小1の壁とは何か
「小1の壁」とは、子どもが小学校に入学することで、仕事と育児の両立がより難しくなること。小学校入学を控えた子どもを持つパパママなら、「小学校に入学したら仕事も育児も楽になるかな?」と思われるのではないでしょうか。
しかし実際は小学校入学を機に、「育児も仕事もより大変になった…」という方が多いのです。
仕事をしながら育児をしようと考えているパパママにとって、子どもが「小1」になる時期はさらに多忙な毎日へと生活が切り替わるタイミングなのですね。
- 内閣府「第2部 少子化社会対策の具体的実施状況 第1章 重点課題 第1節 子育て支援施策を一層充実させる。 3「小1の壁」の打破」(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2015/27webhonpen/html/b2_s1-1-3.html,2022年8月16日最終閲覧)
小1の壁を経験したママの声
それでは先輩ママたちは「小1の壁」でどのような体験をしたのでしょうか?具体的な体験談を見てみれば、小1の壁がどのようなものかおわかりいただけるでしょう。
一瞬たりとも休めない毎日!
最初に紹介するのは、今まさに小1の壁を体験しているというママからの声です。保育園に通っていたころに比べると5倍くらい大変とのことですが、どのような生活をしているのでしょうか。
民間の学童に入れていますが、さすがに夕飯は食べさせてはくれないので、帰ってきてお風呂入って夕飯食べたらもう寝る準備で一瞬たりともゆっくり一息つく時間がない感じです。
生活が変わって、精神的にも身体的にも疲れている子どもをフォローするために、先輩ママは毎日怒涛の日々を送っているようです。学童保育を利用しても、仕事と子育ての両立には相当の体力が必要になりそうですね。
もし、ゆったりとした家族の時間を持ちながら子育てをしたいと思われているなら、小1の壁への対策を早めに考えておく必要があるでしょう。
帰りだけじゃない!朝の時間にも小1の壁が
仕事と育児の両立が難しいというと、小学校が終わる時間が早いからというイメージを持ちがちですが、実は朝の登校時間に小1の壁を感じる方もいるようです。
小学生になって朝の出発が遅くて仕事に間に合わない…という体験ですね。出勤時間が遅めの仕事をしている方なら対応できるでしょうが、通勤時間がかかったり就業時間が早めだったりする場合、大人の方が早く家をでなければならなくなってしまいます。
ただし、学童保育が利用できれば問題がないと言う先輩ママの声も複数ありました。
学童保育の17:30お迎えで問題なし
仕事の出勤時間が子どもの登校時間よりも遅く、17~18時ごろに仕事が終わるようであれば学童保育で問題なく小1の壁を乗り越えられるようです。
19時まで預かってもらえるなら、仕事が終わった後でもお迎えに間に合うというママもいるのではないでしょうか。
小1の壁の大変さは、利用できる学童の預け入れ時間や、子どもの面倒をみなければいけないパパママの就業時間によるのですね。
小1の壁の原因と考えられるもの
たくさんのパパママが苦労している小1の壁。一体なぜ「小1の壁」が立ちはだかるのでしょうか。その原因について考えていきます。
勉強へのフォローが必要になるから
多くのパパママが小1の壁を感じるのは、勉強へのフォローが必要になることが原因の一つ。
幼稚園や保育園ではなかった「宿題」が増え、子どもが宿題をちゃんとやるようにフォローをしたり、勉強でわからないところを教えてあげたり…と、小学校に入学すると勉強へのフォローが必要となります。
もちろん、何も言わなくても宿題をやる子どももいますし、小学校の授業でしっかりと勉強を理解している子どももいます。しかし、子どもと一緒に過ごす時間が短くなると、勉強への理解度を把握できない問題が出てくるかもしれません。
PTAなど学校活動への参加が必要になるから
小学校では、パパママがPTAなど学校活動に参加しなければならない場面も増えてきます。フルタイムで仕事をしているパパママにとって、PTAへの参加は非常に大変なこと。
多くの場合、PTA活動日や保護者会は平日です。学校によっては平日の昼間に行われることもあるので、仕事とPTA活動の時間帯が全く合わないこともあります。
登校時間と出勤時間が合わないことも…
小学校への入学を機に、子どもの登校時間とパパママの出勤時間が合わなくなることもあります。先に紹介した先輩ママの体験談でも、登校時間より出勤時間のほうが早くなって苦労した…という声が寄せられていましたよね。
