食べ物の好き嫌いが起こる原因は?
子どもは野菜や魚など、食べ物の好き嫌いをすることはよくありますよね?食べ物の好き嫌いを克服するための参考として、まずは好き嫌いが起きる原因を見ていきましょう。
食べ物にネガティブな思い出があるから
食べ物の好き嫌いは味だけでなく、心理的な「ネガティブさ」から起こることもありますよ。日本心理学会では、以下のように説明されています。
ネガティビィティ・バイアスという現象が知られています。好ましい情報よりも好ましくない情報のほうがより大きなウェイトをもって処理されるというものです。食物の好き嫌いについてもいえることで,食物を嫌いにさせることは比較的容易ですが,逆に好きにさせることは簡単ではありません。どんなにラーメンを好きな人であっても,ラーメンを食べている最中にゴキブリの羽を発見したとするならば,とたんにラーメンを嫌いになるでしょう。
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つまり、「一度食べてみたらおいしくなかった」「食べたくないのに無理に食べさせられた」など、子どもの嫌な経験が食べ物と結びついて好き嫌いが発生してしまうこともあります。
もし「以前は食べてくれたのに2度目は食べてくれない…」という食べ物があれば、以前のネガティブな思いが残っていることが好き嫌いの原因かもしれません。「牡蠣を食べておなかを壊してから牡蠣が嫌いになった」という感覚と同じですね。
子どもは味覚に対して敏感だから
子どもは大人より味覚が敏感なので、食べ物に含まれるほんのわずかな苦味や酸味が感じられていることも好き嫌いの原因となります。
宮崎県健康づくり協会が公表している「食べ物の好き嫌いどうしたらいいの?」という資料によると、味を感じるセンサーである味蕾(みらい)が、20歳をピークに減少していくため、大人よりも子どものほうが味覚に対して敏感であると記載されています。
なんと生まれたばかりの子どもの味蕾の数は、大人の1.3倍もあるそうです。
つまり子どもは大人には感じられない味も感じ取っているということ。たとえばママパパが「甘い」と感じるものでも、子どもにとっては「苦い」食べ物なのかもしれません。
「苦味」「酸味」を本能的に避けるから
子どもは味に敏感な上、甘み、塩味、うま味、酸味、苦味の5つの種類の中で本能的に酸味や苦味を避けます。これは酸味や苦味が生き物にとって、本能的に「自分を守るために避けるべき味覚」だから。
自然界では「酸味」は「腐敗した味」であり、「苦味」は「有害な味」を示します。
子どもはまだ生き物としての本能的な味覚をもっているので、酸味や苦味を感じる食べ物を嫌う傾向があるのですね。たとえば野菜が嫌いな子どもは、野菜の苦味を本能的に嫌うのでしょう。
さらに大人よりも味覚が敏感なのですから、酸味や苦味の強い食べ物を嫌いになるのも仕方がないことかもしれませんね。
- 宮崎県健康づくり協会「食べ物の好き嫌いどうしたらいいの?」(https://www.miyakenkou.or.jp/file/sante/sante7402.pdf,2022年8月16日最終閲覧)
- 農畜産業振興機構「子どもの野菜嫌いと食育」(https://www.alic.go.jp/content/001169939.pdf,2022年8月16日最終閲覧)
家族の好き嫌いに悩むママの体験談
子どもを含め家族の好き嫌いに悩むママはとても多いもの。他のママたちはどのような「家族の好き嫌い体験」をしているのでしょうか。実際の体験談を見ると、役立つ情報も見つかりました。
栄養バランスを意識して食べられるものを出す
子どもに好き嫌いが多いと、嫌いな食べ物でも食べてほしいと「嫌いな食べ物を食べる方法」を探しがち。しかし、好きな食べ物で必要な栄養素を摂取できるようにしているママもいました。
煮た葉物野菜、果物、ポテト、
わかめ、めかぶ、もずく、
ヨーグルト、きなこ、牛乳
上記しか食べません…
…中略…
