男女の不妊症の割合
不妊の原因は女性側にあるものだと考えられていた時期は、不妊検査を受けるのも女性がほとんどでした。しかし、不妊症は女性側だけでなく男性側にも原因が生じていることがあり、半数近くが男性不妊によるものです。
日本受精着床学会が不妊治療患者を対象に行ったアンケート調査によると、男女の不妊の割合は以下で示したグラフの通りです。
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子供を望んでいても妊娠につながらず、不妊症かもしれないと思ったら、まずは夫婦ともに検査を受けることが大切です。互いに検査を受けることによって、不妊の原因が明確になり適切な治療方法を選択することができます。
特に男性は不妊治療に対してハードルが高いと感じる人がいるかもしれませんが、男性の検査項目は女性に比べて少なく受ける時期に制限もありません。
もしパートナーが検査に難色を示したら、少しでも不安を取りのぞけるようプライバシーに配慮された病院があることや検査にかかる時間などを事前に伝えてみるとよいでしょう。診察や検査について少しイメージできるだけでも、不妊治療に対しての考え方が変わるかもしれません。
- 浅田レディースクリニック「不妊症の原因」(https://ivf-asada.jp/hunin/huninkiso02.html,2019年1月28日最終閲覧)
- 日本産科婦人科学会「不妊症」(http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15,2019年1月28日最終閲覧)
- 日本産婦人科医会「5.不妊の原因と検査」(http://www.jaog.or.jp/lecture/5-不妊の原因と検査/,2019年2月1日最終閲覧)
女性に不妊症の原因がある場合
不妊と年齢は密接な関わりがあります。女性の年齢が上昇すればするほど妊娠率は低下傾向にあり、個人差はありますが30歳女性の妊娠率は約23%、35歳になると約18%、40歳では約10%となり、特に35歳以降からは急激に妊娠率が低下していきます。
また女性の不妊は、加齢だけでなく排卵に問題がある場合や子宮内膜症などの婦人科系疾患が原因となっていることもあります。
排卵因子
排卵因子による不妊は、ホルモンの分泌が乱れることによって排卵が起こらなくなってしまうことが原因です。通常は、生理が始まる約14日前に排卵が起こり、妊娠が成立しなければ子宮内膜がはがれ落ちて生理がきますが、極端に生理周期が短い、もしくは長い生理不順の場合、生理がきていても排卵しないことがあります。
排卵が起こらない原因は、卵胞刺激ホルモンや黄体化ホルモンといった排卵を起こす作用のあるホルモンの分泌が乱れることや、卵巣機能の低下が考えられます。
排卵の有無は基礎体温を測ることである程度予測することができます。通常基礎体温表をつけると、排卵日を境に高温相と低温相の二相になりますが、無排卵の場合は二相に分かれません。病院では、超音波検査やホルモン検査によって排卵の有無を調べます。
卵管因子
卵管は卵巣と子宮をつなぐ重要な役割を果たしていますが、卵管の炎症によって起こる卵管炎や、卵管周囲の癒着を起こす子宮内膜症やクラミジア感染などが原因で詰まりが生じてしまうことがあります。
卵管の幅が狭くなる卵管狭窄(らんかんきょうさく)や、完全につまってしまう卵管閉塞(らんかんへいそく)が起こることで、精子と卵子が出会えず受精できなかったり、受精できても受精卵が子宮まで移動できなかったりします。
卵管は、左右1本ずつあるためどちらか1本が正常であれば自然妊娠も可能な場合があります。
子宮因子
卵管内で受精した受精卵は、細胞分裂を繰り返しながら子宮に運ばれますが、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、先天的な子宮の形態異常があると受精卵の着床を妨げてしまうため妊娠が成立しません。
子宮筋腫や子宮内膜ポリープは、超音波検査や子宮鏡検査、MRIなどの検査で診断できますが、子宮内にトラブルがあると着床しにくくなるだけでなく、胎児の発育を妨げたり流産の原因となったりする可能性もあります。
妊娠を希望した段階で、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど子宮の疾患が見つかっている場合は、早めに治療をしておきましょう。
頸管因子
排卵が近づくと透明で粘度の高い頸管粘液が増加し、子宮頸管内は精子が通りやすい状態に変化します。しかし、頸管粘液の分泌量が少ないと、精子は子宮内に入りづらくなるため妊娠する可能性が下がり不妊症の原因になります。
