皆さんは、災害に対する備えがありますか?
最近起きた大阪の地震を始め、生活をしていると豪雨や土砂災害などさまざまな自然災害に見舞われることがあります。皆さんの記憶にも何らかの災害に関する記憶があるかもしれませんね。
筆者も東北在住のため、東日本大震災や宮城県沖地震(昭和53年)の被災経験を持っています。
ライフラインの寸断などを考慮した備えが必要であることは、誰もが心にとどめていることではないでしょうか。しかし、現状ではどうなのでしょう。
株式会社ブライト・ウェイが運営する子育て・育児支援のポータルサイト「こそだて」では、会員を対象に「自然災害に対する意識調査」のアンケートを行いました。このサイトでは、定期的に同様のアンケートを行い、意識の経年変化を分析しています。
その結果、自然災害に対する意識の低下が浮き彫りになりました。
調査概要
- 集計期間:2018年3月2日~5月1日
- 実施方法:「こそだて」のアンケートページのフォームにて回答
- 集計総数:309人/男女比 8:92(男性24人、女性285人) ※中心年齢30歳前後
- 株式会社ブライト・ウェイ調べ
- NHK「千葉県東方沖 プレートが緩やかに動く 念のため地震に注意」2018年6月11日(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180611/k10011473201000.html,2018年6月12日最終閲覧)
年々気がかりになる、地震のこと
『日頃から何か自然災害を意識していますか?(複数回答)』という質問に対し、以下が上位3位までの回答になります。
- 1位:地震のことが気がかり 82.4%
- 2位:台風が気がかり 18.6%
- 3位:特に何も意識していない 14.7%
この割合からみると「意識が高い」と感じるかもしれませんが、このサイトでは、2010年、2012年、2016年、2017年にも同様の質問を行っています。
その結果と比較すると、1位の「地震」に対する結果は2012年に調査したときの90.9%という数値をピークに年々減少。2018年の結果である82.4%は少し低い結果となりました。なお、2010年の結果は75.3%という結果で、東日本大震災が起こった2011年を挟んで得られた2012年の結果です。年々、地震に対する意識の低下が起きていると言えるでしょう。
何も意識していない、という結果が気がかりです
3位の「特に何も意識していない」という結果は、2016年は10.3%、2017年は11.5%でした。昨年の結果と比較すれば、3ポイント以上「自然災害に対する意識はなくなった(気にしていない)」という方が増えています。
それだけ平穏な毎日を過ごせるようになったと解釈できるのですが、その一方で地震や台風、洪水といった災害がいつ起こるかわかりません。ちょっとした意識改革が必要かもしれませんね。
あなたは、これから起こるかもしれない災害に備えていますか?
ここからは、「災害に対する備え」と「家族で災害を話題にするか」という内容に分けて、アンケートの質問とその結果をまとめてまいります。皆さんはこの結果を読み、どのように感じるでしょうか。
このアンケート結果をきっかけに、ママやパパが「災害が起こったら?」についての話し合いをしてみるのもよいですね。
今、この瞬間に大地震が発生した場合、何をしたらよいかイメージできますか?
- 1位:ある程度イメージができるが、備えができていない 53.6%
- 2位:何もイメージできない 33.7%
- 3位:イメージもあり、準備もできている 12.7%
今、この瞬間に大地震が起こった場合何をしたらよいかイメージすることができますか?この質問に対する答えが上記の通りです。
実はこの結果、2016年と2017年に行ったアンケートの同じ質問に対する回答と割合もほぼ一致しています。「何をすべきか分かっているけれど、そのための備えがない」という方、「イメージできない」という方が8割以上を占めており、備えもシミュレーションもできていると答えた方は12%という結果です。
地震や台風のことが気がかりだけど、備えはしていないという方が半数を占める結果に。子供を抱えている筆者としては、アンケート結果として受けとめるにとどまらず、ぜひこの機会に予測や事前準備をしてもらえればと思いました。
自然災害に対して何か準備していますか?
