これってマイコプラズマ肺炎?こんな時どうすればいい?
子どもの熱が続く場合に心配になるのが「マイコプラズマ肺炎」の可能性。
今回は家庭医療専門医であり在宅医療専門医の齋木啓子先生に、ママリ内に投稿された質問に答えていただく形で「マイコプラズマ肺炎」について一般的な潜伏期間や症状、詳しい熱の様子を教えていただきました。
質問①一緒に遊んだ子がかかったみたい!潜伏期間はどのくらい?
友達のお子さんは今日病院行ったけど熱が出てから4日ほどたたないとマイコプラズマか調べることが出来ないとお医者さんに言われたみたいでまだマイコプラズマかわからないのですが…
とても、こわいです(>_<)
一つ目の質問は「数日前に一緒に遊んだ子がマイコプラズマかもしれないと言われた」というママからの質問です。23日にお友だちの子と遊んだというこちらのママ。質問の投稿は29日にされているので、投稿された時点で一緒に遊んだ日から6日が経っていると考えられます。
質問内容をまとめましょう。
- 6日前に一緒に遊んだ子が発熱しマイコプラズマの可能性があるらしい
- 一緒に遊んだ日は元気だったが感染している可能性はある?
- マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は?
齋木先生の回答:潜伏期間は2~3週間。潜伏期間でもうつす可能性はあり
マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は通常2~3週間と言われています。
この期間には症状は現れませんが、菌の排出は症状出現2~8日前には始まっていると言われており、潜伏期間においてもうつす可能性があります。
投稿されたケースでも、友達の子どもがマイコプラズマと診断された場合、一緒に遊んだ23日には、友達の子どもは潜伏期間であった可能性が高く、感染力はそれほど強くないとはいえ、投稿者の子どもにもうつっている可能性はあると考えられます。
なお、菌の排出は、症状出現前から始まり、症状が強い時期にピークとなり、4~6週間以上続くとされています。
マイコプラズマ肺炎の一般的な潜伏期間と菌の排出期間
- マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は通常2~3週間
- 潜伏期間に症状は出ないが、菌の排出は症状出現の2~8日前には始まっていると言われている
- 潜伏期間であっても感染の可能性はある
- 菌の排出のピークは症状が強い時期で、排出期間は4~6週間以上とされている
- 国立感染症研究所「マイコプラズマ肺炎とは」(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html,2021年11月24日最終閲覧)
- 医療法人財団健康文化会 小豆沢病院「マイコプラズマ感染症」(http://www.kenbun.or.jp/wp-content/uploads/file/mai201212.pdf,2021年11月24日最終閲覧)
質問②熱が下がらない。熱の続く期間は?
三男が先週火曜から熱が出て、ずっと38度台が続いています。
マイコプラズマかなぁと言われ土曜夜からは抗生剤も飲んでますが改善してません。今日も熱が下がらなければ明日も受診するつもりですが、お子さんはどれぐらいで改善したのか教えていただきたいです。
マイコプラズマ肺炎の可能性を伝えられているこちらのママですが、すでに熱が1週間近く続いているようです。抗生剤を飲んでも改善せず、熱が続くことを心配しています。
質問内容をまとめましょう。
- 38度台の熱が1週間近く続いている
- 抗生剤を飲んでも改善しない
- マイコプラズマ肺炎での発熱がどのくらい続くか知りたい
齋木先生の回答:発熱は平均5.5~9.3日続き、せきは解熱後も長く続きやすい
まず、マイコプラズマ肺炎の一般的な経過をお伝えします。
潜伏期間の後は、発熱、全身倦怠感(だるさ)、頭痛などの症状が出現します。
マイコプラズマ肺炎の特徴の一つでもあるせきは、これらの症状から1~2日遅れて始まることが多く、徐々に強まり、初めは痰(たん)を伴わない空ぜきで、次第に痰(たん)が絡み、熱が下がった後も3~4週間と長期にわたって続くというのが一般的な経過です。
投稿されたケースでは、熱の持続期間を心配されていましたが、熱に関する研究結果によると、熱が続く期間は平均5.5~9.3日で、治療薬として使用される抗生剤に対して耐性がある菌の場合には、熱が続く期間が延長することが報告されています。
マイコプラズマ肺炎の一般的な経過と熱の続く期間
- 潜伏期間の後、発熱、全身倦怠感(だるさ)、頭痛などの症状が出る
- せきは発熱やだるさの症状から1~2日遅れて現れるのが一般的である
- せきの症状は空ぜきから痰(たん)が絡むせきになり、解熱後も1か月程度続くのが一般的である
- 熱の続く期間は平均5.5日~9.3日
- 抗生剤に対して耐性がある菌の場合は、熱が続く期間が延長することが報告されている
- 厚生労働省「マイコプラズマ肺炎に関するQ&A 平成23年12月作成、平成24年10月改訂」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou30/index.html,2021年11月24日最終閲覧)
- 国立感染症研究所「マイコプラズマ肺炎とは」(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html,2021年11月24日最終閲覧)
- 国立感染症研究所「マイコプラズマ肺炎」(https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/kikikanri/H24/20121018-11.pdf,2021年11月24日最終閲覧)
質問③熱が何日続くとマイコプラズマ肺炎の可能性が?
