無理のない勤務制度が必要だと考えられます。

2017年4月から制度化「部活動指導員」

サッカー部 amana images

文部科学省は、2017年4月から学校教育法施行規則の一部を改正し、学校の外部から部活動を指導する「部活動指導員」を学校職員として扱うことを決めました。「学校職員」となることで、大会への引率や、正式な顧問として就任することが可能です。これにより、今まで部活指導によって放課後や土日に時間を取らざるを得なかった教員たちが休養できるようになるといわれています。

外部の人材が部活指導を担うことは、現在部活指導による長時間労働に悩んでいる教員たちにとっては大きな負担軽減になるでしょう。一方で、部活指導員の人件費をどのように支払っていくかという課題があるようです。すべての自治体、学校に必ず配置されるものではなく、導入するかどうかは自治体の判断に任せられています。

人件費問題はすぐに解決できるものではないかもしれませんが、現状の教員たちの部活指導による長時間労働を解消するため、浸透していってほしい制度です。

出典元:

「先生が子育てしている」という価値

教師 PIXTA

パパでもある教員が、子育てと仕事のバランスが取れるということは、教員個人の家庭がうまくいくだけではなく、その教員に指導される生徒たちにとっても、価値があることではないかと私は思います。

教員は子供たちにとって最も身近な大人。授業内容だけではなく、日々の会話での私生活に関する話も、子供にとっては新鮮で、未来の自分に重ねて考える子はいるでしょう。そのような存在の教員が「家に帰ると育児を頑張っている妻と子供がいて、自分も育児をしている」と伝えることは、子供たちが自然と「子育ては家族で協力して行うもの」と考えるきっかけになるのはないでしょうか。

部活指導員制度を含め、教員のみの負担にならない教育制度が整っていくとよいですね。また、教員のみならず、子育てをする父親が職場に堂々と受け入れられ「子育てを優先します」と胸を張れる世の中になることを願います。

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