- 1位:非常食・飲み物の常備 46.7%
- 2位:避難場所の確認 36.9%
- 3位:非常持ち出し袋の用意 35.6%
- 4位:特に何もしていない 26.8%
- 5位:家を補強・家具の固定 20.6%
備蓄をされている方の中では、非常食や飲み物を常備されている方や、避難場所の確認をされている方が多いという結果がでました。
しかし、4位の「特に何もしていない」という結果に着目してみましょう。ここだけ切り出してみると「4位という結果は思ったより低い」と感じる方もいるかもしれませんが、2016年と2017年のアンケート結果に比べると回答率が高まっていました。
それと同時に「何らかの形で準備をしている(4位以外)」の回答率は下がっているという結果に。準備をしていない方の割合が増えてきていることがうかがえます。
災害に備えて準備している物はありますか?
- 1位:懐中電灯 67.6%
- 2位:水 58.1%
- 3位:マスク 56.8%
- 4位:電池 50.0%
- 5位:軍手 49.3%
災害に備えて準備しているものがあるか複数回答で質問をしたところ、懐中電灯や水、電池という声が高い半面、「マスク」「軍手」という回答が高く寄せられていました。
ライフラインを支える「明かり」「飲料水」「電源」はカバーできていますが、「食べ物」「情報収集」に対する備えがあることを回答している方が少ないという結果に。
また、そのほかのアイテムは「長期保存可能な食糧(6位)」「紙おむつやミルクなど赤ちゃんの物(7位)」「ラジオ(9位)」「カセットコンロ(8位)」「簡易トイレ(13位)」という結果でした。
子供向けの食料や加熱調理できるツール、スマホやタブレット以外の情報収集ツールも準備する必要がありそうです。
準備していないけれど、必要だと思う物はどれですか?
- 1位:簡易トイレ 47.2%
- 2位:長期保存できる食料 44.5%
- 3位:水 38.5%
先に記した回答とリンクできる結果です。順位が低い簡易トイレや長期保存可能な食料品などは、備えておくべきであることを理解していることが分かりました。
このような結果につながる理由として「備蓄品にしては高額」「何日分準備すればよいのか分からない」といったものがあるのかもしれません。
筆者の家での備蓄事情を紹介します
筆者の家では、アルファ米(水をそそいで時間を置けばご飯ができるもの)2日分と飲料水(普段使いのものを多めにストック)、缶詰式で長期保存用のクラッカーなどの備蓄はありますが、それでもまた足りないと感じています。
しかしアルファ米は1袋300円~500円程ですので、それを日数分×家族人数分となると、出費も大きく最低限の備蓄となってしまいました。
自然災害を想定し、家族で話し合いやシミュレーションなどをした事がありますか?
- 1位:特に何もしていない 52.4%
- 2位:災害発生時振り返って話し合う 31.6%
- 3位:定期的に備品のチェックなどをする 13.4%
やはり、「そのときになってみないとなかなか動けない」ということが分かります。筆者が住む地域では、子供の登下校時に災害が起こったら、ということをシミュレーションして子供がどのように行動を取るべきか、そのとき保護者は何をしているかを登録しなければいけません。
避難所などを先に話し合っておくことで、家族が一緒に行動できないときの待ち合わせができるよう、話し合いが求められています。また学校とタッグを組み子供に教えることで、子供自身も「どう行動するべきか」を理解していきます。
家族が離れているときに災害が発生した場合、連絡方法など考えていますか?