保育園のように「子どもを預かる」という役割を担っていない小学校では、早めに登校することができません。就業時間が早いパパママであれば、どうしても朝の時間に小1の壁を感じてしまいがちです。
小1の壁への対策
それでは、小1の壁にはどのような対策を行っていけばよいのでしょうか。
子どもに合わせた働き方を考える
小1の壁への最大の対策は、子どもに合わせた働き方をすることです。可能ならば時短勤務を継続したり、在宅勤務をさせてもらったり…と、職場と相談して育児がしやすい環境を整えてもらえるなら、小1の壁にも対応しやすくなるでしょう。
実現が難しい環境にいる方もいらっしゃるでしょうが、今一度、子どもの毎日のスケジュールに合わせた働き方ができないか検討してみることが必要です。
子どものフォロー範囲を考える
子どもに合わせた働き方ができれば良いですが、すべて子どもに合わせるのは大変ですし、ともするとママパパのフォローが子どもの成長を妨げてしまうかもしれません。
そこで考えたいのが、「子どもにとって必要なフォロー範囲は?」ということ。
小学校1年生になる子どもは自分でさまざまなことができるようになります。必要なフォローはしてあげなければいけませんが、子どもの様子を見て、1人でできそうなことは子どもに任せてみてはいかがでしょうか。
民間のサービスや親を頼る
仕事の時間をどうしても変えられないなら、民間のサービスを頼ってみてください。先に紹介した先輩ママによる体験談でも、学童保育が利用できれば問題ないとおっしゃっている方は多かったですよね。
学童保育だけでなく、ベビーシッターや家政婦、家事代行サービスなど、小1の壁を乗り越えるためのサポートとして活用できるサービスはたくさんあります。
もちろんご両親が近くに住んでいるのであれば、仕事が終わるまで子どもの面倒を見てもらえるようお願いするのも一つの方法です。
子どもの放課後時間について考える
子ども自身の放課後時間について考えてみると、小1の壁を乗り越えるためのヒントが見つかるかもしれません。
たとえば、小学校が終わった後は近所で習い事をする、宿題をする時間を決めて約束するなど、パパママの仕事が終わるまで子どもが有意義に過ごせるように考えてみましょう。
例えば、15時に家に帰ってきて16時から1時間の習い事をすれば、パパママが17時に仕事が終わってもちょうどよい時間になるはずです。子どもとパパママのスケジュールをすり合わせられれば、小1の壁への対策が行えるでしょう。
- 文部科学省「「放課後子どもプラン」の概要」(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/103/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2014/10/09/1351194_08.pdf,2022年8月16日最終閲覧)
小1の壁で会社を退職するメリット・デメリット
小1の壁への対策として、「退職をする」という選択をする方も少なくありません。今の仕事を続けようか、辞めようかと迷っている方は、小1の壁で退職をするメリットとデメリットを確認しましょう。
小1の壁で退職するメリット
小1の壁で「退職して良かった」と思われている方は少なくないようです。小1の壁への対策として「退職」という選択は子どものためになるでしょうが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
子どもへのフォローがしやすくなる
小1の壁で「退職して良かった」と感じるのは、主に子どもへのフォローがしやすくなるということでしょう。
小学校に入学したばかりの子どもは、慣れない生活の中で心も体も疲れているかもしれません。そのようなときにママパパがそばにいてあげられないと、子どもの体調不良にも対応できなくなることもあります。
しかし仕事をしていなければ子どもの体調不良にも余裕を持って対応できるようになります。「明日は仕事なのにどうしよう…」と気を揉むこともなくなるでしょう。
また子どもの勉強をフォローしてあげられるのも大きなメリットです。わからない問題がわからないままだと、勉強が楽しくなくなってしまうはず。
わからないことがあるときにすぐにママパパに質問できる環境であれば、子どもが勉強を好きになってくれる可能性も高まりそうですね。
子どもの心が安定する
パパママと一緒にいられて子どもの心が安定することも、小1の壁で退職して良かったと感じる大きなメリットとなるはずです。