免疫因子
体に何らかの免疫異常が生じると防御反応が起こり、本来有害物質ではないはずの精子を異物として認識してしまう抗精子抗体(こうせいしこうたい)を作り出すことがあります。
抗精子抗体が頸管粘液の中にも分泌されると、良質な精子であっても通過を妨げてしまい、受精の可能性が低くなります。
原因不明不妊
不妊症の検査を行っても不妊の原因が見つからないことを原因不明不妊と呼びます。不妊の11%が原因不明とされており、検査では見つけることができない原因が潜んでいることもあります。
原因不明不妊と診断された場合は、まずタイミング法や排卵誘発剤を使った治療、人工授精などの一般不妊治療を行います。半年~1年以上経っても妊娠しない場合は、体外受精にステップアップすることを考慮します。
- 日本産科婦人科学会「不妊症」(http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15,2019年1月28日最終閲覧)
- 日本生殖医学会「一般のみなさまへ」(http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa04.html,2019年1月28日最終閲覧)
- 神奈川県「妊娠・出産の正しい知識(不妊のこと03.女性の原因)」(http://www.okanouenooisyasan.com/knowledge/infertility/03/,2019年1月28日最終閲覧)
- 大阪府不妊専門相談センター「免疫因子」(http://www.dawn-ogef.jp/funin-osaka/info-4_09.html,2019年1月28日最終閲覧)
- 塩谷雅英(監)「ふたりで取り組む赤ちゃんが欲しい人の本」P71(西東社,2017年)
男性に不妊症の原因がある場合
男性不妊の原因は、主に「造精機能障害」、「性機能障害」、「精路通過障害」の三つです。
造精機能障害(ぞうせいきのうしょうがい)
造精機能障害は、精巣内で健康な精子を十分に作ることができない状態のことを指します。男性の不妊の約9割が造精機能障害によるのであるとされており、精液中に精子がない「無精子症」、精子の数が少ない「乏精子症」、精子の運動率があまりよくない「精子無力症」、奇形の精子が多い「精子奇形症」に分類されています。
精子の状態は体調や環境によっても異なるため、診断されるまでには精液検査を何度が繰り返し行うこともあります。
性機能障害
子供を望んでいても性行為自体がうまくいかないことを性機能障害といい、性行為の際に勃起しないもしくは持続しない「勃起障害」と、射精がうまくできない「射精障害」の二つに分類されています。
性機能障害が起こる原因には、精神的なものと身体的なものがあり性体験に対してのプレッシャーやストレスが引き金になることもあります。
症状が軽い場合は薬物療法を試みますが、特に精神的な理由が原因となっている場合は、一度専門のカウンセラーによるカウンセリングを受けてみるとよいでしょう。
精路通過障害
精巣で精子が作られているにも関わらず、精子の通り道となる精路に詰まりがあって精子がスムーズに通れない状態のことを精路通過障害といいます。
生まれつき精管に問題がある場合や、クラミジアなど感染症が原因で起こる精巣上体炎によって炎症部分に詰まりが生じてしまうことで起こります。
- 徐クリニック「男性不妊の原因」(https://www.joclinic.jp/faq/cause/cat31/post_20.html,2019年1月28日最終閲覧)
- 日本生殖医学会「一般のみなさまへ」(http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa04.html,2019年1月28日最終閲覧)
- 神奈川県「妊娠・出産の正しい知識(不妊のこと04.男性の原因)」(http://www.okanouenooisyasan.com/knowledge/infertility/04/#contents,2019年1月28日最終閲覧)
不妊にはさまざまな原因があります
不妊の原因は、卵巣機能や生殖機能の低下など女性の年齢上昇によるものから、ストレス、セックスレス、男性側のものなど複数の原因があり、それらの原因が複雑に絡み合った結果、不妊症につながるケースが多いです。
まずは専門家による診断で、不妊症の原因を正しく知ることから始めるのが大切です。不妊症かもしれないと思った段階で、夫婦ともに不妊検査を受けてみるとよいかもしれませんね。
※この記事の情報は2019年2月22日現在のものとなります。最新の情報は医療機関へ受診の上、医師の診断に従ってください。