エネルギー(米、パン、うどん)
ミネラル(野菜、果物、海藻)
たんぱく質(肉、魚、たまご、大豆、牛乳)
を意識して、食べられる物を与えています。
食べられる食べ物が少なくても、食べられるものだけで食事を作って、必要な栄養がとれていればそれで良いと考えるとストレスが減るかもしれません。
親の偏食が、子どもの好き嫌いに影響するのでは…
ママたちの中には、子どもだけでなくパパの好き嫌いが多いという方も…。パパにあわせていたら子どもの栄養が偏るので、ママとしては一番頭を悩ませるパターンではないでしょうか。
野菜は多分10種類も食べれる物ないです。
魚はお刺身と焼き魚なら鮭くらいしか食べれる物がないです。
…中略…
今後子供と夕食を共にするなら子供には好き嫌いなく食べてもらいたいし、色々作って出すつもりです。
子どもとパパが食べられるものを探すとなると、本当に食事の内容が限られてきてしまいますね。このお悩みには「好きなものを買ってきて食べてもらう」「食材の形がわからないように煮込んでカレーやシチューにしている」というコメントが寄せられていました。
パパが好き嫌いしているのを見ると、子どもも好き嫌いをしてしまうかもしれません。難しい問題ですが、子どもが小さなときだけでも何かしらの対応を考える必要があるかもしれません。
子どもが好き嫌いでご飯を食べないときに作り直す?
食べ物の好き嫌いが多い子どもだと、ご飯を全然食べてくれなかった…という日もあるかもしれません。そのときに「作り直したほうが良いのかな?」と悩んでいる先輩ママもいらっしゃいましたよ。
ちなみにうちは食べなければ、作り直したり違うメニューを出したりすることはしません。
厳しいのかな?と気になり質問しました。
…中略…
この質問に回答されたママたちの答えは「作り直さない」というものがほとんどでした。特に子どもの体調が悪いときなどは、食べないと不安になるかもしれません。
そのようなときには、果物やデザートを先に食べてからご飯にしたり、調味料で少し味付けを変えてあげたり…という方法がおすすめだそうですよ。
好き嫌いが多くて毎日の献立に悩む!
家族に好き嫌いが多いと、「献立に悩む」というのはママの正直な意見ですよね…。毎日考えなければいけない献立。けれど食べてもらえる食べ物は限られているという状態であれば、何を作れば良いのかわからなくなってしまうでしょう。
中には1か月近く同じ献立しか食べてくれなかったというママも…。献立は同じになっても、スムージーで野菜を摂らせようとしたり、とりあえず好きなものだけでも食べさせようとしたり、皆さんさまざまな工夫をされているようです。
食べ物の好き嫌いを克服するにはどう対応する?
どうしても食べられない食べ物がある人もいますが、好き嫌いは克服できる場合もあります。子どもの好き嫌いを克服したい、もっといろんな食べ物を食べてほしいと願っているママは、嫌いな食べ物を食べる方法として次のような方法を試してみましょう。
子どもに調理をお手伝いしてもらう
食わず嫌いなどで嫌いな食べ物を食べる方法として「調理を手伝ってもらう」のがおすすめ。
盛り付ける、材料をかき混ぜるなど簡単なお手伝いでも、「自分が作った」と思えば興味を持ち、「食べたい」と思ってくれやすくなります。
食べ物への関心が高まれば、「もっといろんなものを食べてみたい」と好き嫌いが減る可能性が高まりますよ。
「嫌いな食べ物」だと意識させない
にんじんが嫌いな子どもには「今日はにんじん食べられるかな?」と、食事を出すときに言ってしまいがちですよね?しかし、嫌いな食べ物を食べる方法として正しいのは「何も言わずにご飯を出す」という方法です。
好き嫌いの多い子どもにありがちなことが、嫌いな食べ物を出したらすんなりと食べてしまったということ。絶対に食べてくれなかった食べ物でも、しばらくすると嫌いだったことを忘れたかのように食べてくれることがあります。