まだ小1の子どもであれば、パパママと一緒にいられないのは寂しいものです。ましてや入学直後は慣れない小学校生活にストレスを感じ、甘えたくなる場合も考えられます。パパママと一緒にいられる時間が増えて、子どもの心が安定します。
小学校に入学して環境が変わると、心が不安定になる子どももいるそうです。もし不安や心配を抱えていても、パパママになかなか話せなければ子どもは心のよりどころかなくなってしまうでしょう。
また子どもの独立心や自尊心は、ママが心のサポートをしてあげることで高まると報告されています。心が安定するとゆとりを持てて、自分の心を成長させやすくなるのかもしれませんね。
- 家族社会学研究「母親の就業は子どもに影響を及ぼすのか」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjoffamilysociology1989/13/2/13_2_103/_pdf,2022年8月16日最終閲覧)
プライベートの人脈が増える
小1の壁で退職することには子どもだけでなく、ママパパにもメリットが感じられるはずです。たとえば地域の人々や同学年の子どものママなど、プライベートでの人脈が増えて「退職して良かった」と思えるようになることもあるのではないでしょうか。
毎日仕事をしていれば、知り合うことのなかった人とも知り合えるようになり、新たな世界が拓けます。退職してPTAに参加したり、地域の行事に参加したりできるようになれば新たな人脈が築けるでしょう。
小1の壁で退職するデメリット
小1の壁で退職することのメリットを解説してきましたが、その反面、「退職しなければよかった」と感じるケースも…。小1の壁で退職する道を選んだ場合、どのようなデメリットを感じがちなのかあらかじめ知ってから決断してくださいね。
親のキャリアが途絶える
仕事でキャリアを重ねていたママパパ。退職してしまえばキャリアが途絶えてしまうことが大きなデメリットになりますよね。正社員として何年も働いてきて、役職に就いて、仕事にやりがいを感じていて…という方であればなおさらです。
自分が頑張って築き上げてきたものがなくなってしまったと、喪失感を抱くかもしれません。
将来的なことを考えると、子どもが大きくなったときに「またあの仕事をしたい」と思ってしまうことも考えられるので、よく考えて判断してくださいね。
高学年になれば家で過ごさなくなる可能性がある
子どものために退職をしても、中学年・高学年になると、子どもが家で過ごさなくなる可能性があります。そのようなときに退職したことを後悔してしまいがちです。
仲の良いお友達が学童に通っている場合、パパママが家にいても学童で遊びたがる子どもも少なくありません。パパママとしては「せっかく退職したのに…」という気持ちになることも。
退職して子どものフォローをしてあげるつもりだったのに、子どもが家にいなければ少し残念な気持ちになってしまうのも無理はありません。
ただ学童が楽しくて、仲の良いお友達がいることはよろこぶべきことですよね。デメリットとは言え、子どもの成長を考えると大きなデメリットではないでしょう。
厚生労働省が進める小1の壁への対策とは
多くのパパママが悩んでいる小1の壁に、対策を練ろうとしているのが厚生労働省。以下のように、小1の壁を感じるパパママの支援を行おうとしています。
共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに、次代を担う人材を育成するため、
全ての児童(小学校に就学している児童をいう。以下同じ。)が放課後等を安全・安
心に過ごし、多様な体験・活動を行うことができるよう、文部科学省と厚生労働省が
協力し、一体型を中心とした放課後児童健全育成事業(以下「放課後児童クラブ」と
いう。)及び地域住民等の参画を得て、放課後等に全ての児童を対象として学習や
体験・交流活動などを行う事業(以下「放課後子供教室」という。)の計画的な整備等
を進める。 ※1
「放課後児童クラブ」や「放課後子ども教室」を整備することで、子どもの預け場所を確保しパパママが安心して働けるようにしています。
小1の壁への対策法はさまざま
勉強へのフォローが難しい、PTA活動と仕事が両立できない、子どもと朝の時間が合わない…と多くの問題を感じるようになる小1の壁。しかし、厚生労働省も小1の壁対策に乗り出しているので、壁を乗り越えるための方法はさまざまです。
小1の壁を機に退職して良かったという方もいますが、周りからのサポートや民間サービスを活用することも対策の一つ。記事の内容を参考にしながら、子どもとパパママが少しでも充実した時間を過ごせるよう考えてみてくださいね。