子どもは高い熱を出しても一日で回復する場合もありますし、どのくらい様子をみてから病院を受診すべきか迷うパパママもいるでしょう。こちらのママは高熱が何日続くか質問を寄せています。
この質問に対しては、マイコプラズマ肺炎の熱の続く期間に加え、他の感染症によって熱が出た場合の熱の続く期間を回答していただきました。
齋木先生の回答:熱が4日以上続く場合はためらわず受診を
通常の風邪の場合には3日程度で解熱することが一般的であるため、4日以上の発熱やひどいせきが続く際にはマイコプラズマ肺炎の可能性を考えて、医療機関を受診するようにしましょう。
ちなみに、長引く発熱の原因としてよく耳にするRSウイルス感染症、アデノウイルス感染症、インフルエンザの有熱期間はそれぞれ平均3〜5日、3〜7日、3〜7日と言われており、やはり3日程度で解熱するか否かが一つのポイントと考えて良いでしょう。
子どもの発熱の受診タイミングとさまざまな感染症の平均的な有熱期間
- 4日以上の発熱やひどいせきが続く場合、マイコプラズマ肺炎の可能性をふまえて医療機関の受診を
- マイコプラズマ肺炎の平均有熱期間:5.5日~9.3日
- RSウイルス感染症の平均有熱期間:3〜5日
- アデノウイルス感染症の平均有熱期間:3〜7日
- インフルエンザの平均有熱期間:3〜7日
- 奈良県医師会「子どものマイコプラズマ肺炎 ―薬が効きにくい―」(http://nara.med.or.jp/for_residents/2169/,2021年11月24日最終閲覧)
- 久留米大学医学部医学科「感染症の診断と治療」(http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/imed1/students/syllabus/kansen01.pdf,2021年11月24日最終閲覧)
質問④発熱は上下しますか?
子どもの熱は朝の発熱が昼には下がったり、逆に日中は下がっていた熱が夕方にかけて上がったり…と上下した経験をもつパパママもいるでしょう。
ママリには、マイコプラズマ肺炎にかかった子の「熱が上下した」というママの投稿がありました。
齋木先生の回答:マイコプラズマ肺炎も熱が上下する可能性がある
世の中にはさまざまな感染症がありますが、中には特徴的な熱の出方(熱型と言います)をし、そこから原因が推測できることもあります。
代表的な熱型には、次の三つがあります。
- 稽留熱(けいりゅうねつ):1日の中で体温の変化が1℃以内で高熱が続くパターン
- 弛張熱(しちょうねつ):1日の中で体温の変化が1℃以上あるが、平熱にはならないパターン
- 間欠熱(かんけつねつ):発熱が数時間持続するが、その他は平熱になるパターン
前述した四つの感染症(マイコプラズマ肺炎・RSウイルス感染症・アデノウイルス感染症・インフルエンザ)を見てみると、マイコプラズマ肺炎は稽留熱~弛張熱、RSウイルス感染症は弛張熱、アデノウイルス感染症は稽留熱~弛張熱、インフルエンザは稽留熱~弛張熱のパターンを取りやすいと言われています。
マイコプラズマ肺炎では、投稿されたケースのように熱が上下することもあれば、高熱が続くこともあります。
四つの感染症と出現しやすい熱のパターン
- マイコプラズマ肺炎:稽留熱~弛張熱→熱が上下する場合も高熱が続く場合もあり
- RSウイルス感染症:弛張熱→1日の中で1℃以上の体温変化はあっても平熱にはならない
- アデノウイルス感染症:稽留熱~弛張熱→熱が上下する場合も高熱が続く場合もあり
- インフルエンザ:稽留熱~弛張熱→熱が上下する場合も高熱が続く場合もあり
- 厚生労働省「RSウイルス感染症」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-15.html,2021年11月24日最終閲覧)
- 厚生労働省「咽頭結膜熱」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou17/01.html,2021年11月24日最終閲覧)
- 久留米大学医学部医学科「感染症の診断と治療」(http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/imed1/students/syllabus/kansen01.pdf,2021年11月24日最終閲覧)
質問⑤家族が肺炎に…うつりますか?