しかし、「今日はにんじん食べられるかな?」と言われることで、子どもの中で「にんじんが嫌い」という意識が蘇ってしまうのですね。子どもの好き嫌いは年齢により変わることが多いので、嫌いな食べ物は時間をおいて、何も言わずに食卓に出してみてください。
まずはひと口だけ口に入れてみる
嫌いな食べ物を食べる方法として「みじん切りにしてわからないようにする」という方法が一般的ですが、この方法では「嫌いなものを食べた」という意識がないので好き嫌いの克服にはつながりません。
根本的に好き嫌いを克服するためには、嫌いな食べ物だとわかる状態で、まずはひと口だけ口に入れてみることです。すぐに飲み込まないようにし、食べ物の味や舌触りを確認させて食の経験を積ませましょう。あくまでも無理強いはせず、口に入れられたら目一杯褒めてあげてくださいね。
すぐに食べられるようにはならないかもしれませんが、「いつか食べられるように」と長い目で見て少しずつ嫌いな食べ物に慣れさせることがおすすめです。
旬の時期に好きな食べ物と組み合わせる
味蕾が発達している子どもは、大人より味覚に敏感だと解説しましたよね。そのことは「食べ物のおいしさを感じる力も高い」ことと言えるでしょう。そこで嫌いな食べ物を旬の時期に食べさせてみてはいかがでしょうか?
食べ物は旬の時期に栄養価も高まり、味も良くなります。もしかすると夏のニンジンは食べられなくても、春や秋のニンジンなら食べられる可能性も。
さらに好きな食べ物と組み合わせれば、食べてくれる確率が上がることもあります。ニンジンが嫌いでカボチャが好きな子どもなら、カボチャサラダの中にニンジンを細かくして加えてみるなど…。
子どもが無理をしなくても、自然に「おいしい」「食べられる」と思ってもらえるように工夫したいですね。
- 宮崎県健康づくり協会「食べ物の好き嫌いどうしたらいいの?」(https://www.miyakenkou.or.jp/file/sante/sante7402.pdf,2022年8月16日最終閲覧)
- 独立行政法人農畜産業振興機構「「野菜シンポジウム~野菜をおいしく食べる~」の概要」(https://www.alic.go.jp/content/000088417.pdf,2022年8月16日最終閲覧)
- 栄養学雑誌「幼児期前期における嫌いな食べ物の質的変化に関する縦断研究」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi/71/6/71_323/_pdf,2022年8月16日最終閲覧)
- 農畜産業振興機構「子どもの野菜嫌いと食育」(https://www.alic.go.jp/content/001169939.pdf,2022年8月16日最終閲覧)
子どものころの好き嫌いは大人になれば克服できるかも
子どもの食べ物への好き嫌いは年齢とともに変わるとお話しましたが、実際に子どものころに嫌いだった食べ物を大人になってから克服できたというケースは多く見られます。
また、自宅では食べないものも、幼稚園や保育園、小学校では普通に食べるというようなケースも。
いつでも好き嫌いなく食べられるのが理想ではありますが、自宅で食べないからと言って必ずしも絶対に食べられないというわけでもないようです。
パパママは子どもの好き嫌いが多いと「大人になってから困るかも…」と思って、好き嫌いを克服させようとしますよね。しかし、子どもと大人の味覚は違いますし、いろいろな食べ物を経験していくうちに、自然と食べられるようになることもあります。
食べ物の好き嫌いはゆっくりと克服させよう
子どもは食事の経験がまだまだ少ないので、食べ物への警戒心が強く好き嫌いは仕方がないことです。ただし、食べ物の好き嫌いは少しでも克服できたほうが本人のためになりますし、調理するのも楽になりますよね。
嫌いな食べ物を食べる方法としては、食べ物に興味をもたせた上で、まずはひと口だけ食べさせてみましょう。どうしても食べなければ、大人になるまでに食べられるようになる可能性もあるので、しばらくお休みしてみるのも一つの方法ですよ。