漢方薬は継続して長期間服用しなければならないというイメージがある方もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません。例えば風邪をひいたとき、その人の症状に合った漢方薬を服用すれば15〜30分くらいで頭痛等がやわらぐこともあります。
その他の授乳中のトラブルに処方される漢方の多くは、通常は2〜3週間は続けることで効果を感じる方が多いです。また、慢性的な冷え性や体質改善には数か月続けることで効果を実感する場合もあります。
- 慶應義塾大学医学部漢方医学センター「漢方薬は長く飲まないと効きませんか?」(http://www.keio-kampo.jp/ja_1/page06.html#answer8,2020年10月21日最終閲覧)
- 嶋田豊(監)「漢方薬辞典 改訂版」40(主婦と生活社,2016)
複数の漢方を服用してもOK?
自己判断で複数の漢方薬を服用するのはやめましょう。漢方薬は複数の生薬で構成されているため、複数の漢方薬を服用すると生薬の成分が重複する可能性があります。
例えば「甘草(かんぞう)」という生薬はさまざまな漢方薬に含まれている成分で、漢方薬を複数飲むことで甘草の摂取量が多くなってしまうため副作用が起こりやすくなります。個人の体質や他の併用薬などの要素も関係するため複数の漢方薬を服用する場合は必ずかかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。
- 嶋田豊(監)「漢方薬辞典 改訂版」40-41(主婦と生活社,2016)
- 田中良子(監)「薬効別服薬指導マニュアル」995(じほう,2020)
漢方の副作用
先程もご紹介したように、甘草のように成分によっては副作用に注意する必要があります。甘草による副作用としては、手足に力が入らない、高血圧、筋肉痛、むくみなどを症状として発見されることが多いです。
他には、成分が合わないと皮膚のかゆみなどを生じることがあります。漢方薬を服用して、皮膚のかゆみや発しんが出るなどいつもと違った症状を感じる時は服用をすぐに中止し、かかりつけ医や薬剤師に必ず報告しましょう。
- 嶋田豊(監)「漢方薬辞典 改訂版」40-41(主婦と生活社,2016)
- 田中良子(監)「薬効別服薬指導マニュアル」994,995(じほう,2020)
授乳中でも漢方薬は飲める!ただし医師や薬剤師に相談を
産後にはさまざまな不調が出ることがあります。産後の不調の原因は体力低下や血の不足など、漢方薬で補える場合も多くあり、適切に漢方薬を取り入れることで、授乳中の不調を解消する助けになります。
ただし、授乳中にどの漢方薬なら飲んでいいのか、また自分にどの漢方薬が合っているのかを確認するためにも、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
執筆:薬剤師 道川佳苗
薬剤師、調理師。明治薬科大学卒業後、調剤併設型ドラッグストアにて従事し服薬指導をする中、病気の予防、健康維持には食育が大切であると感じ、調理技術、栄養学を学ぶため服部栄養専門学校に入学し卒業する。その後、大手料理教室講師、漢方クリニックの門前薬局で煎じ薬の調剤、漢方相談、服薬指導などを経験。現在は今までの経験を活かし web上で健康相談や薬膳や漢方に関する情報発信をしている。