娘も義母の風邪を貰って5日の夜~10日の夜まで咳・鼻水・発熱が続きました。
(中略)
そんな中義母が肺炎にまで悪化。
現在娘は咳・鼻水・今日の夕方から発熱(微熱)があります。
入院する前日まで義母とは会っていたし、マスクなしで抱っこもしてました。
(中略)
明日も熱があるようなら小児科を受診予定でいますが、その際に義母の肺炎は伝えた方がいいんですか?
どんな感染症でも同様ですが、家族が感染症になった場合、同じような症状が他の家族に出てくると「うつったかな」と心配になりますね。
こちらのママも義母の肺炎が子どもにうつったかもしれないと心配なようです。マイコプラズマ肺炎の場合、どのような感染経路でうつってしまうのでしょうか。また予防はどうすれば良いのでしょうか。
齋木先生の回答:マイコプラズマ肺炎は家族間でうつることがあります
マイコプラズマ肺炎は、感染者のせきの飛まつを吸い込む飛まつ感染や感染者と身近で濃厚接触する接触感染で感染すると言われていて、家族のほか、学校などでも感染の伝播(でんぱ)がみられます。 ※感染の伝播=うつること
投稿されたケースでは、マスクを着用せずに抱っこもされていたということから、飛まつ感染・接触感染の可能性があります。
感染経路は通常の風邪やインフルエンザと同様なので、家族がマイコプラズマ肺炎に感染した場合には、こまめに手洗いをすることが大切です。また、患者のせきから感染するので、せきの症状がある場合には、マスクを着用するなどせきエチケットを守り、患者との濃厚な接触を避けるようにしてください。
なお、受診する際には、家族や学校での流行状況を伝えると、診断の重要なヒントになりますので、必ず伝えるようにしてください。
- 中外医学社「感染経路,感染予防策」(http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1842.pdf,2021年11月29日最終閲覧)
マイコプラズマ肺炎の感染経路と予防
- マイコプラズマ肺炎は、飛まつ感染・接触感染でうつる
- 家族間・学校などでも感染の可能性がある
- 家族がマイコプラズマ肺炎になった場合はこまめな手洗いやマスクの着用を
- 病院を受診する際は家族や学校での流行状況を必ず伝える
- 厚生労働省「マイコプラズマ肺炎に関するQ&A 平成23年12月作成、平成24年10月改訂」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou30/index.html,2021年11月24日最終閲覧)
- AskDoctors「マイコプラズマ肺炎の原因」(https://www.askdoctors.jp/articles/200129,2021年11月24日最終閲覧)
気になる症状が続く場合はためらわず受診を
子どもの熱は1日のなかでも上下したり、しばらく下がったと思えばまた上がったり…と予測できない場合もあります。またあまり高くない熱やそこまでつらそうではないせきの症状の場合、「もう少し様子を見た方がいいかな」と考えることもあるでしょう。
しかし今回の記事でご紹介したように、マイコプラズマ肺炎では熱が上下することがあり、せきの症状が熱に遅れて現れるケースも。近年では薬に耐性のあるマイコプラズマ肺炎もあるようなので、熱やせきで気になる症状があるときはためらわずに病院を受診しましょう。
- 日本小児科学会「小児肺炎マイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方」(https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_130219_2.pdf,2021年11月24日最終閲覧)
- 国立感染症研究所「マイコプラズマ肺炎」(https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/kikikanri/H24/20121018-11.pdf,2021年11月24日最終閲覧)