多胎児ママの大変さの原因は「人手不足」と「孤独感」
子供の命に日々向き合っているママたちは、日々大きな責任を背負って生活していることでしょう。厚労省で行われた記者会見に出席した双子ママの角田さんは「産後1年間の記憶がない」と話し、2人の子供の命に日々向き合うことが肉体的にも精神的にも大変だったと語りました。
©多胎育児のサポートを考える会
ママリの皆さんはご存知の通り、1人の子供を育てるだけでも十分大変です。
今回の調査が明らかにしたのは、多胎育児当事者の93.2%が「気持ちがふさぎ込んだり、落ち込んだり、子どもに対してネガティブな感情を持ったことがある(あった)」という事実。ただ、この感情は、多胎育児当事者ではなくても、共感できるママは多いのではないでしょうか。
では、多胎児を育てるママ特有の悩みはどこにあるのでしょうか。
「人手不足」が致命的、多胎育児の大変さは想像できない
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生後0ヶ月の赤ちゃんが複数いるママの日常は、1日におむつ替え28回、授乳は18回、沐浴も人数分。ママが寝る時間なんてありませんよね。いったい多胎児のママは、どのタイミングで休息をとるのでしょうか。
双子ママの角田さんが記者会見で話していた救いは、こういった日々から開放される光が見えた保育園への入園通知でした。ママとしての役割を放棄するわけではなく、自分が1人の人間として正常な状態であり続けるために、時間が必要だったと…。そして、保育園がその時間を作ってくれたと話しました。
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では、保育園に預けた後はどうでしょう。記者会見に参加した三つ子のママの中村さんは、3人分のおむつの持ち帰りが大変だったと話します。時には、4〜5キロの使用済みおむつを三つ子とともに持ち帰ることもあったとのこと。毎週金曜日には、3人分の布団の持ち帰りなどは、特に負担が多かったようです。
同じ月齢の子供を複数同時に育てることの大変さを想像するのはなかなか難しいものですが、日々の育児はもちろん、保育園の送り迎えなどでも、1人でも多く近くに大人が必要な状態が続くようです。パパが仕事からもっと早く帰って来てくれたら、保育園のお迎えだけでも誰かに頼れたら、と思ったことは多かったでしょう。
制限だらけの外出が「孤独感」に拍車をかける
©多胎育児のサポートを考える会
記者会見で発表された調査結果によると、回答者の約9割が多胎育児中に「辛い」と感じた場面は「外出・移動」だと回答。同時に2人を見る必要があるため、例え公園や児童館のような親子連れに対応した公共施設への外出でもママ1人では難しいという声がありました。
特に電車やバス、タクシーといった公共交通機関の利用には困難が多く、外出機会が減り、結果的にママの「孤独感」に拍車をかけているのが実態です。
調査の中では、目的地の駅にエレベーターがなく、駅から出られなくて帰宅した、という声や、どの車両に車椅子・ベビーカースペースがあるか明確に示されていないので横型ベビーカーでは電車に乗れないなどといった声が集まりました。特に横型ベビーカーの場合、電車に乗ってからの車両間の移動は難しく、車両内に人が多い場合などは、気を使うことに疲れてしまうママも多いのではないでしょうか。
バスの利用に関しても同様で、乗車拒否はもちろん、「ベビーカーを畳むことを条件にされると、荷物と子供2人とベビーカー全部を抱えることはできず、諦めてしまう」という声も。双子ベビーカー特有の難しさだけでなく、持ち歩く必要のある荷物の多さも影響しているようです。
個別の対応を期待するタクシーの利用においても、「0歳児2人を抱えてチャイルドシートのないタクシー乗車は危険」という声や、「双子ベビーカーを乗せられない車両には乗れない」など、多胎育児中ならではの悩みが見受けられました。
肉体的にも、精神的にも利用する難易度が高いと、利用を諦め、外出をすることを諦めてしまいますよね。そしてママが1人で子供に向き合う時間が増え、さらに孤立してしまうという悪循環がうまれるのです。
国・都道府県・市区町村に求めること
調査から出てきた多胎児の保護者が向き合う課題から、フローレンスと多胎育児のサポートを考える会は、国・都道府県・市区町村に求めたい内容を下記4点にまとめ、東京都議会公明党、東京都福祉保健局にアンケートとともに、要望書を提出しました。
- 保育の必要性認定基準に「多胎児を育てている家庭」の追加/多胎加点の全国化
- 公的な居宅訪問型の一時預かりサービスの制度拡大/民間ベビーシッター利用への補助
- バス乗車ルールの改善、タクシー利用の補助
- 行政が多胎妊婦情報を把握した時点で行政側から情報と具体的支援を届ける
また、ツイッターでは「#助けて多胎育児」のハッシュタグでたくさんの関係者が意見交換をされており、東京都だけでなく、日本全国に多胎育児に向き合うママを支える活動が広がるといいですね。毎年100人に1人が多胎児ママになる時代、社会の理解力が広がるとよいですね。