- 1位:集合場所・連絡場所を決めている 30.0%
- 2位:決めていない・考えていない 24.8%
- 3位:電話(固定・携帯)に頼る 17.9%
- 4位:E-mail・SNS・LINEなどNETで 17.9%
- 5位:災害時専用伝言ダイアルを確認している 8.5%
東日本大震災やそれ以降に起こった自然災害による被災地では、連絡手段確保の重要性を痛感しています。家族の安否はとても気になりますよね。
筆者からは、東日本大震災の経験から3位以降に挙げられている固定電話、スマホや携帯、インターネット以外の連絡手段や集合場所を決めておくことをおすすめします。
2011.3.11の筆者の家
東日本大震災がおこった日、携帯電話の基地局が何らかのトラブルが発生し、わが家の携帯電話は地震発生直後に不通となりました。停電もしてしまい、電話交換所も打撃を受けたからか固定電話も通じませんでした。テレビはもちろん、ネットなどもつながりません。
被災した当事者だからかもしれませんが、一挙に情報弱者になってしまいました。筆者が住む町に津波が来て181名もの命が失われたことは、その数日後、電気が復旧してから分かりました。
震災当日の夜は、ラジオも放送局側が出力を抑えて発信していたことと、送信所が津波の被害に遭ったため、わが家の小さなラジオからは民放ラジオ局の受信ができませんでした。NHKはかろうじて受信できましたが、新しい情報が放送局に入らないため同じことばかりループで放送するしかなかったようです。
公衆電話は使えましたが、身内の誰とも電話がつながることはありませんでした。地震の2日後、実父の勤務先と連絡が取れ、沿岸部に住む実家の両親の安否や被災状況が分かりました。蓄電池で動く公衆電話ですので、その日の夕方には電池がなくなり公衆電話は使えなくなっていました。
電話が通じなかったので、「171・災害時専用伝言ダイアル」すら用をなさなかったのです。
避難場所は確認していますか?
- 1位:一時避難所だけ確認している 45.1%
- 2位:一時・広域避難場所両方確認している 23.9%
- 3位:避難場所を確認していない 17.6%
- 4位: 広域避難場所だけ確認している 13.4%
いざというときのため、事前に確認しておくことはとても大切。しっかりと家族全員で共有しておけば、二次被害・三次被害を防ぐことにもつながります。
「家にいられない場合は一時避難所へ行くこと」「必ず迎えに行くから、子供は学校にとどまること」などというように、情報を家族で共有することへ発展させていきましょう。
番外:いつ起こるか分からない天災よりも…不安なのは今の治安
このアンケートの最後に、時事問題に対する意識調査も付加されていました。
「自然災害も怖いですが、幼い子が犯罪に巻き込まれるニュースも後を絶ちません。あなたにとって今、防犯と防災、どちらの優先順位が高いですか?」
という質問を行った結果も発表されています。子供にまつわる悲しいニュースが続く中、やはり治安や防犯に関する関心が高いことが伺えました。
- 1位:どちらかといえば防犯 49.4%
- 2位:明らかに防犯 27.3%
- 3位:どちらかといえば防災 16.6%
- 4位:明らかに防災 4.9%
- 5位:どちらも意識しない 1.9%
ただし、防災意識も向上しています
2017年度の同じ質問に対する結果と比較すると、順位は変わりませんでしたが、回答率をみると「防犯よりも防災」に意識が変化していることが分かりました。
防犯面に関しては、すでに学校や行政、地域が動き出している一方で、防災に関しては事前準備をしたり意識を持ったり、自分たちの行動が求められる部分も多いからです。この結果を見ると、このところのニュースなどが反映された結果であることも伝わりました。
家族で「防災」について話し合う時間を作ってみることを提案します
「備え」に対することもそうですが、「家族が無事でいるための行動」に関して家族での話し合いが足りていない、ということがアンケート結果から分かりました。
突然の災害の中で、「パパに会えない」「子供に会えない」という状況で何日も過ごすのはとてもつらいことです。特に判断力が乏しい子供が「どうしたらよいか分からない」とパニックに陥らないように何度でもきちんと話し合いましょう。
いざというときに慌てない程度の備えが必要です。保育所・幼稚園に通っている小さな子供の場合、預け先との連携がきちんとできるよう手配を取りましょう。